表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/6

第3話 〈大地人〉からの依頼 後編

大知は岩陰から魔物の様子を窺う……

紅い蕾の周囲にいた人食い草達が、ジワリジワリと根を這わせながら近づいてきていた。


「うへぁ……、ちょっとずつだけど近づいてきてるぞ」

「……あまり時間もありませんし、先ほどの打ち合わせで行くしかないですね 」

「でも好都合だ……目的からは大分離れてくれているし、あの距離ならいける」


周囲の魔物が離れたことにより、蕾の護衛は無くなっている。

後は前方にいる人食い草を抜けることができれば可能性は出てくるだろう……


「じゃあ姐さん、頼んだ」

「わかってますよ、準備ができ次第合図を送ります。その前に―――リアクティブヒール! 」


1回分の反応起動回復をかけ、2人は岩陰から出てゆく。

大知は人食い草に急接近し、技を仕掛ける。


「強化状態でも不意を突けば! サドンインパクト!! 」


相手の死角から現れた大知は、脚を使って鋭い一撃を加える。

不意の衝撃に驚いたのか、中央にいた人食い草は両腕の蔓を振り回し味方を攻撃してしまう。

両サイドの魔物は突然の味方からの攻撃に戸惑い、行動が遅れる。

その隙を逃がさず、大知は追撃を行う。


「隙ありだ! アサシ……ネイト!! 」


混乱している魔物の隙を針で縫うかのように、背中の斬馬刀を抜き放ち緻密な必殺の一撃を叩き込む。

急所に当たったらしく、魔物のライフゲージを一瞬で零にした。

いくら強化された身体でも、斬馬刀で急所への一撃には耐えることができなかったのだろう。

しかし、両サイドにいた魔物は態勢を持ち直し大知へ蔓を伸ばす。

振るわれた蔓は、獲物を狙う蛇のように大知に迫りかかる……

双方から2本ずつ、初撃は完全に避けることができたがもう1体は着地した瞬間を狙っていた。


「しまっ!? 」


左足を捕らえられ態勢を崩してしまう、追撃の鞭が襲い掛かり大知の胴体に直撃する。


「グオォッ……!? 」


ライフゲージが大きく降り始める……予想以上の衝撃と痛みに大知は気を失いそうになるが、

反応起動回復魔法≪リアクティブヒール≫が発動し傷を癒す。

完全回復まではいかないが意識を繋げることができた。

しかし両腕を捕縛され、まともに動くことができない。

 

