表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/6

第1話 〈冒険者〉になった現実

<大災害>直後


頭が痛い…………どうやら地面にうつ伏せの状態で倒れているようだ。

冷たい地面、そして土の匂い……


「んん……? 」


目の前にはいつも見ているディスプレイの画面ではなく、草木の生い茂る建物、

周囲には鎧、剣等を付けている人が倒れている……


「えっ……どこだここは? 」


青年が慌てていると、後ろから侍風の男性に話しかけられる。


「おいあんた! ここはどこだ?! 俺は確か……<エルダー・テイル>を起動して…………」


男性の言葉を聞き、青年は考える……ゲームを起動した所までは覚えていた。

その直後、意識を失って今に至るのだ。


もう一度辺りの風景、装備のデザインを見直す……近くに鏡のようなものがあり、自分の姿を確認できた。

そこにはいつもの自分ではなく、アバタ―の姿であった。


「こ、これは……俺?! 」


深い蒼色の髪、翠色の瞳を持った狼牙族の青年 シンになっていた。

ここはリアルな夢? それとも本当に<エルダー・テイル>の世界なのか?


「いやいや……、とりあえず情報を集めないと……」


とにかく動こうと立ち上がる。


「何ブツブツ言ってんだよ?! こっちの話を……」


しかし彼は男性の言葉を無視し、そのままアキバの町へ向かって走り出した。


             ※※※


~森の遺跡 道中~


どうやらここはアキバの外、つまりダンジョンの中のようだ。意識を集中するとメニュー画面が表示される。ログアウトの項目は無くなっていた事、今の状況が現実である事に落胆するがまずは身の安全を考えるようにした。


位置を確認すると、町はこの森を抜けた先にあるのが分かる。


「ふぅ……ここならたしかあまり強いモンスターはいなかったはずだ。でもメニューまで開けるとなるとホントにゲームの中に入ったんだなぁ」


安堵に息を吐くと、森の遺跡 出口を目指し進んだ。

一本道なので迷うことはまず無いだろう。


しばらくすると、前方に茂みが現れる。


シンは立ち止まり、茂みを睨む。

その向こうからは殺気を放っているモノがいるようだ……武器を構え、警戒する。


「だ、誰だ?! 」


声をかけると茂みがガサガサと揺れ、中からモンスターが現れた。


「グギャギャ……ぼ、<冒険者>?! ギャギャギャーーーッ!! 」


全身が鱗に覆われた、犬に似た形の頭部をもつ小柄なモンスター、<小牙竜鬼(コボルド)>。

幸いにも1体だけのようで、錆だらけのナイフを装備している群れからはぐれた個体のようだ。

どうも気が起っているようでいきなり彼に襲い掛かってきた!


