3、ジャイアントトレジャークラブ
僕達はお婆さんと一緒に外に出て、湖のほとりまで行く。
湖の水はとても透き通っていて、水面は青く輝いている。
その景色に見蕩れていると、お婆さんが装飾された何も入っていない大きな宝箱を出す。
「あの魔物は宝物が好きでね。特に宝箱が大好きなんだよ。
ほら、来るよ」
湖の水面から大量の泡が発生した瞬間、巨大な蟹が現れる。
ジャイアントトレジャークラブという名前で、その隣には3つのHPバーが浮かんでいる。
「シル、やるよ!」
「ラララ!」
「キシャアアアアアアアアアア!」
蟹が巨大なハサミを振り下ろして来るのを回避する。
「ラララララー!」
シルが樹魔法を使用し、地面から巨大な木が伸びてきて蟹に巻き付き動きを止める。
動けない間に僕は短剣を引き抜き、何度も斬りつけるとほんの少しだけダメージを与える。
「キシャアアア!」
蟹は暴れて巻き付いていた木を破壊しハサミを何度も地面に叩き付けて来るのを、シルが木を操り盾の様にして防ぐ。
「くらえ、【バインドウィップ】!」
<鞭術>がLv2になったときに覚えた技を発動する。
鞭が蟹の足に巻き付く。
「やぁー!」
「ラララー!」
鞭を力いっぱい引き蟹の体勢を崩した所に、木が下から突き上げて蟹をひっくり返す。
体勢を直そうともがく蟹に何度も木を叩き付けHPバーをあっという間に1本を削る。
「ギシャアアアアア!」
蟹は怒りの方向をあげると巨大な魔法陣が出現し、ひとすじの青白い水がものすごい速さでシルに向かって放たれる。
シルは木で防ごうとするが、簡単に破壊されシルを吹き飛ばしHPを半分以上削る。
「シル!」
「ララ!ラララ~!」
シルの体を緑色の光が包み込み、出てくる木にも緑色の光が纏われている。
「ララーラー!」
木を蟹に叩き付けると、さっきよりもダメージ量が増え一撃て2割以上を削る。
蟹はハサミを振り上げようとするのを、【バインドウィップ】でハサミに巻き付けて攻撃を止めさせる。
僕は妨害しシルに攻撃させ続け、蟹のHPは残り2割くらいになり赤くなる。
すると3つの巨大な魔法陣が出現し、あのレーザーを放つ。
僕は素早くレーザーの範囲から抜け出し、シルは前と同じ様に木を盾にする。今度はレーザーを防ぎきるが、輝きが消えシルは麻痺して動けなくなる。
蟹に何度か短剣で斬りつけて引き付ける。
叩き付けられるハサミを避けながら隙を見て何度も斬りつけていき、ついに蟹のHPが全て無くなる。
「ラララ~!ララ~♪」
「シル、お疲れ様!」
シルが駆け寄って来るのを、僕は受け止めて頭を撫でる。
ポーションを出して、シルに飲ませHPを回復させる。
「これがお婆さんの言ってた箱だね」
ドロップしたアイテムを確認すると【懐かしき思い出の箱】というアイテムがあった。
それを取り出し、お婆さんの前に置く。
「ありがとう、取り返してくれたんだね」
お婆さんは箱を開けて、中から数枚の写真を取り出す。
その写真には、1人の少女とじゃれ合うモンスター達が写っている。
「これは私がまだ現役だったときに、機械の街で撮って貰った物だよ。
今はもう居ないこの子達を見ることが出来る私の宝物だよ」
お婆さんは微笑み、写真の中のモンスター達を優しく撫でる。
「お礼に私の使っていた装備をあげるわ。どうか役立ててちょうだいね」
「ありがとうございます!」
クエスト《受け継がれる物 2》を達成。
【歴戦の魔物使いの鎧】、【歴戦の魔物使いのズボン】、【歴戦の魔物使いのブーツ】、【歴戦の魔物使いの鞭】、【魔導銃】、【魔物ボックス】
僕は一括装備を押す。
全体的に黒を基調にしていて、所々に戦闘で付いた小さな傷がありかっこいい。
僕は短剣の代わりに新しく装備した【魔導銃】を見る。
ドラマとかで見る日本の警察が使う様な銃に似ているが、大きさもこっちの方が大きいし銃身も長い。
引き金を引くだけで撃てる様で、弾ではなくMPを消費して撃つようだ。
次に【魔物ボックス】を見る。
ペンダントのような見た目で、真ん中にルビーの様な大きな赤い宝石が煌めいている。
テイム出来るモンスターの数が増え、モンスターを中に入れて置けば戦闘中に自由に交代出来る様で、街にいる時や戦闘になっていないときは出して置ける。
「シル、これでいっぱいテイム出来る様になるよ!」
「ラララ~ララ~~ラララ♪」
僕とシルが喜んでいると、突然お婆さんが倒れる。
「お婆さん!」
「ラララ!」
「だ、大丈夫だよ………ぐっ!」
お婆さんの顔は苦痛で歪む。
僕とシルは急いでお婆さんを家の中に運んだ。