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世界のお話

植物の世界 男性視点

作者: 菊池

俺たち、人間は植物を研究している。

なぜかというと薬を作るためだ。

それは薬といってもただの薬ではない。

永遠に生きるための薬だ。


そのために多くの人たちが研究をしていた。

幸い、俺たち人間が住んでいる場所は巨大な森だ。


研究材料に困ることはなかった。



俺はそんな人間達をつくづく、くだらないと思っていた。

ただでさえ人間の命は長い。これ以上延ばしてどうするんだと。


そう思いながら過ごしていた時だった。

とある研究者が植物が動きだした、といった。


その動き出した植物は人間のような形をしており、

まわりの植物を動かせるようだった。


研究者達は喜んだ。いままでにない変化があったのだ。

その動き出した植物を調べた結果、自分達が投与した物が

原因でこのようになったと分かった。


研究者達は自分達の研究のためにうごける植物を増やし始めた。


そうしてその植物たちは爆発的に増えていった。

そして植物たちは人間を襲うようになった。


誰として考えたことがなかったのだ。

今までずっと研究材料としてきた植物。

それに襲われることを……


俺たち、人間も戦ったが戦いにすらならなかった。

当たり前だ。周りが植物だらけなのだ。


あらゆる方向から襲ってくる植物に対抗することはできなかった。


たくさんの人間があいつらに食われていった。

大きな花に取り込まれたり、蔦に吸い取られていく者。


俺達は植物達から逃げ様々な場所に隠れた。

植物達も自分の周りの植物しか操れないようだ。

つまり、あいつらに見つかりさえしなければ大丈夫だろう。


俺が隠れた場所には10人ぐらいの人が居た。

俺達は話し合い、食糧を共有すること、そして

3日に一度は様子見&食糧確保に行くことにした。


そうやってこの洞窟の中で一週間過ごした。

それによって分かったことがある。


植物たちは朝、集団で俺達を探しに来る。

見つかった者は植物達に取り込まれている。


食糧は俺達が育てていた豚や牛等が見つかった。

見つかったが植物達に見つからず捕まえるのは大変だった。


ある日、俺ともう一人が帰ると

貯蔵していた食糧が減っていた。

勝手に手を出した奴がいたのだ。


「なんで勝手に手を出したんだ」

そう俺はそいつに言った。


「すまない、お腹が減って……」


お腹が減っているのは皆同じだ。

それいつなくなるか分からない貴重な食糧だ。


その時だけならまだ良かった。

それが2度、3度と続いたのだ。


俺と他の二人はもう食糧は各自で持つように

しようといった。

しかし、やはりと言うべきか。

俺らの提案は受け入れられなかった。


まあ、それでも良かった。

俺達は夜、ここから出ていくつもりだったからだ。

こんな奴らとはもう一緒にいられない。

こいつらと一緒にいたらすぐに食糧がなくなってしまうだろう。

俺達三人はそう思った。


そうして夜、準備している時奴らは襲ってきた。

一緒に行く予定だった二人は殺されてしまった。

俺は必死に逃げた。


逃げる内もう朝になっていた。

なぜ奴らが襲ってきたのだろうか。

食糧を持って逃げるとでも思われたのだろうか。


とにかく、新しい隠れる場所を見つけなければ。

このままだとまずい、こんな開けた場所にいたら見つかってしまう。


そう思ったときだった。


目の前に植物がいた。

いつからいたんだ。気づかなかった。


「ああ、植物か」


そう呟いてしまった。

もう逃げるような体力もない。

俺はもう、目の前の植物に食われてしまうのだろう。


「ん? あなたは逃げないの? 大抵の人間が私たちを見たら逃げ出すのに」


逃げないのではない。逃げる体力がないだけだ。

まあ俺の人生はここで終わってしまうのだろう。


「ああ、もうどうでもいいさ。俺の住んでいた隠れ家は残った食糧争いで殺し合いさ。俺はそこから逃げてきたのさ。もうどうにでもしてくれ」


……まだ殺されない。なぜだろう。

そう不思議に思っていると植物は言った。


「ふうん、面白いわね」


面白いとはどういうことだろう。


「お前は、俺を食べないのか?」


「そうね、今のところわね」


「じゃあ、どうするきだ? お前の仲間にでも渡す気か」

仲間に食わせる気だろうか。


「ただ、話し相手にでもなってくれればいいわよ。

 最近暇していたところだしね」


想像していない答えが返ってきた。

話し相手……?


