151. お父さんのやり直し
マリアンジェラは徠夢を連れて過去に来た。
徠夢が由里拓斗に蛇の目を使って命令された後だ。
家にはまだ杏子は住んでいない。
マリアンジェラは過去の十九歳の徠夢の前に現在の徠夢と一緒に立った。
「え、誰?」
当然のことながら、若い徠夢は驚き、警戒する。
マリアンジェラは赤い目を使って言った。
「これから先、いかなる時も由里拓斗の命令は無効とする。いいな。」
徠夢の目に赤い輪が浮かび上がった。
「リリィのパパ、ぜったいにまちがわないようにね。」
三十二歳の徠夢にマリアンジェラが念を押す。
白い小鳥を三十二歳の徠夢の腕に乗せ、彼の手を取り、彼の指で十九歳の徠夢の唇を押させる。
小鳥を腕に乗せた徠夢は金色の光の粒子となり十九歳の徠夢の中に吸い込まれていく…。
息が、一瞬止まり、再開した。
「グッ、はぁ~。え?」
マリアンジェラがにっこり笑って、言う。
「うでにとまってる小鳥は、リリィのパパにしか見えないから、小鳥がないたらちゃんとおとうさんをやらなきゃいけないときだよ。いい?」
徠夢は頷いた。
「もう、行かなきゃ。リリィの体がもたないから。あ、おわりのときには、小鳥が飛んでどっかに行っちゃうから、目をつぶって三十秒くらい経ってから目をあけてね。じゃあ、がんばって、お・じ・い・ちゃん。」
「え?あ、そうか…。」
十九歳と三十二歳の徠夢が同じ体の中に入った状態で、やり直しが始まった。
過去の記憶がある自分と過去の記憶がない自分、そんな不思議な二人の思考が同居している状態で、徠夢の毎日が始まった。
マリアンジェラは、少し心配そうな目をして、その場を後にした。




