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128. 誕生日の贈り物

 僕は知らないうちに眠ってしまったようだ…。

 ここは、イタリアのアンジェラの家の倉庫の中…。床に丸まって寝てしまったらしい。

 ここに来た時の記憶がない。体が重くなって、マズイと思ったんだったな…。

 あの施設に何かあるのかな…。とりあえず、近づかないようにしよう。

 あれ、僕にブランケットがかけてある。自分で持ってきたのかな?

 後ろを振り向くと、えっ…アンジェラがうつ伏せで床に…。

「…っ、アンジェラ、アンジェラ、大丈夫か?おい、しっかりしろ。」

 意識がない…。ぐったりして、ん、酒臭い。

 どうやら、アンジェラがまた倉庫で一人でお酒を飲んでいるところに、僕が転移してきて気を失ったものだから、慌ててブランケットを持ってきて、僕につまづいて転んで、べちょっと床になったまま寝てしまったようだ。

 アンジェラの体に傷はないようだ…。良かった。

「飲みすぎだろ。」

 つい声に出して言ってしまった。

「ん、んっ…。」

 アンジェラが、目を覚ましそうだ。

 僕はアンジェラを抱えてベッドに連れて行き寝かせた。手を離した時、アンジェラが上体を起こし僕の腕を掴んだ。

「待て。話がある。」

「なんだ?」起きてるのかよ…。

「おまえ、弱ってるだろ?どうしてだ?」

「ん、動画送ったの見たか?あの施設の中に留まっていたら、力がどんどん失われた。」

「杏子がいたところか?」

「そうだ。だから急いでどこかに行かなければ、と思ったんだが…」

「今は大丈夫か?」

「あぁ、ずいぶんとマシになった。」

「もう、やめないか…。ルシフェルが消滅したのだから、悪魔なんて復活しないだろう?放っておいてもいいんじゃないか?」

「この体の中の悪いものを浄化したいんだ。せめて、最期に…。」

「リリィ、どういう意味だ?」

「徠人が苦しまないようにしたいんだ。」

「リリィ…。」

「もう少しだけ待ってよ。いずれにしろ、この体はもうそんなには持たない。」

「そうなのか?」

「あぁ。」

「その体の中にいて、お前は大丈夫なのか?ちゃんとリリィの体に戻ることはできるのか?」

「ごめん。全てが終わったら戻る。」

 その言葉を最後に彼はまた消えた。


 その後何も進展がないまま日々は過ぎてゆき、五月十一日木曜日となった。

 この日は皆の誕生日だ。

 しかし、誰も祝うような雰囲気ではなかった。

 早いものだ、去年リリィと共に誕生日を祝ってからもう一年が経った。そして、もうすぐリリィがいない生活も半年になってしまう。

 アンジェラはリリアナに頼んで封印の間を訪れていた。

 ポケットから取り出したネックレスをリリィにやさしく着ける。

 何の反応もない体に触れると、空しさが心を蝕みそうだ。

 ピンクゴールドの小さな薔薇をあしらったかわいいネックレスだ。

「かわいいよ。」

 そういった時にアンジェラはその場で気を失った。

 後ろから黒い翼の天使が首筋に手を当て、アンジェラを眠らせたのだ。

 彼はアンジェラを床に寝かせると玉座に座っているリリィの腕を噛んだ。

 血がジワッとにじみ出る。

「今日だけ、特別だよ。」

 黒い翼の天使はその血を一舐めすると光の粒子になり、砂のように崩れて消えた。

 そして、ハッと息を吸い込むと、リリィの体は腕の噛み痕の痛さと共に目が覚めた。

 自分で噛み痕を癒すと、リリィはアンジェラを抱きかかえ、自宅の寝室へ転移した。

 リリィはアンジェラをベッドに寝かせると風呂に入り、ネグリジェに着替え、ベッドに潜り込んだ。

 アンジェラの首筋に手を当てる。

「アンジェラ…。」

 アンジェラは夢を見ていると思っていた。

 リリィが自分の横で優しく見つめてくれている。そしてキスしてくれた。

「あぁ、リリィ。」

 夢でも会えて抱き合えるなんて、幸せだ。

 何度も何度も抱きしめて、キスをした。

「アンジェラ、プレゼントありがとう。」

 その言葉で目が覚めた。アンジェラは自宅の寝室で全裸で寝ていた…。

 どうしたんだったか…。確か、リリアナに封印の間に連れて行ってもらって、その後の記憶がない。

 アンジェラは慌てて服を着ると、リリアナに迎えに来てくれたのかと聞いた。

「言われた通り二時間後に行ったら、アンジェラはいなかったわよ。」

「どうやって帰って来たんだ?」

「わかんないけど、リリィの体も封印の間になかったわよ。」

「悪い、連れて行ってくれ。」

 リリアナとアンジェラは封印の間に転移した。

 リリィの体はそこにあり、変わらず玉座に座っていた。

 でも着ているワンピースが変わり、首筋にいくつもキスマークがついていた。

 リリアナはちょっと赤面して、アンジェラに言った。

「まさか、ここで変な事したんじゃないよね?」

「してない…。と思う。」

 ちょっと待っててとリリアナは言うとリリィの額に触った。

「ぶっ。」

 リリアナが顔を真っ赤にしてふき出した。

「どうした?」

「口で言うのもなんだから、アンジェラにも見せてあげる。」

 リリアナがアンジェラの額に手を当てリリィの記憶を見せた。アンジェラの顔が真っ赤になった。

「アンジェラって結構しつこいタイプなのね。ま、今日だけ特別とかリリィ本人が言ってるんだから、そうなんでしょ。おなかの赤ちゃん大丈夫なのかな?あんなに何回も…。」

 アンジェラががっくりしているのを横目で見て、リリアナは言った。

「リリィはまた黒いのになってどっか行っちゃったみたいだから、帰るわよ。」

 アンジェラはリリアナに連れられ、家に転移した。

 夢だと思ってたことは現実だったようだ。




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