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双頭龍の名を持つ妹  作者: あかみみ
三章、勇者と魔族
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勇者召喚


 真っ暗な中、いきなり光が差し込み視界が広がる。


「おぉ……お主が勇者か」


 王様みたいに偉そうなのが興奮した様子で立ち上がる。


 目の前の光景に頭の中で、ここは玉座の間かな?という疑問が浮かぶ。

 正式な名前は知らないけど、そうとしか思えない場所に私はいた。


 それから色々と聞かれたけど、何故ここにいるのかとか、いろいろな事で頭がボーっとしていて、まるで何回も見た映画をなんとなく再生したまま過ごすように周囲の流れを眺めていた。


 そんな私の名は……薬袋九(みないいちじく)……あれ、長谷川佑馬……山口由香?

 あれ……あれ?

 そもそも……私は電車に乗っていて……脱線で……出血多量で死んだはず………

 ………あれ?脱線?そんな記憶私には無い……でも……強い衝撃があってそれから……気が付いたらここにいた。


 まるでライトノベルの異世界転移のように………私ライトノベル読んだこと無いはず。

 そういう感じの、ファミコンのRPGで復活の呪文入れるのが大変だったくらいしか知らないし。

 ……って、この視界にあるのRPGに良くある四角いウィンドウじゃないの?

 ……あ、私の名前……薬袋九で合って………性別男?

 私は女のはず……でも……私が男の体だったのも知っている………


「貴様!いくら勇者であろうと無礼にも程がある!!!

 何故王の言葉に何も答えない!!!」


 私が混乱していると金髪の騎士風の男が剣を抜き斬り掛かってきた。

 けれど、それより先に何故かトゥルル!と昔やったRPGの攻撃される時の効果音が聞こえてきて警戒できた。

 音がしてから動き出した騎士、来ると分かっていればそんな大振りな攻撃を流すのは簡単でそのまま背負い投げを決めた。


 ダシュ!という音と共に視界のウィンドウに『薬袋九のカウンター、ウィリアムに1ダメージを与えた。』という文字が表示された。


 ……というか今まで違和感無くて気づかなかったけどさっきからRPGで物凄く聞き覚えのある城のBGMがながれてるんだけど大丈夫?パクリで訴えられないこれ?

 ……いやいや、そうじゃなくて何なのこの状況???


「流石は勇者、召喚したてでも騎士の一人くらいどうということはないか」


 王様が口を開くとウィンドウに、『王様「流石は勇者……」』と言葉に続いてメッセージが入る。

 BGMも合間って完全にRPGの世界に来てしまったようだ。

 ここまで露骨なゲーム転生なんて実在したんですね。


「まずは騎士の非礼と突然の呼び出しを詫びよう。

 そなたが混乱しているのは重々承知しておるが、勇者であるそなたに頼みがある。

 魔王の驚異に去らされたこの世界を救ってもらいたい!」


 ……と、始まった固すぎて長すぎる事この上無い説明を纏めると。

 4年前、帝国という大国が他国に気付かれる事無く正体不明の魔術を使用した魔王によって乗っ取られていた。

 気がついた時には魔族による統治がある程度済んでしまっていてヒューマン、つまり人間が奴隷のような扱いを受けているらしい。


 私を召喚した法国はその正体不明な力を驚異に感じ、過去から受け継がれてきた勇者召喚の秘術を使おうとした。

 しかし溜めていた魔力が足りず大至急集めたらしい。

 その集め方というのは教えてもらってないけど、だいたい予想はできる。

 どうせ生け贄とか使ったんでしょ。

 けれどそれは国として必要なのも分かる。

 すぐ側にある強大な力が全く動きを見せないのは強い不安を抱かせるのには十分で、国として対策を作らなければならないのは当然だと思うから。

 だって隣の国に核爆弾が降って、自分の国は無傷で平気だったから良かったねで終わらせられる訳がない。


 それで、私の返事は……


「喜んで協力させて頂きます。

 共に魔王を打ち倒しましょう」


 周囲は歓声を上げた。


 けど、私には選択肢なんて無い。

 呼ばれた理由は分かった。

 ここで断って私の知らない魔術の力で洗脳なんてされたり、仮に私が勇者と呼ばれるだけの魔力を持ってたとして勇者の魔力だけ吸われて捨てられるなんてされたら洒落にならない。

