憎まれる奴が先に死ぬ
この物語は作者が見た夢を小説にしました。
とても怖く不思議な気持ちになりました。
多分全部、外の草刈りの音の所為です。
それは何て事ない、ただの一日の終わりだと思っていた。
ビービービー
「え!?何!!!?」
地震を知らせる様なけたたましい警報が家中に響き渡る。
しかしそれは自分の携帯から鳴った物では無かった。
とても近く感じられて、けれどとても遠く感じる警報の音。
そんな事よりも今は家の中から出なくては。
そう思った俺は母、兄の二人の家族全員を外へと誘導した。
「あ…っ。」
最後に自分が家を出ようとした時、今は亡き祖母の写真を持って来ていない事に気づいた。
思い出したくもない、初めて自分が体験した大きな地震の記憶。
それ以前に亡くなっていた祖母だったが、その時も祖母の写真だけはしっかりと抱きしめて逃げていた。
俺は家に戻り祖母の写真が入った写真立てを手に取り急いで家を出た。
最初こそまばらに外に出ていた人間達は次第に数を増す。
この警報音は不思議な事に耳をつんざく程の大きさは無いもののどの家にも聞こえる様だった。
何よりも驚いたのは夜だった筈の空は快晴に変わっていて、聞こえる警報音と共に恐怖心を抱いた。
俺は不安で揺れる心を隠し、蹲る亡くなった筈の祖母を抱きしめて祖母の耳元で「大丈夫」を繰り返した。
その瞬間に気付いた。これは夢なのだと。
俺は【三浦健斗】27歳で在宅でフリーランスをしている。
家族とは一緒に住んでいて、母と兄が居る末っ子。
そしてもう十年も前に母方の祖母を失くしている。
ザワザワとする人の声の奥でゴゴゴと重く気持ちの悪い音が聞こえた。
これは知っている。
大きく揺れる前に必ずなるあの音。
「来る…っ。」
ガタガタ、ググググ。
形容しがたい、したくない音が響きこの世界が大きく揺れた。
大きな地震が起き、不安なまま居ない筈の祖母を抱きしめ空を見上げる。
信じられないものを見た。
空の色が青から、バケツをこぼした様に黒く変化し世界が暗くなる。
怖い、怖い、怖い。
そしてどこからか声が響いた。
警報と同じで、とても近くてとても遠く。
どこから聞こえてくるのか分からないその音、声。
≪この世界に死者を放つ≫
≪その死者には殺したい程に恨みを持つ者が居る≫
≪生者よ、逃げろ≫
≪死者を殺し、逃げ、生きてみろ≫
≪生者がどれ程憎まれているか、見せてみろ≫
この夢の世界は人ならざる者が無理矢理に変化させた狂気へと姿を変えた。