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139. 親子のシガラミと無償の愛

アンドレとリリアナを連れて、イタリアのアトリエのど真ん中に転移した。

サンルームでベビーたちにミルクを飲ませていたお婆様が悲鳴をあげた。

ですよね~。こんな血だらけで帰ってこられたら、悲鳴くらい出ますよね~。


服がズタボロで血で染まったアンドレと、首から流れた血で羽が血で染まったリリアナを見て、アンジェラが駆け寄る。

「お前たち、どうしてこんな…。」

「アンジェラ、アンドレは輸血した方がいいかも…。」

「そんなに出血してるのか。」

「うん。ちょっと日本に行ってまた動物病院の器具をもらってこようと思ってるんだけど。お爺様、一緒に行ってもらっていいですか?あの、僕…父様とお話するのが怖くて…。」

「わかってるよ。すぐに行こう。行けるのか?体は大丈夫なのか?」

「はい、これはアンドレの血で、僕のじゃないです。」

僕はお爺様と手をつないで、日本の朝霧邸の自室に転移した。

「相変わらず、すごいな一瞬でこんな遠くに来れるなんて…。」

「そうですね。じゃ、お爺様、お願いします。ここで待っています。」


五分ほど経った時、未徠が輸血用のチューブとパック、点滴などを持って戻ってきた。

「ありがとうございます。」

「さぁ、急ごう。」

未徠がそういったとき、開いていたドアから徠夢が飛び込んできた。

「おい、何があった?」

「徠夢、怒鳴ることはないだろう。ライルは何も悪いことはしていない。アンドレとリリアナが怪我をして大変なんだ。今話している暇はないんだよ。」

「おまえ、ずっと無視してるだろ。どういうつもりだ。」

「やめないか、徠夢。ライルはお前のそういう態度が怖いんだよ。」

僕は、もうその時涙があふれ、ギリギリを超えそうになっていた。


徠夢の手が僕に伸びた時、徠夢の目の前に白い光の塊が出現した。

「うわっ。」

それは、マリアンジェラを抱っこしたアンジェラだった。

「アンジェラ、どうやって来たの?転移はできないよね。」

「わからない。急にマリアンジェラがぐずって、抱っこしたらここに…。」

アンジェラがそう言うと、徠夢がマリアンジェラに手を伸ばしていた。

「マリアンジェラ?」

「いやっ、触らないで。僕の赤ちゃんに。」

僕が叫ぶより先に、徠夢の手がマリアンジェラの頬に触っていた。

激しい静電気の様な音が「バリッ」として、徠夢が気を失いその場に倒れこんだ。

未徠が徠夢の脈を診る。

「大丈夫だ、気絶してるだけだ。」

そう言うと、未徠は廊下に出てアズラィールと徠神を呼び、徠夢を部屋に運んで寝かせるように頼んだ。そうして、僕に「さあ、行こう。」と促す。

マリアンジェラを僕が抱き、片手でアンジェラとお爺様と手を繋ぐ。

そして、イタリアへ転移した。


アンドレと同じDNAを持つのは現在アンジェラとミケーレだけなので、アンジェラしか血液の提供ができない。最低限の輸血と点滴で状況を見る。

リリアナの方も未徠に診てもらった。リリアナは睡眠薬で眠らされていただけで体には問題は無さそうだ。 

しかし、回復のために点滴をしてもらった。

二人は翌日には回復し、ベッドの上で起き上がれるようになった。


「あ、あの、お爺様。ぼ、僕、あの…。」

僕は、日本での徠夢ちちおやとのやりとりの事をお爺様と話そうと思ったが、どうしても言葉が出てこない。それを察してか、お爺様が先に言葉を発した。

「お前は何も悪くないだろ。私からも徠夢に言ってみるよ。何が気に入らないのか。なぜ暴力的になるのか…。心配するな。」

僕は、頷くことしかできなかった。

「しかし、ライル。あれは驚いたな。あの白い光の塊で転移してきたのは、マリアンジェラだろう?」

「あ、はい。多分そうだと思います。」

「生まれたばかりで、お前の危機を感じ取って助けに来たとしか思えん。」

「そ、そうですね。すごい。ですね。」

確かにすごい。マリアンジェラから受けた能力で毒が消せたりしたのもすごいと思ったが、本人は自覚なしで僕を助けてくれた。

マリアンジェラが僕を愛してくれているってことなのかな…。そう思うと、胸が熱くなった。


あっという間に祖父母の帰宅の時が来た。転移で送っていこうかと提案したが、来るときに飛行機に乗って、パスポートにはイタリアに入国したと記録されているので、普通のルートで帰るとのこと。

二人は、ぼくが小さい時に十分抱けなかったから、今ひ孫を抱けてうれしいと言ってくれた。次はメッセージをくれたら、僕が迎えに行くと約束して、彼らは日本に帰っていった。












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