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その日の夜に、コウスケに電話をした。

第一声は決まっていた。


「やっぱりさ、お前のこと嫌いだわ。」

「は?」


素っ頓狂な声に、ついつい笑いが漏れてしまう。


「お前って、やっぱ凄い奴だから、お前なら、お前ならって自分と比べて虚しくなっちゃって。」

「えっ、いきなり何?」

「それでいて、いい奴でさ、頼れよとか言われるとついつい甘えちゃいたくなるんだよね。」


冗談めかした言い方をしているけど、紛れもない真実だ。


「…なんか気持ち悪いな。」

「気持ち悪いって酷いな…」

「それで何?

宿題でも写させて欲しいの?」

「ちげーよ。

てか、お前の奴なんて見ても間違えだらけだろ。」

「なんだよ、さっきまで褒めてたくせに…

まあ間違いねえけど。


じゃあ、『いじめ』の話とか。」


なんだかんだ言って、こいつは鋭い。

自分からその言葉を言わなかったことに安堵しながら、答える。


「そういうこと。

それで…」

「何やればいいの?」


こちらの言葉を遮ってまでの反応に、今度はこっちが素っ頓狂な声をあげた。


「ん?」

「何その反応。

まだ決まってなかったりするの?」

「いや、大体決まってるけど…」

「じゃあ早く言ってよ。

もう眠くってさ。」


欠伸交じりに言われた言葉に、思わず聞き返した。


「もしかしたら、お前に全部押し付けるだけかもしれないんだぞ、別に断っても…」

「良いよ、別に。」

「いやいや、よくないだろ。」

「良いんだよ。

お前はさ、ちょっと根詰めすぎなんだって。

自分で、自分でって。

こっちに相談もないかと思ってたし。


だからさ、いいんだ。」


その言葉に、息が詰まって。

受話器の奥に、息が漏れないように意識した。


「やっぱり、お前のこと嫌いだわ…」

「またそれか。」


しょうがないじゃん、それしか出てこないんだから。

言葉を飲み込んで、呼吸を置いた。


「それで、やってもらいたいことなんだけど…」

「うん。」

「取り敢えず、明日の朝教室にいること。」

「…それだけ?」

「そんで、雰囲気を作って欲しい。」

「雰囲気?」

「そう。

『流石に酷すぎだったよね。』『俺は最初からヤバいと思ってたんだよ。』

『あいつらマジで最悪だよな。』って雰囲気。」

「はあ……そんなん出来なくね?」

「その為の元を、俺が作ってくるから。」

「?」

「頼むよ。頼む。」

「…」

「ダメなんだ。

2回目はないんだ。

もし、それで彼女の被害を悪化させるようなことになってしまったら、もうどうにもできない。」

「あー。。

なんていうかさ、そうなんだけど、そうかもしれないけどさ、

2回目はなくても、やり直しはあるよ。」

「…」

「じゃあ、朝も早いみたいだし寝るわ。

お休み。」

「お休み。」


電話を切って、ベットに沈んだ。

優しい言葉が足元を暖かくした。


「寝よ。」




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