 運良く私の実力を一瞬でも見せる事もできたんだし、全てが済むか、不都合が起きたら吸おうとしてきたりするかもしれないけど、勇者なんて戦力を減らす真似はしようとしてこないでしょ……たぶん。




 そんな不安とは裏腹に私は平和に二週間を過ごした。

 平和と言っても訓練をしてたけど。

 剣の練習、魔法の練習等の間の自由時間で自分がどんな状況なのか考えた。


 そして出した結論は、私はあの脱線で死んだ人間の記憶を全て持っている。

 これは私でなく他の人の記憶にあったアニメのお陰で出てきた発想で、死んだ人間の魂が纏めて融合してしまったのではないかと考えた。


 私達と俺達と僕達で融合したんです。


 そこで何故、私は生前の薬袋九の姿で、主な人格も薬袋九なのかも考えた。

 もしかしたらだけど、私は魔法的素質が他の魂より優れていたから私になったのだと思う。

 勇者と呼ばれるだけの力が必要なのだからより強い魔力の器が必要なのだと思った。

 見た目が女なのに男なのは融合素材が女より男の方がずっと多かったんじゃないですかね?

 私の体が魔力に適しているとして、魂は男性の方が多いのでそうなった。

 男性より女性の方をそういった目で見ている自分にショックでしたくらいですからね。

 それに、時間帯が完全に通勤ラッシュでしたのでそういう結論を出すのにあまり時間は掛かりませんでした。


 私の精神やらの事はこんな感じで、次は異世界に来てからのゲームのような状況に関して。

 いろいろあるけど真っ先に言うべきは、私は寝ようとすると時間が消し飛ぶ。

 テレレッレレッテレーって効果音が鳴ったと思ったら疲れが完全に取れて朝になっている。

 これが一番衝撃的だった。

 布団に入って眠ろうと思いながら目を閉じると効果音が鳴り強制的に朝を迎えて疲労感が完全に取れて魔力も完全回復し二度寝が絶対にできないくらい目が覚めるんだもの。

 そして寝たという感覚が無い。

 目を閉じて開けたらそうなってる。

 正直怖くなったけど慣れた。

 沢山の記憶を持つ私は、薬袋九を含めたRPG経験の少ない記憶は変だと訴えかけ、RPGやラノベ大好きだった記憶はそんな世界もあるのは普通なのでは?と楽観視していて矛盾している。

 けれど最近は寝るのと同じでどれもこれも慣れた。

 むしろその矛盾も私なのだと受け入れつつある。


 勇者の事も調べてみたのだけど、法国の国宝である勇者語日記……英語や日本語、中国語等その時代に召喚された勇者によって様々な内容が記されている。

 けれどどの記録も魂が融合するといった事は一切書かれておらず、この世界をゲームとして楽しんでいた。

 楽しんでいたのだ。

 私のように魔術の在り方に疑問を持ち改良をしようなんて考えもしていない様子だった。

 そうそう、私もこの勇者日記を書くことが義務付けられている。


 だから記そうと思う。

 前世の私は死んだ。

 確かに、未練は沢山ある。

 けれど、私の中の皆で考えた結論が今を生きる事。

 今を生き、もしもの時は次の勇者の為に書き残す事を選んだ。




 その後一年、私は国の外に一度も出ることなく訓練をしていたら法国で最強の存在となった。

 私の中にある膨大な知識を元に魔術の改良を沢山していたらそうなった。

 エンジニアと物理学教授とラノベの知識は偉大だった。

 私はこの世界の言語を読めないし書けないが、本を開くとウィンドウに本の内容がメッセージとして表示されて凄く便利だった。


 それで、私は魔術を沢山発明してきた訳だが……

 魔王退治なんて聞こえの良い感じに言ってもけっきょくは殺戮で殺し合いだ。

 魔王退治が事実だとしても、その後私の作った魔術が国に悪用されヒューマン同士の大惨事を迎えるのは目に見えている。

 何よりそれは地球人類の歴史が物語っている。

 今の魔術の力があったところでこの世界の戦争は、人がただの数字で消耗品になるような事はまず無いと思う。

 だからこそ、そんな事になってはいけない。


 それよりも他国へ行き、魔王に落とされたという帝国や、他国から見た法国を調べたりしないと。


 いろいろ提案しつつ誘導しそして今日!

