全ては今この時のために 3話
なんで僕は泣いていたのだろう。
どこかが痛いわけではない、誰かに何かされたわけでもない。
覚えているのはなぜか悲しいというだけ。
懐かしいような、まるで自分が体験したかのような不思議な感じだったが、とりあえず気にせず僕は学校に行く準備をした。
「あれ〜?今日月咲ちゃんと一緒じゃないの〜?」
一人で登校していると後ろから透香にいつもどうりどこか抜けた感じで話しかけられた。
「うん、なんか昨日の雨で風邪ひいちゃったみたいでさ」
「月咲ちゃんが風邪だなんて珍しいね」
透香の言う通り、基本体調を崩さず常に健康な月咲が風邪を引くなんて滅多になく、僕も話を聞いた時は驚いた。
「そういえば透也は?」
「透也?いつもと変わらずまだ寝てたから置いてきたよ?」
やはりこれがあいつの普段の朝なんだな。
「やっぱ昨日は奇跡だったのか…」
「うん、毎日あれだと私も助かるんだけどね〜。まぁそんな事あるわけないけど」
透也には悪いが流石に同感である。
そんな感じて学校に着いてからも月咲がいない以外は普段と変わらない1日を過ごした。
家に帰ってから僕はもう一度昨日見た夢の事を思い出そうとした。
しかしいくら思い出そうとしても何も思い出せず、ただただ悲しかった、という事しか出てこなかった。
しかし、どんなに気にしないようにしても、何故か頭の中でもやもやとしているのが不思議である。
「だめだ、いくら考えてもきりがないや。」
そう思った僕は今日は諦めて寝ることにした。
そして翌日、僕は起きるとまた泣いていた。