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第2話 友人との再会 解決すべきは食料問題?

目を開けると、天井があった。

どこかの室内のようで、シンはベッドに寝かされていた。

身体をお越し軽く見回すと、ここは白い壁に木の床のそこそこ広いシンプルな部屋で、ベッド4つとクローゼットが2つあり、部屋の中央付近には木のテーブルとそれを挟むように椅子が置いてある。


(……なんか見たことのある部屋だ…………どこだっけ……)


思い出せなかったので再度仰向けになり、自分の身に何があったのか考え始める。

少しずつだが頭が冴え始めてきた。


(そうだ……〈エルダー・テイル〉の世界、〈セルデシア〉か。んで……魔物(モンスター)やPKに襲われて)


夢じゃなかった……夢であってほしかった、そんな思いがこみ上げてくる。

意識がはっきりしてくると、部屋の外が騒がしい事に気が付く。


バタバタと複数の人が外で何かやってるようだ。

すると突然部屋の扉が開く。

見覚えのあるドワーフの男性が身体を起こしたシンに話しかける。


「……シン? ……目が覚めたのか!? 身体の傷は? 痛くないか? 」

「あ、ああ……大丈夫だよ。 もしかして大知(だいち)か? 」

「そうだよ! あぁ……よかった! おーいッ! シンが起きたぞぉーーッ!! 」


大知は外にいる人たちに大声で知らせる。


彼はシンの現実(リアル)での友人で同じ大学に通っていた。

彼が〈エルダー・テイル〉に誘ってきたことがきっかけでシンも始めたのだ。

互いにギルドには入らず、時には協力しながら攻略を進めていた。


「心配したぞ? ログインしてるみたいだから念話を試してみたが出ないしよぉ」

「ご、ゴメン……それより、この部屋ってもしかして―――」

「ああ、俺達のギルド〈渡り鳥〉の寝室だ 」


2年前にある人の作ったギルド〈渡り鳥〉、生産系から魔物の討伐も受けるいわゆる便利屋。

依頼によってはアキバの街を離れたりして慌ただしい雰囲気からその名前になったらしい。

規模の小さめでシン、大知を含め20人ほどしかいない。


「シンが目覚めたってホント?! 」


猫人族が突然入ってくる。後ろからもゾロゾロと……


「ダイジョブか~? 」

「ちょっと、見えないよ~ 」

「何があったんだ? 」


等々の声が部屋に響く。


「少し皆さんは外で待機しててください、ギルマスの私が聞いておきますので……大知さんは一緒にお願いします 」

「うす、了解ッス」


エルフの人が指示を出すと、それに従って出ていく。


「えっと……アヤゾノさん……ですよね? 」

「はい、今の姿だと『アヤゾノ』となりますね。まさかこのような事に巻き込まれるとは思いませんでした……」

「俺も(あね)さんから拡張の話を聞いてさ、当日ゲーム内で一部のメンバーと会う予定だったんだ。だが、気が付いたらこんな状況さ 」


アヤゾノさんはこのギルドを立ち上げた人だ。

ゲームを始めたばかりの新人だった時にお世話になり、その後ソロで1年ほど転々とした後は此処に在籍を決めたのだ。


3人は情報交換し、現状を確認する。


「やはりここは〈エルダー・テイル〉内の世界なんですね……」

「感覚もあるし、腹も減る……今の状況だとこっちが『現実』か……」

「え……俺3日間も寝てたの? マジで? 」


シンの反応を無視し、2人は話を続ける。


「〈三日月同盟〉のマリエールさんとも連絡を取り合ってますが、街の雰囲気は暗くなる一方…………、中には自暴自棄になって単独でダンジョンへ向かう人やPK行為を行う人も増えてきてます」

「こんな状況じゃ暗いのは無理もないけど、PKまで出始めたか……蘇生するけど、やっぱ死にたくはないよな~ 」


「あ……あの、俺もやっちゃったかもしんない……PK行為」


シンの一言にアヤゾノが反応する。


「……シンさん? 何を仰ってるのですか? 」

「俺が回収した時は魔物にやられたんだと思ってたぜ? 何かが吹っ飛んだ跡はあったけどさ……」


2人とも不安そうな顔で聞いてくる。

シンはダンジョンで戦ったPK武士の話をした。


「……そうですか。 そのような事があったのですね 」

「へ~逆上して切りかかってくるヤツか……よく戦えたな? 」

「さすがに怖かったさ、最初は特技出すのも躊躇してただのパンチ、その後反撃受けて……」


思い出すだけでゾッとする……、斬られた肩に手を当て話を続けた。


「……走馬灯みたいのが流れたよ、家族の顔や思い出がザーッとね 」

「そう……ですか…………」

「でも、その後の行動は正当防衛だろ? たとえやってしまったとしてもさ…… 」


正当防衛……その言葉が胸に突き刺さる…………、ホントのそうなのか?

