前編
「いやよぉぉ〜〜 ‼︎‼︎ 」
耳を塞ぎたくなる様な絶叫。
「ま、待って ⁉︎ 落ち着こう、 落ち着こうよ ⁉︎ 」
ナイフを手にした女はプルプル震えている。
「あた、あたしの男なんだからぁぁあ〜〜 ‼︎‼︎ 」
はい、絶賛あたし巻き込まれ中です。
学校帰り、美香と二人でオケろうかと盛り上がって話してたら、突如現れた女。
美香ちゃん ? なんかあたしの後ろに隠れてるけど
プルプル震える様は可愛いとか同性ながら思うけど ‼︎
ヤバい目をした女はふらふらした足取りながらも
あたしにターゲットロックオン ‼︎‼︎
「み、美香 ? 」
「違うのっ ‼︎‼︎ 」
いや……ぐいぐい押さないで ?
「毅は渡さないんだからぁぁ‼︎‼︎ 」
ナイフの切っ先を光らせて突進してくる女。
角地に追い詰められたあたしは鞄を防御にするけど
いや、これ柔いでしょ……。
「いやああぁ、私悪くないもーーんっ ‼︎‼︎ 」
脱兎の如く逃げる美香。
え ? ちょっ……おいーーーーーーっ ⁉︎‼︎‼︎‼︎
眼前に振りかぶられるナイフの軌跡をスローモーションで目で追い……ぎりぎりの所で避け、踵の踏んだローファーに滑り、あたしの勢い込んだ身体が宙に浮き……
暗転した。
我ながら、頭打って昏倒とか笑えない。
ナイフ女は捕まったのかな。
取り敢えず、打った頭以外に痛い所はないから大丈夫そうだな。
まぁ美香は後でボコる。
泣いて謝ってもマジ許さん。
いや、本当死んだと思ったんだからね ‼︎‼︎
てか、あたしの身体動かなくないっ ⁉︎
意識はっきりしてんだけどなぁーー。
「いやいや。あんた死んでるからね ? 」
突然、あたしの意識に割り込む声。
男の様な女の様なよくわからん声。
「ちょっ……失礼な ‼︎ 聞こえてるんだからねっ ‼︎
私は女よ。でもそんじょそこらの女じゃなくてよ。
何てったって女神 ‼︎‼︎ この世界を統べるほど偉い良い女よっ ‼︎‼︎ 」
自称、女神とやらがバカさ丸出しで喋ってるわ。
「ちょっ……そこ、遠い目しないのっ ‼︎‼︎ 私、こー見えてもデリケートなんだから泣いちゃうわよ ?? 」
うるうる目してきやがりました。
なんか……何だろ……誰かに似てんのよね。
誰だろ ? てかイラつく顔してんなぁーーーー。
「ひっ ‼︎‼︎ 」
ビビる女神。
「あぁボコりたい。」
「何でぇ ⁉︎ 」
プルプルしたウサギの様な怯えっぷりに
ちょっこっと溜飲下げてやるか。
「で ? 」
「ん ? 」
可愛く小首を傾げる女神。
「いたぁ〜いっ ‼︎ 暴力反対なんだからぁ〜〜 ‼︎ 」
こめかみ、ぐりぐりしてやった。
てか、あたし身体 ? 動いてんのか ??
「もぅ〜〜私、女神でお姉ちゃんなのに……。」
ぐすん。とか言ってるよ。この女。
「ん 。お姉ちゃん ? 誰の ? 」
「身体はないんだけど、ここの空間は思いを具現化できちゃう、ありがた〜い私の空間よ ? 」
ドヤ顔。
「あんたを死に追いやった、お茶目な美香ちゃんのお姉ちゃんですっ ‼︎ 」
更にドヤ顔。
「…………。」
そうか、そうか。
どうやらこのバカ女神は死にたいらしい。
ボキボキ指を鳴らすと
「ま…待って ! ち、違うのよ ? 本当は美香ちゃんが通り魔にあってここに戻ってくる筈だったのよ ? 」
「でも、美香ちゃん逃げちゃうし。あんたは勝手に転んで死んじゃうし……。」
ピシッーー
おや、空間が鳴りましたねぇ。
ピシッパシッーー
そりゃ、あたしだって自滅的なバカな事したなて思わなくもないよ ?
でも、こーなったのは……一体、
「誰のせいかなぁ〜〜 ? 」
ピシッパシィーーッ
ゴロゴロ……
あ……何か雷ぼい ?
出る ? 出しちゃう ?
「きゃああああぁぁ〜〜怖いっ怨霊だ ‼︎ 怨霊 ‼︎
助けて!神様 ‼︎ てか私、女神 だぁぁぁ〜 でも、無理ぃ〜〜 ‼︎‼︎ 」
ピカッ ‼︎‼︎
くらえっ !閃光ーーっ
ドガッシャーーーーンッ ‼︎‼︎‼︎
ええ。何発かお見舞いしてやりましたよ ?
え ? バカ女神どこかって ?
その隅に涙と鼻水で、ぐしゃぐしゃの顔して
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめ ……」
て繰り返し言ってるじゃんか。
プルプルする癖に態度デカくて生意気。
顔は女神らしく、飛び切りの美少女。
うん。美香そっくり。