1、初ログイン
「ふぅ、これで頼まれた物は全部かな」
僕はメモを見ながら商店街を歩く。
メモに書いてある物を全て買ったのを確認する。
そのとき、ベルの音が鳴り響く。
音のした方を見るとそこには福引きの会場がある。
「そう言えば、会計のときに福引き券を貰ったけ」
大きな立て看板に書かれている景品を見ると、僕は1つの景品に惹かれる。
「可愛い!!」
それは3等の特大サイズの羊のぬいぐるみだ。
僕はそれがとても欲しくて列に並ぶ。
すぐに僕の番が回ってくる。
3等はまだ当たっていない。
係の人に10枚の福引き券を渡す。
「当たって!」
僕は祈るように回す。
すると1回目でベルの音が鳴り響く。
「大当たり!」
「当たったの!」
「特賞だよ!やったね、嬢ちゃん!」
「えっ………」
「むふぅ♪」
あの後、残りを回し最後に3等が出た。
僕は急いで家に帰って、ずっと羊のぬいぐるみを抱き締めている。
まんまるのフォルムでとても可愛いくて、羊毛部分はふわふわの手触りで抱き締めるととても気持ちいい。
「福引きを10回やって、3等と特賞を当てるなんて本当に運がいいわねてっ、空はいつまでぬいぐるみを抱き締めてるの」
「だって可愛いんだもん」
母さんはため息をつき苦笑する。
「まぁいいわ。それより、特賞は何を当てたの?」
「ゲーム機だよ。VR型MMORPGに対応したので、何か来月発売されるゲームも着いてた」
「空はやらないの?」
「やらないよ。別に欲しかった訳じゃないからね」
「でも、それって結構高いんじゃないの?せっかく当てたんだからやってみたら」
僕は悩む。
確かにせっかく当てたのに使わないのは勿体ない。
それにゲームもまだ発売されてない物だ。
「ちょっとだけ、やってみるか」
僕は部屋に戻り、説明書を呼んで接続や初期設定などを済ませていく。
それらを終え目を閉じ、ゲームの世界へダイブする。
目を開けるとそこは真っ白な空間で、このゲームのタイトル《Another World》の文字が浮かび上がり消える。すると空中にはパネルと手前には入力するためのキーボードが出現する。
「名前は何にしよう?……………そのままでいいかな」
僕はソラと入力して決定を押すと、パネルが変わり職業を決める欄になる。
僕は表情されている職業と説明を読みながら見ていき、ある職業で手を止める。
「魔物使い、最初から<使役>スキルをしておりステータスは他の職業に比べ低め。モンスターを使役してパーティーメンバーに設定しておけば一緒に闘うことができる職業!
モンスターを使役出来るってことは、可愛いモンスター達を仲間にしてゆっくり過ごすことが出来るってことだ!」
僕はすぐに魔物使いを選択する。
すると今度は僕とほとんど同じアバターが現れる。
髪や目の色、種族を変更出来るようで色々試して見たが、種族や目の色は変えずに髪だけ空色にする。
するとそれで終わりのようでチュートリアルが始まり、終わると僕の体は光に包まれ目を開けると活気溢れる城下町の広場に立っていた。
真後ろには巨大な門があり、門の中を青い光が渦巻いている。
広場の周りには綺麗な石造りの建物が立ち並び、道も石で整備されている。
まるで本物の人間のように街の人達は自然に動き笑い話し、足の感触や腕の感覚、屋台からは美味しそうな匂いが感じられて、ここがゲームの中ということを一瞬忘れかけた。
「凄い」
そのとき、ファンファーレが鳴り響く。
『おめでとうございます!あなたは《Another World》に最初にログインしたプレイヤーです!
これは私達からのささやかな贈り物です』
インベントリにアイテムボックスが2つ送られてきた。
開けてみると入っていたのは、魔物使いの初期装備一式と初期アイテム、もう1つには金色の腕輪。【魔物使いの服】、【魔物使いのズボン】、【魔物使いの靴】、【使い古した鞭】、【使い古した短剣】、【幸運の腕輪】、【HPポーション】が5つだ。
僕はチュートリアルで習った通りに装備欄を開き、貰った物を一括装備する。
『なお、魔物使いを選んだ特典によりモンスターを1体プレゼントします』
僕の目の前に黒いキューブが現れる。
キューブは空中に浮いていて、僕が恐る恐る触れるとキューブは光を放ち始め割れる。
中から緑色に光る球体が出てくると形を変え、若菜色のロングヘアの少女になる。
葉っぱを編み込んで作った服を着て、年齢は14歳くらいかな?
「ララララ~♪」
「可愛い!!」
頭を撫でると、少女は嬉しそうに微笑んだ。