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115. 引き続きお仕事の時間

 四月十一日火曜日。イタリア時間午前七時。

 アンジェラのスマホに着信があった。プロモ用ビデオが編集できたので、すぐに確認してほしいとのこと、できれば、オンラインミーティングをしながら話したいと言ってきた。

 起きたばかりの不機嫌なアンジェラだったが、今まで待たせていたので仕方ないと十分後にミーティングの約束をした。

 とりあえずシャワーを浴び、バスローブを羽織り、タオルで濡れた髪を拭く。

 アンドレとリリアナはまだ寝ている様だ。とりあえず、起きて途中からでも会議に参加するように言った。

 アンジェラはバスローブ姿のままサンルームでPCをオンラインミーティングに接続した。

 そこへリリアナのパジャマを着たジュリアンがやってきた。

「おはよ~ございます。」

 ミーティング中のスタッフが思わず、「かわいい」とため息を漏らす。

「ジュリアン、着替えてこい。」

 バスローブを着たままのアンジェラが言うとなんだかおかしいが、社長の言うことは聞かないとね。本当はバスローブ姿のアンジェラを見てよだれを垂らしているスタッフだっているかもしれないけど。

 ジュリアンがジーンズにパーカーを着て戻ってきた。

「じゃ、早速だが、編集済みのビデオを見せてくれ。」

 スタッフが動画を画面に出し再生する。

 超ドアップのジュリアンのまつ毛から、少しずつ引き全体を見せる映像から始まり、ピアノを弾き始めるところまではソロの映像だ。勢いがついてきたところで、左徠が横にいる映像を織り交ぜ、途中で子供たちと食事をしている場面が入る。

 途中でアンジェラが映像を止めるように言った。

「食事中の子供たちの映像は全部遠目の物を使用してわずかに入るようにしてくれ。あと、左徠、ピアノの横に立っている子と見つめ合う最後のやつをもうちょっと途中途中で切って、間に演奏している手元を入れ、思わせぶりにしてくれ。ということで、修正を頼む。どれくらい時間が必要だ?」

「二時間もあれば…。」

「よし、二時間後にもう一度つなぐ。」

 そう言ってアンジェラはミーティングを終了した。

 アンジェラは朝食を済ませ、着替えて事務所に送る前の加工していない動画をチェックしていた。あの、黒い翼の天使の部分だ。

 そうだ、ラ・カンパネラを弾いているリリィの動画をピアノの搬入時に撮ったはず…。

 アンジェラはその二つを見比べることにした。

 業者がいたときには翼を出していなかったが、業者が帰った後に弾いた動画では、知らず知らずに翼が出て、あの黒い翼の天使が翼を広げているタイミングと同じタイミングで翼を広げ、頭の揺れや目くばせまで、まるで憑依している様だ。いや、多分、リリィが徠人の体を使っているので間違いないだろう。どうにかして話をしたい。

 自身の肉体の在処を知らないわけではない、では、なぜ自分の肉体に戻らず、徠人の体で移動しているのか…。なぜ私の元に帰って来てくれないのか…。

 やはり、どうにか話をしたい。


 そんなことを考えているうちに二時間が経ってしまった。

 サンルームに向かい、途中アンドレとリリアナにも声をかける。

 合体しジュリアンになってから、着替えてサンルームに合流した。

 ミーティングが始まった。修正を加えた動画を再生してもらう。

「どう思う?」

 アンジェラがスタッフ全員に聞いた。

「あの、言いにくいんですけど…。」

 スタッフの一人が意見を言い始めた。

「なんだ。」

「この、ジュリアンさんと一緒に仲良さそうにしている男の子ってデビュー可能なんですか?」

「は?これは、そうだなぁ…どうだろうな…。ちょっと聞いてみないとわからないが。」

「いや、実は…スタッフでさっきこの動画を見ていたら、この子が気になるっていう意見が多くて…。」

「…うーん。多分親は反対するだろうな。本人はやりたいと言いそうだが、まだ中学三年だからな…。うちに行けば、同じ顔がゴロゴロいるから気が付かなかったが、この顔は行けそうなのか?」

「顔もですが、ふとした表情が何か秘めた感じでいいですね。」

「ちょっと電話してみる。まっててくれ。」

 そう言ってアンジェラはアズラィールに電話をし、左徠の芸能活動への関心と、一応彼の親である徠央と家長である徠夢に許可を取りたい、と伝言を頼んだ。

 三分くらいで返事がきたが、家長である徠夢の許可が下りないと言われた。

「悪いが、芸能活動はNGらしい。エキストラや雑誌モデルくらいなら大丈夫だろうが…。あとはなにかあるか?」

「あの、カメラマンから撮影の時にすごい人がいたと聞いたんですが…。」

「すごい人?」

「あの、銀髪で赤い瞳の…ピアノを急に弾き始めた…。」

「あぁ、あれはリリィ…私の妻の叔父だ。あいつはダメだ。映像には出さない。そんなことより、この映像についての意見はないのか?」

「はい、皆全員一致でこのまま出したいと思っています。」

「そうであれば、準備をしてくれ。もし、さっきの金髪の子の名前を聞かれたらSARAIだと答えてもよい。あくまでも名前だけだ。そして二人の関係は親戚だ。」

「明日、配信してもいいですか?」

「あぁ、かまわない。」

「ありがとうございます。」

 ミーティングが終わり、日本時間の翌朝配信が開始された。


 スタッフが想像していた通り、左徠のことに興味を持つものもかなり多くいたようだ。

 そしてジュリアンがますます人気を獲得し、モデルとしてのオファーがかなり来ている様だ。

 なるべく話さないような仕事を選び、少しずつ露出していきたい。

 これで、アンドレとリリアナが自分たちで収入を得て、少しでも充実した人生を送れることを祈ろう。









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