終戦
「襲撃!」と言う叫び声が聞こえたとき、ピーターはバルコニーに出た。予想通り、ソフィ達が闇の国へ来たようだ。黒いマントを羽織っているが、中には純白の鎧を着ているのが見える。
先頭でソフィが光を帯びた短剣を奮っていた。
ピーターは魔力を呼び起こす。闇の王子であるにもかかわらず、ピーターは魔力の扱いが下手だ。魔力の動きを意識しなければ動かせない。
「マグナティシ」
そう呟いて魔力の粉を吹くと、黒い魔力は戦いが繰り広げられている広場に広がった。ソフィは魔力に包まれた事に気付くとハッとした顔で周りを見渡し、よろめき、倒れた。ピーターはそれを確認すると、マントを羽織り、ソフィの元へ向かう。ソフィの額に手をやろうとすると、バサッという音と共に最後まで立っていた少女が倒れた。鎧を着ていない事から麻弥の姉だと分かる。
「お前達、こいつらを運べ。催眠魔法がかかってる。鎧を着ている者は大広間、着ていない3人は個室で寝かせておけ」
ピーターの指示で襲撃者達は城の中に運ばれた。ピーターはそのまま麻弥の部屋へ向かい、ぐっすり寝ている麻弥の脇に座った。襲撃があったとは露知らずスースーと寝息をたてている。
しばらく寝顔を眺めていると、麻弥が目を覚ました。辺りを見回してピーターに見つめられていると気づいた瞬間、目を見開いてそれから相手を探るような目付きになる。一緒に生活した期間ずっとピーターに見せ続けている表情だ。
「起こしてしまったか。まだ夜明けだよ」
「何であなたがこの部屋にいるの?いつもはスイに任せきりなのに。」
「スイは側近で唯一の女の子だからね。他にも仕事があるんだよ。さぁ、目が覚めたならおいで」