142. 成長
アンドレとリリアナが戻って来てからは四人での子育て生活が始まった。
乳母は引き続き来てもらっていたが、僕たちはなるべく子供達に関わるように努力した。
生後三か月の時、ひゃっくりが出て止まらなくなったミケーレの背中に翼が出た。
不思議そうにその翼を触ったマリアンジェラにも翼が出た。
あまりの可愛さに、アンジェラパパはデロデロになり写真を撮りまくり、結局、昔のアンジェラに絵を描いてもらうために、二人を赤ちゃん用のかごに入れて過去に行くと駄々をこねた。
根負けしてアンジェラと共に子供たちを過去に連れて行った。
昔のアンジェラは、少し離れたところから嬉しそうに微笑んでくれた。
戻った時には何枚もの小さい天使の絵が増えていた。
その中でも大きめの絵がアトリエに飾られた。
ちょうど夏休みだったアズラィールが孫を見たいというので、リリアナが迎えに行ってアズラィールと徠神を連れてきた。
アズラィールは大真面目な顔でじっくり子供たちを観察していた。
「すごいな、100%の遺伝って。どっからどう見てもアンジェラだ。」
足の裏までチェックされて、くすぐったくて翼を出したミケーレにアズラィールは、再度驚く…。
「リリィ、これって、能力もそのまま遺伝してるのかな?」
「さぁ…そんなことはないと思うよ。僕達にない能力を二人とも持っているし。」
「え?すごいな。どんな能力?」
「マリーの方はほっぺにチューすると出るかも。」
僕がニヤッと笑って言うと、アズラィールがマリアンジェラにチューしようと移動した。
「ダ、ダメだ、父上。うちのマリアンジェラが穢れる…。」
アンジェラが必死で阻止しようとしたが、一歩間に合わず。
アズラィールがマリアンジェラに『むちゅ』とキスをした。
真っ白な光の塊に一帯が包まれ、女神アフロディーテが出現した。
「アズラィールよ、あなたのアンジェラへの真実の愛に感謝します。神々の祝福と、加護を、そして、愛を…。」
光を浴びながら、アズラィールは本当に幸福だと思える瞬間を胸に刻んだ。
「え、ええええっ?」
そう言いながら、アンジェラがキョドッていた。仲良し親子だとは思っていたけど、アズラィールは本当に子ども思いのいいお父さんだったんだね。
いいじゃん、じいちゃんのチューが汚いとかさ、見た目はアンジェラの方が年いってるし。
アズラィールは光が消えた後もボーセンとしており、『まじか…?』と呟いている。
「アズちゃん、大丈夫?」
「う、うん。アンジェラを息子に持って僕は幸せだって、いつも思ってるけど、今日はその中でも一番だった。」
そう言ったアズラィールを見て、アンジェラが一言。
「父上、マリーにチューはもうしないで下さい。」
「いいじゃないか、別に。」
「ダメなもんは、ダメです。」
アンジェラ、マジ切れです。
横で見ていた徠神は、奇跡を間近で見た喜びに打ちひしがれてた。
「わぁお、ヤバい、これヤバい。生きててよかった。すげえな、アンジェラ。」
そうだ、徠神はミーハーだった。アンジェラが有名アーティストなのもめちゃめちゃ嬉しがってた。しかも、姪が女神って、それだけで気分が上がっちゃうようだ。
アズラィールはミケーレもとてもかわいがってくれた。
不思議なことに、ピアノを弾いていないときにも、アズラィールがミケーレを抱っこしてあやすと、青い薔薇が咲くことも何回もあった。
そんな数日を過ごし、僕もすこしずつだけど、家族とか、愛とか、そういうものに関心が向いてきたのかもしれない。
アズラィールは僕の親友でもあり、兄弟でもあり、僕の義父でもある。
彼は、僕にいつも誠実で優しさを持って接してくれた。
『愛』、ってなんだろう。僕は難しく考えすぎなのかな…。
あまり考え込むのは良くない…わかっているけど、自分と徠夢の関係とどうしても比較してしまい、気分が落ち込む…。
彼らは一週間ほど滞在し、ものすごい数の孫の写真を撮って満足げに帰っていった。
アズラィールが日本に戻ってから、写真を見せびらかしたため、左徠から自分も行きたかったとしつこくメッセージが来ていた。
そのせいもあり、アンジェラが客間を増設すると言って、手配をしていた。
確かに、いつもアンドレとリリアナにユートレアの王の間に行ってもらっていたからね。
部屋が増えたらもっとみんなに来てもらえるかな…。