警戒はしていたが、敵のとっさの行動に反応が遅れる。

この世界に来て初めての戦闘が始まった。


小牙竜鬼はシンの近くに素早く移動し、ナイフを力いっぱい振り下ろす。

このモンスターの特技コボスラッシュだ。


「ギャァーーーーッ!! 」


しかし、渾身の一撃は空をきっただけであった。


「ちょっ……危なっ!? 」


初めて受ける殺気の籠った攻撃に戸惑いを見せるも、何とか回避することができた。


「この……! ターニングスワロー!!」


体勢を整え、無意識がむしゃらに技名を唱えると自然に身体が動きだした。

軽やかに身を翻す燕のような動きで攻撃の軌道を変え、鋭い拳の一撃が小牙竜鬼の胴体に当たる。


「ゲギャッ?! い、痛いギャ……」


胴体へ攻撃が決まったが防具をつけていた為、一撃では沈まなかった。

しかし、重い一撃が決まったのか小牙竜鬼は体勢を崩してしまう。


「ッ! いけるか?! 」

「グギャァッ!」


即座に追撃を行おうとするが、こちらを威嚇し睨む小牙竜鬼の眼を見て少しだけ距離を取ってしまう。

敵の殺気、戦闘での独特の雰囲気……相手は渾身の力を振り絞り攻撃してくるのではと考えてしまったのだ。


「っとと……フゥ。 落ち着け、俺。」


軽く息を吐き、小牙竜鬼を観察する。

・口からは血が流れ、呼吸は荒れている

・立ってはいるが膝が震えている、その場から動けないらしい


異常の事から反撃すらできない状態であると推測し、シンは動き出した。


「よし! いくぞ!! 」


先ほど技を出した時の事を思い出す、咄嗟の事だったが覚えている。

メニューから選択しなくても技が発動していた。

リキャストタイムは存在しているようで、もう少しで終わるようだ。


「一気に終わらせる! タイガーエコー……フィスト!! 」


小牙竜鬼との距離を詰め、右掌底を相手の顔へ打ち込む。

すると当てた拳から特殊な振動を流し込まれる。


小牙竜鬼「ギャァーーーーーーッ?! 」


断末魔を叫びながら吹っ飛び、大木へ身体を打ち付けた。

そして光となり、アイテムをドロップした。


「あ、アイテムドロップはあるのか……」


最初の戦闘が終わると、その場に座り込んでしまう。

慣れていない戦闘、緊迫した雰囲気にいた事に限界がきたのだ


「はぁ~……疲れたぁ~…………」


疲労感がひどいが何とか立ち上がり、ドロップアイテムを回収しその場を離れた。


少し進むと広い場所に出た。

ダンジョン内で感じていた不気味な雰囲気はなく、安全な場所だとわかる。

モンスターの出現しない安全地帯(セーフゾーン)であった。


「せ、安全地帯(セーフゾーン)か……とりあえず休憩しよう」


木の根元まで進み、腰を落とす。

すると空腹感が彼を襲う。


「は、腹が減ったなぁ…… 」


まさか空腹まであるとは思っていなかった。

シンは自分のバックパックを開き、食料がないか確認した。


「何かあったかな? ……お! これは……」


探ってみると食料アイテムのサンドイッチが2つ入っていた。

とにかく腹を満たすためサンドイッチを食べ始めるが、衝撃的なことがわかる。


「! ……うぐ ま、不味い…………」


食料アイテムに『味』が無い。


「うへぇ……なんだよこれは………… 」


妙にじっとり、かつ、むっちりとした食感だけが残る。

何とか1つ食べ終える……しかし、腹は膨れるようだ。


「腹は……膨れるみたいだな。我慢して食べるか…… 」


なんとか食べ終えると、先ほどまであった空腹感は消えていた。

落ち着いたので休憩しながら軽く現状をまとめる。


・今自分はこの世界<エルダー・テイル>に存在している。

・草木の匂い、木などの触感は本物。

・痛覚や空腹、疲労の概念はある。

・腹は膨れるが食料アイテムに味は無い。

・もし死亡した場合はまだ不明。もしかしたら大聖堂で蘇生するかもしれない。


……等々様々な事がわかる。



「……死んだらどうなるんだろう? 」


自身の死を考えるとゾッとした……彼は考えるのをやめ、立ち上がる。


「ダメだ。まずはアキバの町に着くことだけ考えよう。」


頬を叩き、気合を入れる。


彼は再び出口を目指し、歩き出した。

道中に別の小牙竜鬼2体と戦闘を行ったが、1度体験していたおかげか苦戦することなく倒せた。


その後……彼は宝箱を発見する。

どうやら先ほどの小牙竜鬼達が隠そうとしていたモノのようだ。

その見た目は質素な木の宝箱だが忘れてはいけないこともある、それは罠の存在。

小牙竜鬼は罠の扱いに長けており……罠を仕掛けたうえで隠した可能性がある。


「ちょっと調べてみるか。」


彼は罠の有無を調べてみた。

結果、開けた時に石つぶての罠があることが分かった。


「うはっ、危なかったな……」


次に解除を試みる、複雑な仕掛けでなかった為簡単に解除する事が出来た。

開けてみると石つぶての中に金貨が数十枚混じっていた。

解除しないで開けた場合つぶてと一緒に飛び散り入手量は下がっていただろう。


「ラッキーだったな、儲けた儲けた♪ 」


彼は意気揚々と進んでいく。

しばらく歩き、再度地図を確認すると出口の近くまで来ていた。

やっと出られる……そう思いながら走り出す。


出口のある手前には広い空間が広がっていた。

その中央には1人の武士が立っており、

地面には〈冒険者〉が血を流して倒れていたが、そのまま光となり消えてゆく……


彼に気が付くと、睨みながら話しかけてきた……


「やっと見つけた、おいテメェッ!よくも無視して突っ走っていったなぁ? おかげで1回死んじまったじゃねぇかよぉ! 」

「な……何のことだ? 俺はお前の事知らな……」


知らないと言おうとした時、思い出した。

この遺跡の奥で最初に話しかけてきた武士だった。


「たかが小牙竜鬼の集団に油断しちまったぜ。慣れない戦闘だった……だが、蘇生してからは余裕に倒せたけどなぁ?」


どうやら道中で倒した小牙竜鬼の集団からやられていたらしい。

シンが倒したのはほんの一部分で、思い出せば奴らの武器には血が付いていた……


「腹いせにPK(プレイヤー・キル)もやったおかげで、ちったぁ気は晴れたんだけどよぉ……やっぱり死んだもう一つの元凶もやっとかないとなぁっ!!」


そう言って男は武器を構え、戦闘態勢に入った。

反射的に彼も構え、警戒する。


「ま、待てよ! それは油断していたお前が…… 」

「うるせぇっ! テメェだ……テメェの所為だぁーーーーっ!! 」


彼の言葉を遮り、叫びながら襲い掛かる。

しかし、彼は打刀による一撃を難なく避けることができた。


(な、なんだ?この人そんなに早くないぞ……? とにかく! 何とかしないとこっちがやられる!)


