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第1話 悪役令嬢=私!?

「な……っ、あれ?えっ、ここどこ……」

「お嬢様!?お怪我はありませんか!?」


――ある日突然、(わたし)(わたくし)は融合し、私になった。

頭に膨大な映像が雪崩のように降り注ぐ。

目の奥がチカチカし頭の中で沢山の火花が破裂しそうだ。

頭が……痛い。


「お嬢様……!誰か!誰か医師を呼びなさい!」


 そう、私はどこかの世界で平凡に働く女……だった。

毎日締め切りに追われ、嫌味な上司からネチネチ言われながら仕事をこなしていた。

何か娯楽を作るような仕事をしていた気がする。

自分自身もその娯楽が好きだったし、人を喜ばせるのは好きだったから。

ただ、その業務はそれはそれは酷い毎日だった。

朝から晩までパソコンに向かい、ミーティングを繰り返し、帰りは終電、ひどい時はタクシーで帰宅したり、翌朝の始発だったり……。



ここはアールハイド王国。

その少女はアルニャック公爵家の長女、オディール・アルニャックとしてこの世に誕生した。

オディールは美しい母に似て愛くるしい見た目をしていたが大変奔放な娘だった。

奔放というと多少聞こえが良いが、国でも有数の力を持つ公爵の愛情を一心に受けたそれはすくすくと我儘いっぱいに育ち、まさに天使の容姿をした悪魔のような娘となった。


「育て方間違ってんじゃないの……」

「お嬢様!」


少女がむくりと起き上がると傍に居た女が悲鳴のような高い声を上げた。

声のほうに目を向けると、動きやすいワンピースを身にまとった女がいた。

少女は女の名前を知っていた。たしか、……お付きのメイド、アニー。


「アニー……ごめんなさい、なんだか頭がくらくらするわ。しばらく一人にしてくれないかしら」


「あぁ……お嬢様。お体は大丈夫なのでしょうか?医師の診断ではお嬢様はお疲れのご様子……ということでしたが……」


「大丈夫よ」


部屋から出るように促すと女はそれでは失礼します。と頭を下げると部屋から出た。

お茶の準備をするので必要があればいつでもお呼びくださいとのことだ。至れり尽くせりである。

お嬢様と呼ばれた10歳ほどの少女――オディールは起こしていた体をふかふかの枕に倒した。


「オディール……オディールねぇ。なんだかどこかで聞いたことがあるんだけれど」


いや、私の名前なんだけど、と心の中でツッコミを入れると頭の中に次々に映像が浮かんだ。



「私の企画コンペは、乙女ゲーム【聖女の光と7人の騎士】をさせていただきます!」


「こちらの乙女ゲームのウリは従来の乙女ゲームにあるノベルゲームだけではなく、所謂ダンジョン探索要素を組み込み、魔法の力を持つ古道具を集め領地を発展させるという要素を入れ込みたいと考えております」


「ありがちなゲーム……!?私の発表しているゲームはマ●オにド●クエを足したら面白いゲームになると言っているようなものだと……!?」


「わかりましたよ、流行りの【悪役令嬢】を登場させ、主人公と泥沼を争わせるようなゲームならいかがでしょう!悪役令嬢は……そう、オディール!」




カッと目を開くとオディールは再度体をむくりと起き上がらせ、とことことドレッサーの前まで歩き鏡を覗き込んだ。

そこには柔らかい白金の髪の毛をふわふわ躍らせた目鼻立ちがくっきりした――瞳は甘くとろけるような桃色の、まるで精工に作られた人形のような少女が映っていた。


オディール(黒鳥)なのに、黒の要素は入れない見た目…」


「黒鳥には天使のような要素をふんだんに取り入れ……、そう、ヒロインは黒メインのカラーリング……」


「これは……私の悪役令嬢(オディール)……!?」



オディールの中には記憶が二つあった。

ゲームを作る仕事をしていた女の記憶と、公爵令嬢のオディール。

女の記憶は薄らぼんやりで、ただ、悪役の娘としてオディールを生み出したのは自分という確信のみがあった。



「私……この物語がどう進むのかを知らないわ」


「……それどころか開発に携わった記憶もない……ここに来る前の(わたし)は何をしていたの?」


再び視界が暗闇に染まり、そこで意識を手放した。

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