闇の国へ
「あら?あなた達は実質付き合っているって事よね?」
キャッキャッと騒ぎながらヘレナが言う。
「良いわねぇ。私達妖精は本能的に恋をしないのよ、羨ましいわ。私が恋愛好きなのは異例らしいもの......」
そんなヘレナをよそにソフィはきょとんとした顔で首をかしげている。
「私は恋をしたことがないから分からないわ。今までに関わったことのある男性が二人ですもの」
目を伏せてそう言うソフィはなんだか悲しそうだ。
「闇の王子であるお兄様と建人としか関わったことがないわ。ずっとお母様の側近の女性に世話してもらっていたから。お兄様とはたまに会ったけれどね」
「ソフィ、この二人はソフィの事を知らないわよ。まず闇の国との関係から話すべきよ」
ヘレナが呆れた顔をして言った。どうやらヘレナはソフィの事をよく知っているみたいだ。
「そう言えば、話していなかったわね。私は光の力を引き継いだ光の王女って事は知っているわね?でも、私は闇の王と光の王女の娘なの。闇の王子は私のお兄様。両親は私が幼い頃に亡くなったわ、私とお兄様に力を引き継がせて」
しばらくソフィの話を聞きながら歩くと、森の終わりが見えた。ヘレナが空が暗いのは闇の力のせいだと説明している。
「さぁ、着替えの時間よ。ここまでは光の国の服で来たけれど、闇の国では目立ちすぎるからね。闇の国ではもっと黒が中心の露出が少ない服を着るの」
そう言うと、ソフィは麻李と建人を並ばせると、自分もその隣に並んだ。
「ヘレナ、いくわよ......タギール」
短い呪文のようなものを唱えると、ヘレナから発された光が三人を包み込んだ。眩しくて三人が目を瞑り、開いたときには服が替わっていた。
「何これ......服が替わったわ。魔法?」
麻李が目を輝かせて自分の服を見つめている。その隣の建人は唖然としている。
「これは幻像よ。さっきから着ている光の国の服に闇の国の服を映しているだけ。破れたり大きくめくれたりすると不自然に見えるかもしれないから気をつけて」
「準備は整ったわね。じゃあ闇の国に入るわよ」