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第3話 〈大地人〉からの依頼 中編

「ギョボボボボボボっ! 」


真紅の魔物は周囲の人食い草へ指示を出すように叫ぶ。

すると、一斉に大知とアヤゾノに向かって蔓を放つ……


「ちょちょちょちょっ!? 危なっ!」

「落ち着いてください! よく見れば避けれ……イタッ!? 」


必死に避けているが、2人のライフは少しずつ減っていた。

このままでは全滅してしまうだろう。


「姐さん、このままじゃ俺達も……っ! このっ! アクセルファング!」

「な、何か手はあるはずです! リアクティブ……ヒール! 」


味方への回復と攻撃を繰り返しながらできる限り周囲を見てみるが、何も見つからない。


「ギシャァァァァァッ!! 」


細かな隙をつくようにアヤゾノへ蔓が襲い掛かる。


「しまっ…………!」


当たるまでの時間が長く感じる、その時、彼女は見た。

人食い草の中に1体だけ違った個体がいることを。


(あの個体……1体だけ大人しい? 背部の紅い蕾みたいなのが点滅、まさか……!)


答えが導き出せそうになった時、横腹に相手の蔓の鞭が直撃した。

ライフゲージが大きく減りだす、普段ならば感じることのない鈍い痛み……衝撃で後ろに吹っ飛んだ。

想像以上の痛みで受け身をとることができず、地面に叩きつけられてしまった。


「カハッ! ゴホッゴホッ…………! 」


腹部を抑えながら咳き込む、口からは血が出てくる……

死の恐怖が彼女に襲い掛かる……身体は硬直し、声が出ない。

そのような事はお構いなしに、魔物は攻撃を行う。


「シャァァァァァァッ!! 」

「キャッ…………!」


再度アヤゾノへ襲い掛かる……がその攻撃は彼女へ届かなかった。


「姐さんは……そう簡単に死なせねえよ! 」


大知は大ぶりな刀を盾にしてアヤゾノを庇う。

蔓を切り払い、彼女を脇に抱え後方の岩陰まで後退した。


「大丈夫か、姐さん」

「え、ええ。助かりました」


距離を置いたため相手の攻撃は届かないが、あまり時間もない。


「シンの事だが……、あれは即死攻撃じゃないみたいだな」

「ですが、HPも徐々にですが減っています。

 もたもたしてると手遅れになってしまいますよ」


互いに意見を出し合い、突破口を探してみる。

すると、アヤゾノはある事を思い出す。


「思い出しました……!大知さん、あの魔物……見えますか? 」

「へ? どれだ?」


彼女が指差すその先には、群れの中に特殊個体の人食い草がいた。


「あ、あいつの事か? なんか蕾みたいのが点滅してる……まさか!? 」

「ええ、おそらくあの個体が周囲の魔物を強化しているのだと思います。

 運が良いことに、あの集団は紅い魔物から離れていますので、その周囲の魔物を何とかできれば……」


蕾の魔物の周囲には3体の人食い草が囲っている。

その集団を撃破のため2人は大雑把な作戦を立てた。


1.大知が敵の攻撃を引き受け、アヤゾノは詠唱に集中する。

2.アヤゾノの魔法攻撃≪ジャッジメントレイ≫で周囲の魔物を攻撃。

3.敵の怯んでいる間、大知が蕾に攻撃を行う。


このような手順で行くことに決まった。


「……じゃあ行きますか」

「待ってください、……リアクティブヒール!