「――――プハッ! 危ねぇ!? でもこの状況じゃ……クソッ! 」


腕に力を込め、束縛から逃れようとするが一人の力では無理だろう。

諦めかけたとき、アヤゾノが合図を出す。


「大知さん! 準備ができました!! 」

「この2体に放ってくれ! ……ゥォオオッ!! 」


もう一度手足に力を込める。

先ほどよりも強い力が発揮し、魔物達は宙に引っ張られ1箇所に固まる。


「いきますよっ! ジャッジメントレイ!!」


全身から発する聖なる光を収束させ、魔物達に光線を放つ

裁きの輝きは魔物達に深い傷を負わせることができた。

瀕死の重傷を負った魔物達は大知の束縛を解いてしまう……


「サンクス、姐さん! 道は開けたっ!! 」


解放された大知は、紅い蕾まで移動し特技≪アクセルファング≫を放つ。

駆け抜けざまに斬馬刀で素早く敵を切り裂き、勢いのまま距離をとったように見えた……

しかし、その先に大知の姿はなかった。


「これで止めだ、アサシネイトォッ!! 」


瞬時に相手の上空に移動していた大知は、渾身の一撃で蕾を真っ二つに切り裂く。

切り口からは真紅の液体が漏れ出る。次第にその勢いは増してゆき、最後は破裂しまき散らすように消滅した。蕾が消滅すると、強化状態も解かれてゆくのがわかる。

力を失った残りの魔物達はそのフロアから姿を消してゆき、残ったのは真紅の華の魔物と瀕死状態の2体だけであった。


「なんとか……なったな? あとは」

「ええ、あの紅い魔物だけですね」


二人が見てみると、魔物は苦しそうな仕草をしていた。

何かを吐き出そうとしているようだ。


「様子がおかしいな、――――まさか攻撃か!? 」

「いえ、あの様子は何か吐き出そうと……? 」


腹部付近にあったふくらみが徐々に上に行き、口が膨らみ始める。


「姐さん! 少し離れるぞ!」


大知の掛け声とともに後ろに下がると、魔物も何かを吐き出してきた。

緑色の何かに包まれていたものが地面に落ちる。

緑色の液体状のモノは徐々に消えていったその場には、シンがいた。


「う……や、やっと出られた……」


ライフが半分まで減っていたが、そのほかに状態異常は見られなかった。

しかし、何故かシンはすぐに動けなかった。


「あ、あれ? 状態異常は無いはずなのに……立てない 」


うつぶせの状態で話していた。

立とうとするが身体にうまく力が入らないようで、また倒れこんでしまう。

そこに紅い魔物の蔓が伸びてくる。再度捕食しようとしているようだ。


「な、何をしているんだ、シン! 早く立て! 」

「わ、わかってるけど、力が上手く入ら――――」


蔓はシンの身体に巻き付く、しかし、持ち上げられた瞬間


「ホーリーライト!!」


アヤゾノが魔法を放つ。剣先から放たれた光は蔓を貫いた。


「大知さん、今です!」

「お、おう!」


大知は紅い魔物に接近に武器で攻撃を行い始めた。

少しずつだが魔物のHPは減っている。


「時間稼ぐからシンを回復……してくれ! 」


相手の巨大な身体を足場にし、蔓のムチを器用に避ける。

このままうまくいけば、大知に攻撃が集中するだろう。


「そらそらぁっ! そんな攻撃じゃいつまでも当たらないぞ!? 」


言葉が通じるかわからないが、回避しながら挑発してみる。

突如、蔓の数が増え四方八方から攻撃してくるようになった。


「おおぉぉっ!? 言葉わかるのかよっ!? 」

「だ、大知さん! そのままお願いします!」


戸惑いながらもアヤゾノはシンのもとへ移動する。

バックパックから回復薬を取りだし、飲ませた。


「ぐぇ、(にが)ッ……お? 気分が良くなった? 」


ライフゲージが少し回復し、先ほどまで感じていた疲労感も軽くなった。


「大丈夫ですか? あの様子では大知さんも長くは持ちません 」


大知の方を見ると、必死に蔓を避ける姿が見えた。

避けているように見えるが、少しずつライフゲージは減っていた。


「もう大丈夫っ! アイツに強力な一撃を喰らわせてやるさ!」


シンは魔物に向かって走り出した、それに反応するように蔓のムチが襲い掛かってくる。

後方ではアヤゾノも魔法で援護してくれる。


「まずは大知さんへ、ヒール! 」


半分まで減りかかっていたライフも8割くらいまで回復できた。


「ありがたいけど、そろそろヤバいっ!! 」


魔物の攻撃も過激になってきており、ライフの減り方が早くなってきており、

攻撃を行わず回避に専念していた。


「アドヒュージョンビー―――からの! 」


蜂のように鋭い動きで魔獣の懐、先ほど飲み込まれたとき膨らんでいた部分へ潜りこんでいた。


「タイガーエコーフィストォッ!! 」


腹部に掌底が決まる。

特殊な振動を腹部に流し込むとライフゲージが大きく減り、魔物の動きが止まった。


「っ! サドンインパクト! 」


大知もこの隙を逃がさず特技を発動し、攻撃を与えつつ高く飛び上がる。

紅い魔物は苦しそうに身体を揺らす。


「お、おおお……ゆ、揺れるっ 」


近くにいたシンはその揺れに耐えることができず膝をついてしまう。

魔物は吐き出そうとしていた。


「この距離は……ダメなやつだ!?」


防御の構えをとる、しかし魔物は見当違いの場所に何かを吐き出し、倒れこむ。

その色は緑ではなく、魔物の花弁と同じ紅色でスペード型のモノであった。

吐き出したモノは体内と緑色の管で繋がっていた。

ドクンッドクンッと鼓動しているようだ。


「だ、大知! それだ! その吐き出したヤツを斬れ!! 」


シンには見覚えがあった、魔物の体内で戦った相手であることを。

傷は治りかけのようで、ヒビの後が蚯蚓腫れのように浮き上がっていた。


「ちょ、いきなりか! 距離がありすぎて届かないぞ!? 」


真上に飛び上がっていた大知と、スペード型の魔物には約5m……

攻撃を当てるには少し遠い位置にいた。


(なにか、足場か蹴られる壁見たいのがあれば……)


周囲には木の枝があるが、細すぎて蹴っても意味はないだろう。

もう一度考えてみる……


(……魔法弾を蹴る? )


