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141. 強大な力

僕とマリアンジェラが転移した先は、まさしくこれから戦争が始まろうとしているユートレアの国境近くだった。

すぐ前に、オスカー王がいて、指揮を執っている。

「え、な、なんでこんなところに…。ひぇ~」

僕は思わず声をあげた。オスカーは振り返り、僕を見て笑った。

「おぉ、リリィ殿、アンドレとリリアナを助けてくださったと聞いた。ありがとう。」

「あ、いえ、行くのが遅くなってごめんなさい。出産でバタバタしてて…。」

僕がそう言うと、オスカーは馬から降り、僕に近づいてきた。そして、マリアンジェラをのぞき込むと、満面の笑みで言った。

「おぉ、美しい子だ。女神のようだ。」

そう言って、マリアンジェラの手を握った。

その時、奇跡が起きた。


目の前の平原に、敵国の兵士たちが多数集まっているのが見える。

ユートレアは小国だ。普通の市と同じくらいの大きさの国で、兵をいくら集めても、国土が三十倍以上の隣国に兵の数で勝てるはずがない。

それでも、アンドレとリリアナの事で納得がいかなかったオスカーが戦争という手段で相手の国に喧嘩を仕掛けたのだ。

手を取ったオスカーと手を取られたマリアンジェラのその場所に真っ白な光の柱が出現し、僕たちを巻き込んでいく。

それの中は、まるで無の世界。すべてが消え、白い光の中にいるようだった。

そこで、オスカーのみならず、ユートレアの兵士も含め、その光景を目の当たりにした。


女神アフロディーテが降臨し、皆に伝える。

「ユートレアの民よ。皆に祝福と愛を。」

そして、光は地面に吸い込まれ、やがて敵国の兵士たちが構える場所へと光が移動していく。

僕はマリアンジェラを抱きながら、光を目で追った。

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……。地震だ、すごい揺れだ、立っていられないほどの地震だ。

僕は思わず、翼を出し空中に逃げた。

自分たちが立っていた場所もかなり揺れていたが、光が進んでいった先の敵陣に異変が起こった。

地割れ、隆起にとどまらず、敵国の山が噴火したのだ。

人の頭ほどの大きさの石が、容赦なく敵の兵士たちに降り注ぐ…。

もちろん、戦争どころではない。皆逃げまどい、ちりぢりになって居なくなってしまった。


その間、約八分。戦争は終わった。

戦っていないけど、負けなかった。ユートレアは負傷者も死者もいなかった。

敵国の城は地震で倒壊し、王族はほぼ全員が死んだ。

一部生き残った者は、天使の誘拐には関わっていなかったと後からの調べでわかった。

ユートレアはその敵国を自分のものとし、その後も領土を広げていった。

ユートレアに歯向かうものは神の裁きを受けると言われ、その後はかなり治安もよく平和ないい時代を送ったようだ。


目が点になって居るオスカー王は結構見ものだった。

その後のマリアンジェラがご機嫌でよかった。

下手するとビリッとやられちゃうからね。

僕はオスカー王に、あとでワインと食べ物を差し入れするねと言って、家に戻った。


アンジェラが、涙目になって僕たちを迎えてくれた。

「何が起きたんだ?え?どうしてどっかにいっちゃってるんだ?」

と、非常に怖い勢いでぐいぐい押してくる。

僕は記憶をアンジェラ、アンドレ、リリアナの三人に渡し、情報を共有した。

「あ、アンジェラ。ユートレアで祝杯あげるらしいんで、ワインの差し入れ用意してくれる?あと、大量にパーティー料理とかも…。」

慌てて、アンジェラがあちこちに電話を始めた。

アズラィールが来た時に泊まったホテルのブッフェとその古城の周りにあるアンドレ所有のワイナリーから樽で二十ほどの差し入れを確保したみたい。

旦那様の経済力に感謝です。


アンドレとリリアナが物品の転移と、祝杯への参加を果たした。

しばらく後の話になるが、ユートレアに新しく増えた国土の中心に城を新しく建築し、ユートレアは国の名前も変えて発展していく。いずれ、ユートレア城は天使の末裔である王太子と王太子妃が使用するだけのために残された城となる。


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