……これで1撃でやられてしまうことはないはずです」

「ありがと、姐さん。

じゃあ……行くぜ!! 」


大知は岩陰から飛び出し、目標に向かって走り出した。

それと同時に、アヤゾノは詠唱を始める。

大知には無数の蔓が襲い掛かってくる。


「いきなり大歓迎ってか! オラァッ!!」


大ぶりの刀を振り回し攻撃を回避するが、次々と再生し攻撃してくる。


「……大知さん、なんとか持ち堪えてください! 準備ができ次第、合図を送ります! 」

「了解! っと、危なッ! 」


その一方、魔物の腹の中では……



~魔物の内部~



「どわあああああぁぁぁぁっ!? 」


シンは魔物から食べられ、内部を落下している。

完全に口の中に入って瞬間、身体が小さくなり飲み込まれたのだ。

食道を抜け、胃の底が見えてきた。


「な、何か掴まるものはないか? 」


落ちながら辺りを見回す、胃の壁には様々な無機物の物や魔物の骨が生えていた。

相当な偏食家だったのだろう。


「あった! あれに掴まれば……!」


棒状の物に手を伸ばすが距離があり、届かない。

何かを蹴ることができれば届くかもしれない……しかし、近くの壁には何もなくシンはそのまま落下した。


「な、無い! うわあああぁぁぁっ!? 」


彼は胃の底にぶつかる……がダメージは無いようだ。

軽くバウンドし、何とか着陸した


「い、痛くはない……けど、あまり良い感じはしないな。ゲームじゃこんなのなかったのに…………」


もっと窮屈な感じを想像していたが、そんなことはなかった。

シンから見るとドームのように広く、生々しい壁には岩や木、魔物の骨が生えている。

見方によっては1つのダンジョンにも見える。

足元にダメージ効果の床は無いが、徐々にHPが減っていた。どうやらその場にいるだけで減るようだ。


「……HPも減ってるし、行動しないと」


その場から動こうとすると、目の前に1本の触手が出てきた。

その先端がこちらを向き開くと、目玉があった。

シンを観察し終わると、襲い掛かってきた!


「おまッ! 敵かよ!? 」


丸太のように太い塊がしなり、シンに襲い掛かるが難なく回避できた。

動きは遅いので冷静に対処すれば大丈夫だろう。


「そこだ! ターニングスワロー! 」


鋭い一撃が触手にめり込む、そこからは緑色の液体が溢れてきた。

力なくうな垂れると、溶けるように消えていった。


「うぇ……気持ち悪い感触だな…………とにかく注意して動かないと」


辺りを見回すが特に何もない、目の前に通路のようなモノがあるだけであった。

メニューを開いてみるがマップは当然無いが、場所の名前だけは書かれていた。

〈魔物内部 胃の底〉と表示されている。


「…………底かぁ。上に行くっていうよりも目の前にある通路の先に行くしかないな」


意を決して進み始める、HPの減りは遅いが長居はできないのだ

しばらく通路を進むと再度広い空間に出た。

その中心には紅いスペードのような形をしたモノが点滅していた。


「なんだあれは? 」


近づいてみると、こちらの気配に気づいたのかシンの方に振り向く。

中央付近が開き、大きな目がこちらを見つめる。

すると驚いたのか、飛び上がり一目散に逃げ始めた。

意外に早い……


「あ! 待ちやがれ! 」


シンも慌てて追いかける。

障害物を器用に避けながら距離を詰めてゆく。

時々通路の壁から謎の物体が生えてきたりしたが、回避することができた。

先ほど通ったところよりも長い距離を走った。

気が付けばエリアの名前も変わっていた。



~魔物内部 ???の出口付近~


「はぁ はぁ はぁ…………やっと……追いついたぞ…………」


謎の魔物も疲れたのか苦しそうにしていた。

まるで心臓に様に動いているのがわかる。


(なんか気持ち悪いけど、見た目から考えるとこの魔物の心臓か? )


