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119. 再会と憔悴

 徠夢はすぐにアンジェラに連絡した。

 電話で「ライルに会わせてほしい」と懇願した。

 アンジェラは冷ややかに「危害を加えないと約束しろ」と言った。

 そうか、僕がライルを死に至らしめた超本人なのだ…。


 アンジェラが電話で誰かに指示をした。

 何分も待たずにアンジェラとジュリアンが朝霧邸にやってきた。

 アンジェラはもう一度「危害を加えないと約束するように」と言った。

「あぁ、誓うよ。」徠夢がそう言うとジュリアンが徠夢の手をとり、反対側の手でアンジェラの手をとった。

 一瞬ののち、三人は淡い黄色のような大理石のような素材でできた小さな部屋に出た。

 その部屋は円形をしており、玉座と妃の座、そのほかに十二の座席がぐるりと円を成している。中央には円卓があり、部屋全体が照明もないのにうっすらと明るい色をしている。

 徠夢は初めて封印の間を訪れた。


 徠夢は自分の子が玉座に座らされている姿を見て、思わず駆け寄った。

 今にも目を覚ましそうな、可愛らしいその顔を見て、涙が溢れてきた。

「ごめん。こんな僕が父親で。愛してるよ、ライル。」

 そう言って、手に触れた。

 リリィの半開きになったその目から、涙がポタポタと落ちた。

「ライル、聞こえるか?聞こえているのか?」

 リリィの肩に手をかけ揺さぶり始めた徠夢をアンジェラが止めた。

「やめろ。そこまでだ。」

 徠夢は納得がいかない様子で、振り返る。

「でも、涙を…。」

「条件反射みたいなものだ。もういいだろう。」

「帰ろう」と言ったアンジェラの後ろに、音もなく黒い翼の天使がまた現れた。

「みなさん、おそろいで…。」

 彼は、そう言うとアンジェラの頬に手で触れた。

 アンジェラにいくつかの記憶が流れ込んできた。

「身代金、惨殺、放火、狂気、洗脳…。どういうことだ?」

「大丈夫、これは過去にすでに起きたことだ。情報を拾ってきただけさ。気にするな。」

「は、話がしたかったんだ。お前と。なぁ、二人きりで話せないか?」

「変な事するなよ。ふふっ。」

 彼はアンジェラの頬を触ったままどこかに二人で転移してしまった。

 残されたジュリアンは徠夢に「もう帰りましょう」と促す。

「アンジェラと徠人は大丈夫なのか?いつもいがみ合っていたじゃないか。」

「あぁ、あれは徠人ではありませんから、大丈夫です。」

「え?徠人じゃない?どういうことだ…。」

「知らない方がいいこともあります。」

 ジュリアンはそう言うと徠夢を連れて日本の朝霧邸に転移した。


 一方、黒い翼の天使とアンジェラはユートレア城の王の間にいた。

「話ってなんだ?」

「リリィなんだろ?なぁ、どうして徠人の体に入ってるんだ。戻ってくれ。」

「ほぉ、バレちゃってたか…。ヒントを出しすぎたかな。」

「まさか、このままずっとその体に入っているわけではないだろ?」

「さぁ、どうだろうな。結構いいよ、この中は。怒りの増幅で力がみなぎる。」

「なぁ、リリィ。聞いてくれ。リリィのお腹にいる私たちの子供のことを、私はあきらめたくないよ。お前が戻ってくれないと、生まれてくることが出来ない。」

「…な、なに?子供だと…。」

 明らかに動揺しているが、少し間をおいて彼は言った。

「アンジェラ、まだ終わってないんだよ。まだ時間がかかる。まだ帰れない。ごめん。」

 彼はアンジェラをその場に残して消えてしまった。

 彼がリリィの魂の在り処であることを確認できた安堵と、しかし戻るように説得できず、またどこかに行ってしまった不安とで、アンジェラは憔悴していた。




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