1.僕のはじまりのストーリー
僕は、朝霧徠流。現在九歳、近くの小学校に通う三年生の男児である。
周りの大人からは少し生意気だと思われている様だが、僕は生意気なのではなく、賢いのだ。
僕の家は割と大きめの洋館で、昔はこの辺りの地主の家系のようだ。
すでに祖父母は他界し、両親と三人で暮らしている。
父 朝霧徠夢と母 朝霧杏子は共に獣医をしており、家の敷地内にある動物病院を営んでいる。
父は、自宅の動物病院以外に大学の研究室にも週に1度は通っており、何やら難しい研究をしているらしい。
元々この動物病院の建物は人間のお医者さんであった祖父がやっていた医院だったらしい。
父と母は大学が同じで学生結婚をしたそうだ。
そんなわけで、僕の父はまだ二十九歳、母は1つ年上の三十歳。
自分で言うのも何だが、結構な美男美女の両親だと思う。
獣医師としての経験は浅い二人だが、どういうわけか動物病院は結構流行っているようだ。
何か秘訣でもあるのだろうか。今度聞いてみよう。
僕には一つ秘密がある。あ、いや秘密ってほどでもないか。見たらわかっちゃうからね。
実は、髪がブロンドで目が碧眼。父も同じ。祖父も同じというわけで、外国の血が流れているらしい。
このことは、詳しく聞いたことはない。
父も同じなので、僕自身は不思議に思ったこともない。
家が広いので昔からの家政婦さんが働いてくれている。
父が生まれたときにはすでに働いていたそうで、誰よりもこの家と朝霧家の歴史に詳しい。
家政婦さんの名前は、”川上かえで”さん、推定50代前半。
女性に年齢を聞くのは失礼なのでちゃんと聞いたことはない。やさしい料理上手の女性だ。知っていることは何でも教えてくれる。
さて、僕の周りの環境はこんなところだ。
一つ不満というか、残念な事があるとすれば、この家にいる両親と僕以外に血縁の親戚がいないことだ。
学校の友達には皆、いとこや兄弟姉妹、叔父叔母がいると聞くが、僕にはいない。かえでさんは何か知っているだろうか。疑問を先延ばしにしてはいけない、ちょっと聞いてこよう。