そんな事を考えていると、魔物はこちらを向き睨んでいることに気づく。


「……っと、戦うつもりなのかよ? 」


武器を構えた瞬間、こちらに真直ぐ向かってバウンドしながら攻撃してきた。

単純な踏みつけと思ったが、高く飛び上がり落ちる時大きく膨らんでいた。

不意を突かれたこともあり一撃貰ってしまう。


「ちょ……そんなのありかよ!? ギャーーーーーーーーーーッ!? 」


ズドンッ

シンは押しつぶされる、膨張した魔物の身体は地面に深く沈み込む。

そのまま窒息させるためなのか身体の大きさを維持し、その場から動かない。


「痛……くない? なんでだ?」


自分に何が起きたのか周囲を確認してみるが、周りは生々しい壁、正面には魔物の身体があるだけであった。

なんとシンの身体は柔らかい床にめり込んでいる状況であった。

どうやらこの床は強い衝撃を受けると柔らかくなる性質のようだ。

シンは腕や脚を曲げたりできるか試してみる。

伸縮性もあるらしく、潰され仰向けの状態でも拳での攻撃の態勢はとれていた。


「こ、これならなんとかいけそう……だな。 後はこの反動を利用すれば…… 」


拳を作り、肘を引く。 過去に読んだ格闘技術の本を思い出してみる。


(

正拳突きの威力は腰の回転力と拳の螺旋回転の力を正確に拳頭に集中してヒットさせた時に生じる……だっけか)


今の状況からできるだけ近い形を作る。


(仰向けの状態だけど『床』はある、脚の位置も調整して……)


思ったより動ける、小さくだが正拳順突きの構えをとることができた。

しかし、これ以上は床が戻ろうとする力が強いため動けないだろう


(出足や重心移動にともなう力は……反動を利用するか)


軽く深呼吸を行う。


(集中して……(バレッド)(カタパルト)で打ち出すように……)


「放つ!! 」


ゴムのような床が戻るときの反動を利用した一撃が魔物に直撃する。

その反動でシンも一緒に浮き上がっていた。


「勝機! オラァッ!! 」


空中で打てる限り拳を打ち込んだ。

彼の後ろに何かいるかと思うが気のせいである。

いつの間にか魔物とシンの位地は逆になり、彼はかかと落としを相手に喰らわせ地面に叩き付ける。

軽くバウンドしている所に追撃を喰らわせた。


「これで終わり! タイガーエコーフィスト!! 」


もう一度叩き付けるように拳を繰り出す、特殊な振動が相手に伝わり亀裂が入る。

魔物は目を見開く、亀裂からは緑色の液体を出し縮んでゆく。

もとの大きさに戻ると何かを訴えかけているようにシンを睨む。


「う……なんだよ、そんな目で見るなら俺をさっさと吐き出しやがれ! 」


そう言った矢先、地震のように揺れ出した。


「わ、わわわ…………これは何が? 」


揺れは激しくなり、彼は体制を崩す。

原因が何か探すが何も見当たらない。

すると、シンの後ろに巨大な何かが現れ影を作る。

振り向くとそこには……巨大なハンマー状の塊が天井にぶら下がっていた。


「ゆ、揺れの原因って……これか? まさかこれで……」


魔物の方を見ると、目じりが下にいっていた。


「わ、笑ってやがる……ちょっとm……グハァッ!? 」


シンはハンマー状のもので打ち上げられていった。

かなりの速度で上昇している。


「うわああああぁぁぁぁぁッ!? 」


狙いは正確で、その先には謎の穴があり白い何かで閉じていた。

よく見ると溝があり、その溝は少しずつ開いてゆくのが確認できた。

隙間からは光が漏れている。


「そ、外か!? 」


溝が開き切り、シンが入り込むと体は緑色の液体に包まれた。

突然のことで驚いたが、口をすぐ閉じることができた。

液体でよく見えないが、暗く、狭い場所にいるようだ。



~森 奥地~



大知たちは何とか紅い蕾の魔物を倒した。

どうやら周囲の魔物も力をなくし、離れてゆく。


「なんとか……なったな? あとは」

「ええ、あの紅い魔物だけですね」


二人が見てみると、魔物は苦しそうな仕草をしていた。

何かを吐き出そうとしているようだ。


「様子がおかしいな……まさか攻撃か!? 」

「いえ、あの様子は何か吐き出そうと……? 」


腹部付近にあったふくらみが徐々に上に行き、口が膨らみ始める。


「姐さん! 少し離れるぞ!」


大知の掛け声とともに後ろに下がると、魔物も何かを吐き出してきた。

緑色の何かに包まれていたものが地面に落ちる。

緑色の液体状のモノは徐々に消えていったその場には、シンがいた。


書ききれなかったので中編に変更しました。

後編では大知&アヤゾノの戦闘場面、3人でのボス戦を入れる予定です。

遅くなってしまい申し訳ないです……

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