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第3話〈大地人〉からの依頼 前編

シンは目を覚まし、カーテンを少し開け窓を見る。外では日が昇り始めていた。

ベットから起きるが、周囲のメンバーはまだ寝ているようだ。


「……3日寝てても寝れるもんだな」


頭を掻きながら静かに部屋から出る。

今日は『採取アイテム』を採りに行く……身体の調子を確認してみるが特に異常はない。


「色々超人並になってるのかな? 特に痛い部分も無いし……、調子も良好だな」


軽くストレッチをしながら1階へ降りてゆく。

途中、依頼受付が見えかけた頃、不審な影を2つ見つけ警戒する。


(! 誰かいる!? まさか……)


シンは嫌な予感がしていた。あの時のPKが居場所を突き止め、殴り込みに来たのではないかと……。

降りるのをやめ、メニューを開き瞬時に武具を装備する。


(【お気に入り登録】の確認と登録をやっといて良かった……)


軽く息を吐き、階段をゆっくり降りる。

怪しい影を注目し、何者か確認するがあっさりとシンの予想を裏切る。

そこには2人の大地人がギルドに来ていた。


「あ、あの……ここは冒険者のギルドであってるでしょうか? 」

「……は、はぃ? ええっと、あ、はい、そうです? 」

「い、いや、こちらに聞かれましても困るのですが……」


どうやらシンの勘違いだったようだ。


(大地人……だよな? 表情がリアルだし、何か深刻な顔をしてるけど……こんなイベントあったかな? )


軽く深呼吸し、確認してみる。

その2人は親子らしく、なんとかこの街まで来たようだ。

とりあえず椅子に座ってもらい、事情を聴いた。

 

「すみません、ちょっと戸惑ってしまいました。 当ギルドへ何かご依頼をされに来たのですか? 」

「ハッ……ハイッ! 」


返事をするが、そのまま黙ってしまう。


(な、なんなんだ? 予想外な反応がきたぞ。しかもこの沈黙、どうしよう…………)


シンが眉間にシワを寄せ、悩んでいると


「あ、あのね? あたしたちのむらをたすけてほしいの…… 」


一緒にいた女の子が話しかけてくる。

それを聞き、父親が再度話をする。


「あ、すみません、いつもとご様子が違っていたので……実は―――」


彼らは依頼を持ってきたようだ。

住んでいる村の近くにある森から魔物(モンスター)が出てきて悪事を働いているらしく、村長からの魔物討伐依頼と、親子からの採取・調達依頼……それぞれの内容を聞いてると他のメンバーも起きてきたようだ。シンは彼らを集め簡単に情報共有を始めた。


―ウリ坊説明中―


「なるほど……わかりました。 私たちにお任せください 」

「えぇっ!? そんなあっさり受けて良いのか? こっちは食料問題もあるんだぞ? 」


アヤゾノの答えに大知は反論する。


「確かにそうですが、彼らの事も無視はできません。なので依頼料を金貨ではなく、食材に変えてもらえば一石二鳥ではありませんか? 」

「たしかにそうだな……、それでも大丈夫ですか? 」


シンは大地人の親子に聞く。その結果、村長側の依頼からは金貨600枚、親子側からは食材をもらえるとなった。実は大地人の親子は農家をやっており、「依頼料が食材で済むのであらばいくらでもどうぞ」と嬉しそうに答えてくれた。

話がまとまると、各自昨日話した予定で進めることになった。


約30分後、シン達はもう一人の依頼者がいる〈ヤブシの村〉へ到着したのであった……



~〈ヤブシ村〉~


「おぉ……これで安心じゃ……冒険者殿、実は……」


ギルド、道中で確認した内容をそのまま聞かされた。


とりあえず魔物の居場所を聞く。

依頼場所は〈人喰いの森〉、魔物以外にも採取アイテムが豊富にある森だ。

何人もの大地人が森へ入り何に惑わされたのか気づいたら奥深くに来ており、そのまま行方不明になってしまう事から名づけられている。最奥には真紅色の人食い草が生息しているらしい。


