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130. ドクター・ユーリ

 五月十三日土曜日。

 黒い翼の天使は五月四日に少し食事をとった以降、一切何も食べていなかった。

 日本で少しコーヒーを飲んだくらいか…。

 そのせいか、体はかなり衰弱していた。

 アンジェラは彼をベッドに寝かせ、少しでも食べるように促したが、意識が戻っても食べようとしなかった。

「どうして食事をとらないんだ?」

「食べると気持ち悪くなるんだ。」

「つわりか?」

「ふざけるな、この体はそんなんじゃない。」

「じゃあどうして…。」

「死にたがってるのさ。心も、体も、生きるのを拒んでる。」

 とりあえず、スープだけでも飲め。

 スプーンで口に運んでくれるアンジェラのために一口飲み込んだ。

 ゲホゲホッ…。思い切りむせる。

「ごめん。」

「なんでも出来ることがあったら言ってくれ。いいな。」

「うん。」


 少し休んでから、話の再開となった。

「アンジェラ、あの男、ドクター・ユーリは五百年も生きているわけではないと推測できるよ。これは、僕の想像なんだけど、あの男は、ユートレア遺跡から発掘した物から魔法陣の形状を描きだした物を見つけたんだと思う。

 僕たちが知っている魔法陣は、自分たちが今いる時間の封印の間へ送り届ける転送用の物

 しかないけれど、あいつはその座標や時間軸を設定できるんじゃないかと思うんだ。」

「じゃあ、ただの人間の男が行ったり来たりしているということか…。」

「そうだと思う。だからあの男を簡単に見つけられないんだ。今は過去に行っているのかもしれない。」

「それで、あいつの目的はわかったのか?」

「あの男の記憶をコピーしたんだ。五百年前の儀式のときにあの男に触れたのに、三十年前の記憶があった。あいつは、テロリストだ。宗教団体を隠れ蓑にしている。そして、川上かえでの夫だった時に大学教授だったというのは本当らしい。その時に魔法陣の知識を得て、そして、過去に行き天使の核を持つ人物の選別方法を知り、朝霧家の伝説などから僕らの家系に目を付けたんだと思う。そして、最終的な目的は、世界征服。

 いや、自分が神になりたい。と願っている。」

「それはまた、ずいぶんとお花畑な目的だな。」

「まぁ、ルシフェル復活させたら、そういうこともできるのかもしれないし。

 一概にできないとは言い切れない。」

「他にわかったことは?」

「赤い目の代わりにライラの頭の蛇を使うつもりでライラを殺して手に入れた。

 あの男に加担している者はそれで言うことを聞いているんだ。」

「あの動画か…ライラは一回死んでいるのか?」

「あぁ、ライラが死んで一つわかったのは、僕たち天使の核を持っている者たちは死ぬと言っても無になるわけじゃない。そのまま、核がまたどこかで別の命として発生するようだ。死体は残らず消滅し、核だけが飛んで行った。」

「謎だらけだ、頭が痛い。」

「あ、あと、あの封印の間で涙が石になるだろ?あれが何なのかが知りたい。」

「あの変な涙が止まらなくなる大きくなる石か?」

「あぁ、僕たちはあれを触ると明滅しただろ?あれは、普通の人間だと起こらない。

 そして、封印の間と同じように体の組織の鮮度を保つような効果があるらしい。」

「でもどうやっても調べられないだろ?」

「そうなんだ。この前見たら、色の違うものも落ちていた。」

 僕はアンジェラにスマホの写真を見せた。

「この赤いのはアズラィールがリリィを触ったときに出たものかもしれない。」

「僕がこの前触ったときは青いのが出たんだ。」

 もしかしたら能力の種類によって、出る色が違うのかもしれない。

 一度触らないようにして球を回収しに行こう。この球で何ができるのかはわからないが…。

「あと、最後に杏子なんだけど、ドクター・ユーリに利用されただけのようだ。

 子供の時に低温睡眠状態にされ数年成長を遅らされ、徠夢に近づかせるために記憶を消されている。全て命令された通り、しかも本人には記憶や意識がない。頭の中に通信機器を埋め込まれているようだし。」

「そうか、それで今後はどうしたいんだ?」

「あいつを、ドクター・ユーリを殺す。」


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