表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
149/696

149. 憎悪の理由

 アンジェラはミケーレの言葉にドキリとした。

『もう、悪魔を使うしかないよ。』

 確かにミケーレはそう言った。なぜ、ミケーレは悪魔の事を知っているんだ…。

「ミケーレ、それは誰に聞いた?」

「だれにもきいてないよ。」

「悪魔は使えない。十二人の生贄なんて、無理だろう。それに、その十二人を助けるためにリリィが頑張ってきたことが無駄になる…。」

 色々と思い出して、アンジェラがまた泣きそうになっている。


 ミケーレは自分の能力が力不足で何もできない事にもどかしさを覚えていた。

「パパ…ミケーレ、何も役に立たない…。ぐすっ」

 アンジェラがそんなミケーレを抱きしめて言った。

「そんなことないよ。いてくれるだけでいい。」

 アンジェラ親子のそんなやり取りを見て、アンドレが徠夢にきつい言葉を吐く。

「徠夢、リリィを返せ。お前が殺したんだぞ、わかっているのか?」


 徠夢はハッとした。自覚がなかった。

 私が自分の子を殺したのだ。さっき見たではないか、心臓が止まり、息をしていない哀れな姿を…。

 何が自分をそうさせたのか、なぜそんなことしてしまったんだろう…。

 家でマリアンジェラに見せられた過去は、自分の記憶とは全く違っていた。

 私はいい父親ではなく、たった一人の子供にしてはいけない対応ばかりだった。

 しかも、義父がテロリストで、その男にあてがわれた妻だった。

 私はライルに対して何をそんなに固執した怒りを覚える必要があったのだろうか…。

 わからない、わからないだけじゃなく、おかしいとさえ思う。


 その時、ミケーレが徠夢のところにトコトコとやってきて足にしがみついた。

「ねぇ、リリィのパパ。どうしてリリィにいたくしたの?リリィのこと嫌いだったの?」

 徠夢はしゃがんでミケーレの頬に手をあてた。

「わからないんだ。どうしてなのか…。」

 ミケーレは目の前にきた徠夢の額に手を置いた。

 徠夢の記憶が流れ込んできた。ミケーレが徠夢から手を放し、アンジェラのところへ逃げるように移動した。

「パパ、アンドレもこっち来て。」

 ミケーレはアンジェラとアンドレに今見た記憶の一部を見せた。

 大学の研究室で、由里拓斗が瓶に入った蛇の頭を徠夢と杏子に見せ、二人に命令を下しているところだった。

『お前たちは子供を作り、結婚して、子供を私に差し出せ。子供への愛を感じず、物として扱え、いなくなっても騒がず、気に留めるな。子供が逆らえば、お前たちは憎悪の感情を持って対応しろ。』

 アンジェラは全身の力が抜けるのを感じた。

「もっと早くわかっていれば…。」

 そう言いながら、ミケーレに徠夢本人にもその記憶を見せるように頼んだ。


 徠夢は自分では思い出せないその場面を見せられ、全てが由里拓斗の仕業だと理解した。

 アンジェラがアズラィールに病院まで来るように電話をかけた。

 十分ほどでアズラィールが到着した。アンジェラはアズラィールにすべての由里拓斗の命令、蛇の頭を使って指示されたことを無効にするように赤い目を使って徠夢に指示してほしいと頼んだ。

 アズラィールにミケーレが先ほどの記憶を見せる。

 思わずアズラィールが、唸り声をあげる。

「こんな酷いこと、人間じゃないなあいつは…。」

 アズラィールが赤い目を使って、徠夢にかけられた由里拓斗のすべての指示を無効にさせた。

 それが終わったとき、徠夢の両目からは涙があふれ、嗚咽が部屋中に響き渡り、震えで立っていられないほどの状態になった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