罪悪感が心に残り、シンの顔色は暗くなった。


「……まぁ起こってしまった事は仕方がありません。現状だと実際に遅かれ早かれ対人戦は避けられないものになっていきますから 」

「そうだそうだ。シン、暗い顔すんなって! 美味い物食って元気を……あ」


大知が言葉を詰まらせる。

そう……『食料』についての問題があったのだ。

どうやらメンバー達も体験したのだろう、『味』のない食料アイテム……シンもその事を思い出し、顔色を変える。


「そうだ……、飯はどうする? あの味のない食料でも腹は膨れるけど……」

「うへぇ、お前も体験したのか。 あればっかだとキツイぜ? 」

「……大丈夫ですよ 」


アヤゾノの言葉に耳を疑った……何が大丈夫なんだよと。

彼女は話を続けた。


「たしかに食料アイテムには味もありません、飲み物も同じでした。しかし、『食材』アイテムは試しましたか? 」


食材アイテム……そっちのほうは盲点だった。


「……いや俺アキバの外だったし、そもそもそんな暇なかったよ 」

「あの味に絶望してからは試してねェッ! 」


大知は堂々と言い張る、清々しい回答だった。

シンは恐る恐るアヤゾノのほうを見る。

彼女は笑顔を浮かべていた……しかし、その背後には黒いオーラが見えた気がした。


「あ、姐さん? その笑顔はやめてくれないか? 俺が悪かったって!」

「フフフ……、大知さんには後で『お仕置き』ですね。とりあえず食材には味がありました。しばらくはそれで対処しましょう 」

「……いや、普通に料理すれば良いんじゃないのか? 」


その質問に大知があわてて反応する。


「そ、それには俺が答えるぜ!」


いつの間にかキャベツと包丁を手に持って謎のステージと共に登場した。


「食材に俺たちが道具で切ろうとすると……」


ゲルンッ


キャベツは一瞬で緑色のゲル状のモノへと変化してしまう。


「なっ……?!」

「さらに魚を焼こうとしても……」


ボシュッ!


今度は魚を焼こうとするがフライパンの上で黒焦げになる。


「……とまぁこんな感じになる」

「大知さん、ありがとうございます。ゲームの時と同様にメニューから行っても味のない料理しかできません…… 」

「じゃあアヤゾノさんの言ったようにしばらくは生野菜の超ヘルシーな食事で凌ぐと……ウチの倉庫に備蓄ありましたか? 」


その言葉に2人は凍りついた。

嫌な予感しかない、メニューを開き確認してみる。


「……ほとんど無い 」


シンがそう言った瞬間


「大知さん! 」

「了解! メンバー連れて行ってくる!! 」



~マーケット~


「チッ!遅かったか…… 」


棚はすでに空っぽの状態であった。

メニューで確認するが[売り切れ]の文字しかない。


「大知さん……、とりあえず戻って女将(アヤゾノ)さんに報告しましょう 」

「あ、ああ……そうだな 」


重い足取りでマーケットから戻っていった。




~ギルド〈渡り鳥〉~


大広間にて調達へ向かったメンバーが報告する。


「……以上がマーケットの状態ですにゃ」

「他の店も回ったけど同じ状態だったぜ」


その報告にアヤゾノの顔も暗くなる。


「そうですか……、申し訳ありません。私の考えが甘かったです。しばらくはコレで凌ぐしかないですね…… 」


不幸中の幸いにも食料アイテムの備蓄は約3日分ほどはあった。

しかし、早急に手を打たなければいけない。


「全員の事を考えても約3日分……」

「その間に何とかしないと……」


メンバー内で不安な声が聞こえてくる。

何か良い考えはないか必死に考える…………すると、シンの目にあるモノが映る。

正確に言えば看板の『文字』だ。


≪ギルド〈渡り鳥〉 初心者歓迎!ダンジョン攻略、採取の手伝い・武具、道具の生産等 承ります!!≫


『採取』その言葉が引っ掛かる……


(そうだ……! )


シンの顔が明るくなる、それに気付いたのか何人かが彼の顔を見ていた。


「ん? 何かいい案があったか?」

「……ちょっと危険だけどさ、街の外にある『採取』アイテムはどうだ? まだ手を伸ばしているギルドも少ないと思うぞ」


その発言にメンバーの顔色が変わる。


「『採取』……! そっか、その手があったな! 」

「で、でも! 魔物もいるんだよ? 特技だってどう出すのかわからないし……」

「シンさんは出せたみたいだぞ? やってみればわかるんじゃないか? 」


一部のメンバーはまだ戦闘を行ったことがないようだ、反対の声も聞こえる。

そこでアヤゾノが提案する。


「……わかりました、ではこうしましょう。 まず皆さんはその身体に慣れる為、地下の練習場で訓練を行ってください。今回は私、大知さん、シンさんでダンジョンに向かい、採取してきます」

「まぁ俺と姐さんは軽く街の外で試したからな、妥当な選択だろう」

「一応病み上がりなんだけどなぁ……ちょっと踏ん張るか」


アヤゾノの提案に反対する人はいなかった。

3人を除いたメンバーは地下での『各種行動、戦闘の訓練』。シン、大知、アヤゾノは『ダンジョンでの採取アイテムを回収』の方針で決まった。


その後メンバーは味のない食事を済ませ、明日へ備えるため部屋のベッドで休んだ………


今回は再会編になりました。

さて、メイン3人は食料問題を解決すべく、ダンジョンへと潜ります。

次回は、TRPGシナリオの作成、戦闘、各判定ロールを行うため遅くなります、絶対に……。

原作と矛盾してくると思いますが、私の想像(妄想)の結果です。なので、目をつぶっていただけると助かります……。

読んでいただき、ありがとうございました。

それではまた次回お会いしましょう、さようなら~……

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