村長たちの依頼はこの森の小牙竜鬼と人食い草の討伐、親子からはある魔物から採れる種、真紅の種の採取であった。シン達は村の道具屋で準備を済ませ、森に向かった。


~〈人喰いの森〉~


気づけば森に入って数時間が過ぎていた……もうすぐ昼時なのか冒険者達も空腹を感じていた。


「……お? あそこで休めそうじゃないか? 」


大知が指差す先には、少し広めの場所があった。


「そうですね、おそらく安全地帯(セーフゾーン)でしょう」

「ふぃ~……やっと休めるな」


戦闘はもちろん、少々ハプニングはあったが大分奥まで進んできたようだ。

安全地帯へ入るとそこには切り株があり大知とシンはその席をアヤゾノへ譲り、2人は地面へ座る。


「いや~ 大分動いたけど、やっぱ冒険者の身体はすごいな! 」

「あこがれていた魔法や技、スキルを使えるのは驚きを隠せないよな~ 」


男2人の話が盛り上がっていると、アヤゾノが割り込む。


「シンさん、確かに身体能力はすごいですが、さっきの事忘れてませんよね? その『身体能力』がなかったら死んでいたかもしれません、もう少し注意深く動くべきですよ? 」

「う……ゴメン」


この場に到着する少し前、シンは不注意で人食い草の群生地帯中央まで入ってしまい孤立してしまったのだ。



~道中:回想~


小牙竜鬼の集団を倒し、村長からの依頼対象が残り1つとなった頃……


「さすがに3人だと余裕だな」

「まぁまだうまく動けないときがあるけどな」

「小牙竜鬼は規定数に達したので残りは……」


アヤゾノが確認をしようとした時、シンが話しかける。


「残りは人食い草が数体だろ? 先行して探してくるよ」


彼は走り出し、茂みの中へと消えていった。


「あ、ちょっと待って……行ってしまいました」

「大丈夫だろ、実際俺らよりも動きなれているからさ」


そんなことを言っていると、茂みの向こうから声が聞こえてくる。


「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!? 」


その叫び声に大知の笑顔が消える。


「シン!? 姐さん、走りますよ! 」

「早くいきましょう! 」


走り出し茂みを抜けた先には、再度人食い草群生地帯の中央まで入ってしまったシンがいた。

周囲から蔓で攻撃を受けているようだが、器用に避けていた。


「ちょ、わっ、危なっ!? 」


その様子を見て


「……器用に避けてるな」

「感心してないで助けますよ! あの数ではいつか当たります」


大知とアヤゾノの援護、又はキャラクターの能力のおかげなのか軽傷で切り抜けることができた。



~回想終了~



「ハハハ……、2回目も敵の中央に飛び込むのはまさに『切り込み隊長』だな」

「……むぅ」

「フフ、猪突猛進な『ウリ坊』でもありますね」

「うぅ……言い返せない、気を付けるよ」


そのような事があったが、道中での小牙竜鬼の部隊、2つの人食い草の群生を倒したことで村長側の依頼は完了していた。


「あとは”真紅の種”の回収だけですね。そのようなアイテムは聞いたことがないのですが……」

「でもあの父親はこの森にいる魔物から採れるって言ってたよな? 植物系だと思うんだけど 」


〈大地人〉の話した内容を思い出していると


「そういえばあの大地人達……、妙にリアルだったよな? NPCにしては」

「普通に依頼の話を聞いていたけど、朝見たときは俺も驚いたよ 」

「私たちと同じ……いや、冒険者と違って『生き返る』事はないとおっしゃってましたね。尊敬のまなざしを向ける人もいれば、恐怖を感じている方もいたようですし……やはり立場が違うのでしょうか? 」


