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143. 僕の葛藤

 十一月二十五日土曜日。

 早いもので子供たちが生まれて六か月が過ぎた。

 毎日が慌ただしい、そして結構面白い。

 子供たちにまだ言葉は出てきていないけど、僕たちが話しかける言葉はわかっているように思う。


 マリアンジェラは結構なドS要素を持っている。

 チューをしようと近づくパパにグーで鼻を殴ったり、寝ているパパの乳首を噛んだり。

 もう、ギャグとしか思えない…毎日の楽しいやり取り。

 アンジェラは基本ドMかと思うほど、痛くても喜んでいる。変態か…。

 ミケーレはまるで哲学者のようだ。何にも動じず、その時に興味を持ったものを優先する。それが芸術性の高いものに限定されているあたり、アンジェラと同じDNAなのだなと確信する。

 ミケーレは特にピアノが大好きみたいだ。そして、ははへの執着は半端ない。


 二人とも、素敵な人になってくれるといいな。これは、僕からの切実な願いだ。

 僕は何も取り柄がないが、アンジェラみたいになんでもできて、キラキラした人になって欲しい。

 僕って本当に何もできない人だな…。全部他の人の能力をコピーしただけの中身空っぽだもんね。しかも、自分で言うのもなんだけど、卑屈な性格だ。

 ちゃんと時間をかけて勉強して、大人になったら…また違ったのかな?

 ハハハ…あり得ないな。僕は、愛を優先したんだ。他の何よりも、愛を。

 僕の事を想ってくれる愛と、僕も愛おしいと思う人との愛を…。

 他の色々な犠牲があっても、このきもちが一番の優先事項だった。

 不思議なことに、人の事をうらやましいという気持ちはない。

 どうして僕なんかが生きているんだろう。それが、僕の本当の気持ちだ。

 一人で考え事をしていると、どんどんと深みにはまっていく。


 幸せなはずなのに、なんでこんなに満たされない自分がいるんだろう。

 こういうこと、考え始めるとキリがない。

 そんなとき、目の前にリリアナが出現。

「うぉっ、びっくりした~。」

「ねぇ、リリィ。言っちゃ悪いんだけど、あなたネガティブにもほどがあると思うの。」

「え?なんのこと?」

 シラを切ってみた。ふんっ、と顔を背けてリリアナが僕に説教を始めた。

「私、結構そういうの平気なんだけど、リリィのネガティブさはヤバい域に達してるわよ。黙っていても、同じ個体からできているせいか、こっちにもどんどん押し寄せてくるのよ、その負のオーラが…。」

「負のオーラ…ですか…。」

「そう、それやめてほしいわけ。こっちまで気分が落ち込んで…嫌なのよ。」

「でもそんなこと言われても…。」

「じゃあ、私がチャンスをあげるわ。それを断ち切るチャンスを。」

「よくわかんないけど、そんなことできるの?」

「できるわよ。でも断ち切れなかったら、私も消えるかもしれない。それをわかった上で、あえてリリィに選ばせてあげる。」

「…嫌だよ。僕はこのままでいい。別に何かをしたいわけじゃない。今持ってる自分の感情も含めて僕なんだから。」

 僕はそう捨て台詞を残すとごまかすように、一人で五百年前の封印の間に転移した。

 そう、僕は時々ルシフェルの亡骸に会いに来ているんだ。

 自分勝手だとは思うけど、僕がもし、生まれ変わっても一人の人間だったら、こんなには苦しむことは無かったんじゃないかって。

 魂の核が十二個に分離したのが原因なのかな、僕が、僕と同じ核を持っているはずの父様と分かり合えないなんて。逆に全く異なる個体だったら、こんなこと思わないのかな?

 あぁ、いつまで続けていくんだろう…。


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