ふと思い出したのはアヤゾノの攻撃魔法の事だ。

今、攻撃を成功させるにはその案しか浮かばなかった。


「姐さん! 俺に攻撃魔法を撃ってくれ! 」

「え? いきなりそんな……」

「撃て! いいから!! 」


大知の気迫に圧倒され、武器を構え、狙いをつける。


「どうなっても、知りませんよ! ホーリー……ライトッ!!」


剣先から光が放たれる。狙いは正確で大知の下に伸びていく。


「よし、後はタイミングを……合わせてッ! 」


上手く光を捉えることができたようだ。

さらにアヤゾノも威力を抑えることができたらしく、貫通せずに軽い爆発を起こす。

大知は当たった時の衝撃で体勢を崩さずに対象の魔物に向かって移動できた。


「でも痛かった! けどこれで当てれる! オオオオォォォォッ!! 」


武器を抜き、スペード型の魔物に向かって振り下ろす。

斬馬刀は魔物を真っ二つに切り裂いた。

2、3度痙攣を起こすと沈黙し、消滅していった。

魔物のいた場所には、大きさ、形がラグビーボールに近い形をした種が転がっていた。


「あ、紅い種だ……」

「あれが親子の求めていたアイテム……」


アヤゾノも見たことのないアイテムらしく、説明を見ると、ある病気に効く特効薬の材料と書かれていた。内部には小さな種が詰まっているため、見た目の割に重い。


「意外に重いぞ、この種。姐さん、マジックバック開いて」

「あぁ、はいはい。どうぞ」


いくら冒険者になって、ステータス補正があっても重いモノは重い。また一つ学んだ気がしたシンであった。

2人が魔物からのドロップアイテムを整理してる中、大知は武器を構えたまま動いてなかった。


「なぁ、大知? どったの? 」


声をかけるが答えは返ってこない。各ステータス、ライフの残りにも異常は無かった。

前に回ってもう一度聞く。


「お~い、大知? ―――ってなんだその顔は」


机の角に足の小指をぶつけた時のような顔をしていた。

何かブツブツと言っているがうまく聞き取れない。

そこにアヤゾノも近づき、耳を澄ます。


「えっと、着地した衝撃で足がしびれた、舌も勢いよく噛んでしまってうまく話せない……だそうです。 」


その後大知が回復するまで待ち、森を抜け出た時にはすっかり日が暮れていた。



~ヤブシの村 村長宅~


「おぉ、冒険者様方、こんな夜遅くまでお疲れ様ですじゃ」

「夜分遅くにすみません。とりあえず、依頼の結果を報告しますね」


森内部の状況、討伐した魔物の数、最奥にいた真紅の魔物等を説明した。

真紅の魔物に関してはかなり前から存在していたらしい。

〈大災害〉に巻き込まれる前からの存在、しかし、彼女達は全く見たことも聞いたことも無い相手であり、

村長から聞いたことは信じがたい話であった。しかし、嘘も言っているようではないので森に行く際は冒険者へ依頼することを勧め、大知たちのもとへ向かった。


その一方、シンと大知が親子の方へ報告に行っていた。



~大地人親子の家~



「これが、依頼されていた[真紅の種]です」


シンはマジックバックから種を取りだし、机の上に置く。


「これが、あの病気に効く……ちょっと失礼します! 」


男は種を持ち、部屋に入ってしまった。中からは様々な音が聞こえてきた。

ハンマー、のこぎり等の金属音が聞こえたと思ったら、何か生物を斬るような音まで……

しばらくすると男は出てきて、あるアイテムを見せる。

粉薬のようだが、紅い粉末の薬であった。

名前は[万能薬・極]と書かれていた。


「……ありがとう。これで妻を救える、お礼にこの薬を受け取ってくれ」

泣きながら礼を言った後、[万能薬・極]を渡してきた。


(この人薬剤師だっけか?)

(いやいやいや……、あの音でこんな薬ができるとは)


コソコソと話していると


「どうしたんだい? どこか調子が悪いのかな?

 私はこう見えて薬剤師でね、妻が宿を経営していたんだが厄介な病気になってしまってね……

 お礼に野菜のほかにも、その宿に泊めてあげよう」


最初に農家と言っていたが、奥さんは宿をやりつつ農業もやっているという事らしい。

多くの食材アイテムを得ることができたシン達は合流した後、宿で身体を休めた。


前編、中編と続いていたものがやっと終わりです。初心者が下手にエネミーを強化とかするもんじゃないと学びました。実際、何度かゲームオーバーになってます。何回強化状態を解除する作業を行ったっけ……あまり覚えてないです。

次回の話の予定は一応考えています。戦闘は無しのお話になるかと……

不定期更新ですが、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