4、50年前
僕とシルはお婆さんをベッドで寝かせ、看病をしたが症状はどんどん悪化していく。
「どうしよう、このままじゃお婆さんが」
「ラララ………」
そのとき、僕とシルの前に魔法陣が出現し中から1人の女性が出て来る。
女性はお婆さんに駆け寄ると手を握ると、お婆さんから黒い影が悲鳴を上げながら出て来て消える。
するとお婆さんはまるで嘘だったかの様に体調が改善し目を覚ます。
「ティターニアだね」
『50年ぶりね。あのときは間に合わなかったけど、今回は間に合ったわ』
「私が倒れたということは、封印が解けたのね」
お婆さんが尋ねると、女性は静かに頷く。
『完全には封印は解けてないけどそれも時間の問題ね。森の中には黒い瘴気が広がり始めて、魔物達も凶暴化し始めてるわ』
「力を貸したいけど、私にはもうどうすることも出来ないわ。あの子を止めることさえも」
お婆さんは悔しそうに唇を噛む。
その瞬間、目の前に黄金のプレートが出現する。
クエスト《不滅の絆》
僕はそれを受ける。
「ティターニア、この子達を森の外に連れて行って」
『この子達は?』
「私の友人よ。お願い、この子達を早く森の外へ」
『分かった、任せてちょうだい。あなた達、私に着いて来てちょうだい』
「でも、お婆さんが」
「ララ」
「私のことは大丈夫よ。早く行きなさい」
『ほら、早く来て』
僕とシルは、女性に手を引かれお婆さんの家から出る。
花畑の中を歩き、家が見えなくなったところで立ち止まる。
『ごめんなさいね。でも、彼女もあなた達を巻き込みたく無くて言ってるのよ』
「何が起きてるんですか?」
『悪魔の封印が解けたのよ』
「悪魔?」
『50年前にこの森に現れ、呪いの瘴気を撒き散らした。瘴気を吸った魔物達は凶暴化して、同族も人間も見境がなく襲った。
私たちは彼女と冒険者たちと協力してその元凶の悪魔と戦った』
「勝ったんですか?」
『勝利なんて言えるものじゃないわ。冒険者たちは全滅、私たちの仲間も半数が殺された。
そして、彼女は大切なあの子たちを失った』
僕は写真に写っていたモンスター達を思い出す。
『彼女が最初にテイムした子は、あなたの子と同じドリアードでね。彼女とあの子は強い絆で結ばれてた。
あの子は彼女を助ける為に、悪魔を取り込み自分ごと封印した。彼女が倒れたのは、あの子を通して悪魔が呪いを直接流したからよ』
「止める方法は無いんですか?」
『まだ封印が完全に解けていない今なら、悪魔を倒すことが出来るかもしれないわ』
「なら、僕達が戦います!」
『あのねぇ、弱っていても悪魔なのよ』
「それでも、僕達が戦います!」
女性はため息をつく。
『分かったわよ』
女性が両手を組み祈りを捧げると、目の前の空間に穴が開く。
『この中に入れば、悪魔がいる場所に行けるわ。
いい、絶対に生きて戻って来るのよ』
「分かりました」
「ラララ!」
僕とシルは穴に飛び込んだ。