考えるほど疑問は出てくる。〈大地人〉にとって〈冒険者〉はどのような存在なのか……どこまで〈エルダー・テイル〉の状況は? ほかの街について等々。


「ま、考えてもしょうがない。まずは種を持ってそうな魔物を探そうぜ? 大分動くのにも慣れてはきたけど油断しないようにさ 」


大知は立ち上がるが腹の音がなり、うなだれる……


「昼時だし、まずは飯にしようか。ほれ大知、味なしサンドイッチと口直し用の果実だ 」

「う、あの食料か……果実がある分まだましか 」

「そうですね、では食べましょうか」


それぞれ休息を取り、30分後探索を再開した。



~人喰いの森 奥地~



「……大分深くまで来たな」

「そうですね……、気を引き締めましょう」


さすがに奥まで来ると、辺りは薄暗く見通しが悪い。

そして微かにだが、『甘い匂い』がしていた。


「なんか甘ったるい匂いがしないか? 」


最初に気が付いたのはシンであった。

確かにもう少し奥の方からその『匂い』は漂っている……


「この『匂い』……花、いや果物系かな?桃みたいな…………」

「おいおい、よくわかるな? 俺には何もわからねぇぞ? 」

「私も……気が付きませんでした。 でも集中すれば……なんとかわかりますね」


3人はその匂いのする方向へ進む……だんだん匂いが強くなり、大知、アヤゾノにもはっきり分かるようになった。


「! シン、姐さん……口と鼻を塞いだ方がいいかもしれないぞ」

「えぇ、おそらくこの『匂い』は……」


アヤゾノが言いかけた時、突然シンが走り出していく!


「…………」


今度の彼の目は虚ろになっていた。何かに操られたかのように真直ぐ走ってゆく……


「遅かったか! あいつが『匂い』について話した時に気づくべきだった!」

「追いかけましょう! あのままではシンさんが危険です! 」


彼の感じた『甘い匂い』……それはある魔物が獲物をおびき寄せる時に放つモノであった。

2人は走り出す、シンの後を何とか追いかけていく……しばらくすると、中央付近には蔓や草木が生い茂り大きな紅い花が咲いている空間へ出た。

上からは草木の隙間から日の光も入ってきており、若干明るい……紅い花の前にシンは立っていた。


「……ハッ! ここはどこだ? しかもこの紅い花は……ラフレシア? 」


正気に戻り、巨大な花を観察していると大知たちが追いつく。


「シン! そっから離れろ!! 」

「……え? 」


その声に反応するかの様に花が動き出すと足元にあった蔓が即座にシンを縛り逆さ吊りにする。


「なっ!? 魔物ってオォォッ!?」


真紅の魔物の周囲には狂暴化した[人食い草]がおり、獲物に喰らいつこうと口を動かしている。

動きを拘束され、孤立の状態……本日2度目であった。

もがいて脱出しようと試みるが、蔓を動かし身体を揺らされる為上手くいかない。


「ちょ……そんなに揺らッ!? ウプ……気持ち悪くなってきた」

「シンさん無理をしないでください! 今援護します、大知さん! 」

「了解だ、姐さん! 」


2人はシンのもとへ向かおうとするが、周囲の魔物が邪魔で進めない……


「邪魔だ! どけぇっ!」


大知が刀を振り、魔物に叫ぶと姿を消す……彼は瞬時に敵の真上へ飛び上がり技を放つ


「アサシネイト!!」


初撃からの鋭い一撃が人食い草に直撃したように見えた、しかし、太い蔓のようなものが庇い致命傷まで至らなかった。

大知はあわてて距離をとる。


「な、なんだよコイツは? Lv差から考えて一撃だろ!?」


相手のライフゲージはほとんど減っていない。Lvの表示もバグがかかったようにぼやけている。


「わ、私が魔法を使ってみます! ……≪ホーリーライト≫!」


剣先を相手に向けると、そこから一条の光を放った。

しかし、大きな葉を使い相手は防御……光は貫通せず、焦げた匂いが広がる。


「……この防御力は変ですね、おそらくあの紅い花の魔物が原因でしょう」


冷静に分析していると、紅い魔物が動き出す。

捕縛しているシンを自身の口の真上まで移動させてきた。


「ウプッ……は? ちょ、ま、食われ―――」



バクンッ!



シンは食べられてしまった。

何本も絡まっている茎のような部分が大きく膨らむ。


「た、食べた……」

「え……?」


「ギョボボボボッ!」


紅い魔物が奇声をあげると、周囲の人食い草達も同様に叫びだす。

無数の蔓が2人に襲いかかる……


メンバーが1人欠けてしまった状態で戦闘が始まった。


今回は戦闘シーンは無しになりました。

一番ファンブルを出しそうにないキャラクターが2度も出してしまったので中々文にできずにこのようになってしまいました。

序盤であったコボルドや人食い草の戦闘では特に面白味のない内容だったので、シンの孤立してしまった状態を回想として書いたしだいであります。

後編は今執筆中ですので、もうしばしお待ちください。


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