後方へ下がり、武士と距離を置く……そして体勢を整え、もう一度武器を構えなおす


先ほど戦っていた魔物とは違う……今度の相手は同じ〈冒険者〉。

注意深く見てみると、Lvとメイン職、ライフゲージを確認できていた。

相手のLvは83……、自分より6つ下だが油断はできない。

躊躇いもなくPK行為を行っている相手、現実で言えばシンは殺人犯を目の前にして固まっている一般人だ。


よく見れば構えている腕は微かに震え、呼吸も若干荒い。

だが、相手もいつまでも待ってはくれない。


「コイツッ……舐めやがって! Lvが高いからって調子に乗ってんじゃねぇぞコラァッ!! 」


先に動いたのはPK武士であった。

距離を置いていたおかげか攻撃まで若干時間ができる……相手が武器を上に構え、こちらに走り出そうとした瞬間!


シンは武闘家の特技<アドヒュージョンビー>を使っていた。

まとわりつく蜂の如き動きで、PK武士めがけて間合いを詰め始めた。


「な……ぶ、分身?! 」


武士には分身したようにみえているようだ。

一瞬で相手の懐に潜り込むと、攻撃特技を発動しようとしたが……


「ッ……てやッ!! 」


一瞬迷ってしまい、通常攻撃を行う。

魔物とは違い、プレイヤーに特技を発動してしまったらどうなってしまうのか……その恐怖が行動に反映されてしまったようだ。


「手加減しやがったな? この甘ちゃんがぁーーーーッ!! 飯鋼斬りぃっ!!」


武器を振り下ろした瞬間、わずかだが速く後ろに下がることができた。

しかし……


「ッ! グアアァァァーーーーー!? 」


突然の激痛に膝をついてしまう。直撃は避けたものの振りぬいた武器からは衝撃波が発生しており、彼の左肩から多くの血が流れていた。


止まらない血、そして激痛……彼は死の恐怖に飲まれかけた。


「安心しな、死んでも生き返るんだ。無償でな。まぁ生き返ったらもう一度見つけて殺してやるがなぁっ!! 」


相手は武器を構えなおすと、近くまでより特技を発動しようとしていた。

時間がとても遅く感じる。あふれ返る思い出の記憶、友人たちの顔……これが走馬灯なのか? と思い、様々な思考が一瞬の時の中でめまぐるしく脳内を走る。


死を確信したそんな中一つの言葉が浮かんでくる


『最後まで諦めるな! 』


それは親友がゲーム内でよく使っていた言葉だった。

どんなに危険な状況でもパーティ内で一人だけ明るい奴だった。そのおかげで粘り強く闘った結果、クリアしたクエストは多くあるのだ。単純なセリフだが聞くたびに力が湧いてくるような気がしていた。


いつの間にか、彼の目には光が戻っていた。


(まだだ……! まだ死ぬわけには……!)


相手の特技が発動する


「おらぁっ! もう一度、飯鋼斬りだッ!! 」


その一撃で砂煙が舞い上がる……相手は笑みを浮かべ、静かに笑い始める。


「フフフ……ハハハハッ……!殺った、殺ったぞぉぉぉぉッ!!」


そのまま高らかに笑い続ける。

風が吹き、砂煙が消えてゆく……シンの顔を見ようと武士は下を向く。


しかしその場には少量の血だまりがあるだけであった。

まだ消えるには早い……そう思った武士はあたりを見回そうと身体を捻るが、すでに遅かった。


「なッ?! いつの間に―――」

「お返しだ! 」


背後には左腕を下に伸ばしながらも、片腕を構える彼の姿があった。

目には迷いはなく、怒りとを秘めていた。


「タイガーエコー……フィストォッ!!」


渾身の一撃を込めた掌底が相手の脇腹に突き刺さり、衝撃波を流し込む。

鎧の一部が砕けながらも武士は吹き飛んでゆく……茂みの向こうには大岩があり、身体を打ち付けられ意識を失う。


「なんとか……勝った…………のか? 」


再度、激痛がシンに襲いかかる!


「イイッ!? 限界……か………… 」


痛みに耐えきれず意識を失ってしまう。


その10分後、ドワーフの暗殺者がシンを担いでアキバの町へと連れて行く。

彼が目を覚ました場所は「渡り鳥」……所属していたギルドにある自分の部屋だった。

練習のつもりで書いたソロ用のお話を書いてみました。

次からはメインキャラ2人追加で3人の話になる予定です。

まだまだ下手クソな文や表現しかできませんが頑張って書きます。

ご指導等、よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