 今日ようやく私は3人の精鋭と共に国を出る事に成功した。

 目的は調査であり可能なら帝国内に潜入すること。


 戦士リグレット

 魔術師モニカ

 冒険者イリス


 リグレットは一応騎士であるが元々は冒険者であり、それなりの功績で騎士になれたが他の騎士と違い気軽に話し合える存在でそれなりに信用できる。


 モニカは14歳で幼いながらも優れた魔術師で、私と共に魔術を作った運命共同体で最も信用できる存在だ。

 お互いが弱味を持ちどちらかが捕まり表沙汰になれば極刑は免れないだろう事は明白、最悪殺されること無く監禁され死ぬまで国の資源として生かされるだろうから裏切れない。

 それでもお互いに好奇心から逃れられず、何よりとても反りが合って悪乗りしたのが原因。

 法国という宗教色が強い国で研究命のモニカは幼いが愛国心が薄いのも私と気が合った。

 反省も後悔もしてない。


 イリスは……正直分からないけど、リグレットの元パーティメンバーで信頼できる存在だと言われた。

 まあ、毎日祈りを欠かさない狂信者よりは信頼できる。


『三人と共に冒険は始まる!』


 と町を出た瞬間メッセージが表示され、軽やかなBGMと共に馬車は進んでいく。

 その広大な風景に心踊る場面ではあるものの、私の中に北海道、しかも電車が1日に1本のド田舎出身で確かに広いなとは思うけど珍しくはない光景だったり……うん、いやでもラノベ感があってそれでも興奮するよ。


 そんな風にガタガタと揺られ三時間。

 辺りは代わらず草原に馬車道のみだったが急にBGMが変化する。


「な、何事!?」


「どうしました?」


 ドン、ドドドンと重苦しいBGMが鳴り始め、私は飛び起きて警戒する!


「ウリャーッ!!!」


 ゴウッ!と強い突風が吹き抜けると馬車の屋根が吹き飛ぶと同時に『真空派攻撃、クリティカル!!!馬車に230ダメージ!馬車は半壊した』というメッセージが流れる。


 ズドオォオォォォン……と馬車の前に何かが落ち、土煙を上げる。


 風が発生し煙が吹き飛び、大きなクレーターぎできていて、その中心に翼と尻尾を持つ少女が立っていた。

 どうやら、その少女の持つ赤い剣の一振りで土煙を消し飛ぶ程の強風が吹き荒れたようだ。

 そんな少女と目が合うと……


『魔王軍四天王、双頭龍サルタナ・レッドサーペンタインが現れた!』

「黒髪のヒューマン!お前が異世界から来た勇者だな!

 我が名はサルタナ・レッドサーペンタイン!

 いざ尋常に勝負!!!」


 戦闘を告げるかのように先程以上の壮大なBGMが流れ、それに対し剣を大きく掲げてピョンピョンと跳ねる愛くるしい四天王。

 その愛くるしさと裏腹にステータスを覗かなくても分かる程巨大な魔力……

 え?これなんて無理ゲー?

 負けイベントってやつ?


今は覇王セリスの後日談の方を書き直ししているのでこっちは全然書いてません。

元々覇王の方がゴール見えたから清書する前の息抜きみたいに始めたい、モン娘良いよね(今思い返すと謎)ってなった事が切っ掛けで、6面ダイス転がして書き始めたのがこれですからね。

気力が保てれば来年の8月までには覇王完結させたいですね。

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