豚は「そりゃ悪魔だ」と鳴いた
目が二つ、鼻が一つ、口が一つ、耳が二つある豚を想像してください。
これで何を思い浮かべるだろうか?
貴方にとってはそれが豚だ。
たとえそれが、二本の足で歩き、言葉を解し、それどころか言葉を繰ることができようとも。
それは間違い無く、貴方にとっての豚だ。
豚とは家畜だ。
しかし、人は家畜ではない。
家畜である人は、人ではなく、人ではない何かなのだ。
自分と似た姿であろうと豚は豚である。
どれだけ情が湧こうが豚である限り、豚は屠殺される運命である。
それがどれだけの狂気か。
人を豚と良い張る社会の恐ろしさ、おぞましさ。
豚である人は鳴く。
豚であって、人でなし。
だが、人を豚として扱う人もまた人でなし。
ではなんなのだろうか?
「決まってるだろう。そりゃ人の姿をした悪魔だ」
豚はそう鳴いた。
今はいない人を想って。