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116. わだかまり

 四月十二日水曜日。日本時間のお昼頃。

 左徠、徠輝、ライラは同じ私立の中学校で午前中の授業を終え、教室でお弁当を食べていた。他の生徒になかなかなじめないライラのために徠輝はライラといることが多い。

 左徠は元々人見知りで、避けているようなところもあるのだが、やはり徠輝とライラと行動を共にすることが日常であった。

「ねぇ、左徠。おとといのジュリアンの撮影の時、ジュリアンになんて言われてたの?」

「それは…教えない。」

「うわっ、ケチ。ドケチ。」

「だって、言ったらもっと怒るだろライラは。」

「ちょっとどういうことよ!」

 徠輝はライラを抑えるのに必死だ。

 そこに、同じクラスの女子が五人固まってやってきた。

「あの~。」

「何よ。」

 ライラがきつい言い方をする。

「朝霧左徠君、ってジュリアンと知り合いなの?」

「え?」

 すかさず、ライラが反応する。

「左徠だけじゃないわよ。うちの親戚だもの。」

「えっ、そうなの?」

 女子たちが色めき立つ。

「それが、何か問題あるわけ?」

 ライラがイラついた感じで聞くと、女子たちが顔をほころばせて、言った。

「あの今朝アップされた動画、左徠君が出てるでしょ?すごく素敵だった。同じクラスに左徠君がいてうれしい。」

「…。あの、俺たちも出てるんだけどな、その動画…。」

 徠輝がボソッというと、女子達が驚いて反応した…。

「アンジェラに頼まれて、撮影に行ったんだ。」

 徠輝が言うと、女子達の目がぎらぎらと反応している。

「え?アンジェラって、あのアンジェラ・アサギリ?」

「あ、うん。」

「え?どういう関係なの?アンジェラ様と…。」

「うちのお姉ちゃんの旦那で、それ以前に親戚だし。」

 ライラがサラッと言ってしまった。

「「「えーーーっ!!!」」」

「ライラちゃん、それは言っちゃまずかったんじゃないの?」

「そう?知らない。だって、いつも家にいるじゃない。でかいアンジェラ。隠す必要あるの?」

 当然のことながら、日本の朝霧邸の周りにまた報道陣が押し寄せ、学校の周りにまでパパラッチが出現する始末となった。


 怒ったのは徠夢だった。アンジェラに電話をかけてきたかと思ったら…

「芸能活動はダメだと言っただろ!なんで家とか、学校とかばれてるんだ。」

「多分ライラが言ったんだろうよ。聞いてみたらいい。」

 徠夢はライラに一応聞いてみた。

「あ、言っちゃダメって言ってなかったから、アンジェラはお姉ちゃんの旦那で、ジュリアンは親戚でって学校で言っちゃったわ。言っちゃダメだったわけ?」

「当たり前だ。」

「ごめんなさい、パパ。」

 リリィとアンジェラが結婚してイタリアに行って、やっと報道陣がいなくなったと思ったのに…。

「あっ…。」

 その時徠夢は、どうして二人がここから出てイタリアに行ってしまったのかを認識した。

 自分たちに迷惑をかけないように、去ったのか…。

 徠夢は嫉妬心からライル=リリィに冷たく当たってしまったと反省していたが、実のところ、ものすごく寂しかったのだ。

 恋人ではないが、今となっては、たった一人の親である。もっと頼ってほしい。もっと愛してほしいと徠夢も思っていたのに、根こそぎアンジェラに持っていかれたとそう思っていた。自分の愛が足りなかったのを棚に上げて。

 そのくせ、頼られたときに拒否し、手まで上げてしまった。

 本当の意味で徠夢に悲しみが押し寄せてきた。自分のせいだった。

『ライル、すまなかった。』心の中で徠夢はそう思った。


 その時、二人の目の前に人影が…。

 黒い翼の天使が音もなく、現れた。

 ライラが震えながら、彼に向って罵声を浴びせる。

「こっちこないでよ。徠人。あんた真っ黒じゃない。私を殺しに来たの?」

 黒い翼の天使は、そんな言葉には反応せず、徠夢の目を見てニヤリと笑った。

「オマエ、ひどいことするんだな。」

「なっ、何を言ってる。徠人、正気じゃないな。とにかく帰ってこい。何やってるんだ。」

「まだ、終わってないから、帰れない。」

「なんの話だ。」

「ふ・く・しゅう だ。」

 そう言って、また目を細くし、ニヤリと笑った。

 その瞬間、彼は消え去った。

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