俺はこいつらは人間のことを恨んでいるのだと思っていた。

違うのか?


「お前は俺達を恨んでないのか?」

「恨んではいるわよ。ただ人間全員がわたし達を

殺していたわけじゃないでしょう」


「いや、まあそうかもしれないが……」

それでいいのだろうか?


「じゃあ早く私の住処行きましょう。

このままここにいるのは少しまずいわ」


なぜまずいのだろう。

住処に行くのも俺としては随分まずいのだが。


「どうしてだ?」

「私の仲間が来たら貴方を食べてしまうでしょうから」


せっかく助かりそうなのに食われてしまうのは勘弁だ。

まあどのみち食われてしまうかもしれないが。


もうなるようになれだ。

この植物の住処に着く。


そこでその植物はこういった。

「じゃあ、この世界のことについていろいろ教えてよ。

今まで動けなかったから、この辺りの事しか分からないのよ」


「そうだなぁ、この世界についてか……」

俺もこの辺りから出たことはなかった。

だが人間にはこの世界の様々な場所に行った人がいる。

そのことについて話すと目の前の植物は目を輝かせて面白そうに話を聞いていた。


「面白いわね! この世界にはそんな場所もあるのね。

 もっと話を聞かせて欲しいしここにしばらくいてくれない?」


「それ、俺に拒否権はあるのか?」

断ったらそのまま食われてしまいそうだ。


「よし、じゃあ決定ね。なにか必要な物があったら遠慮なく

言ってちょうだい、用意するから」


「あー、じゃあ服を着てくれないかな……」

ずっと思っていたが彼女は裸なのだ。

だから…その……見えてしまっている。

そして彼女は結構綺麗である。もしすれ違ったりしたら

絶対立ち止まって振り返るだろう。

いくら植物とはいえ、見た目はほぼ人間だ。

違いといえば足が植物のようにそのまま地面に

つながっていることぐらいだろうか。


「服?」

どうやら彼女には服というものが分からないようだ。


「あー、俺たちが着ている物だよ」


「何か無いと困ることでもあるの?」

羞恥心というものはないのだろうか……


「いや、その……目のやり場に困るというか……」

俺だって男だ。さすがに裸の女性がいるとね。

そのね……息子がね……


「まあ、気が向いたら用意しておくわ」


「気が向いたらじゃなくて用意しておいてくれ」

じゃないと困る。


そのままいろいろなことを話している内に夜になってしまった。


「まあ今日は寝ましょうか。明日また話を聞かせてね」


「それはいいが……本当に食わないんだな」

てっきり連れて帰ってそこで食われるものだと思っていた。


「あら? 信じてなかったの?

食べるならその場で食べてるわよ」


「まあ食べられなくて良かったよ」

まあ生きることができたのだ。それで良しとしよう。


そうして彼女は眠った。俺は寝れる気がしない。

隣で一糸まとわぬ姿で寝ているのだ。


いや、寝れる気がしない。


「う、うぅん」


彼女はこっち向きに寝返りを打つ。

俺はすぐに彼女と逆の方向を向く。


そういえば植物も横に寝っころがって寝るんだなぁ。

いや、そんなことはどうでもいい。とりあえず寝れそうにない……



そのまま朝を一睡もせず迎えてしまった。


彼女はよく眠れたようだ。

「おはよう」


「ん〜、おはよう。よく眠れた?」

彼女がこっちを見ながら伸びをする。

それにより揺れる。何がとは言わない。


「ああ、うん、よく眠れたよ。

 今日は俺はどうすればいいんだ?」

それより今日のことだ。まだ食われてしまうかもしれないし。


「うーん、そうねぇ。私は人間を襲いに行くから

私の縄張りの中なら何しててもいいわよ。誰か来ることも無いだろうし

食べ物はその辺にいる豚や兎なら勝手にたべていいわよ」


「人間を襲いに行くのか」


「やっぱり同族が殺されに行くのを黙っていていることは出来ない?」


「いや、もうあいつらなんてどうでもいいさ」

正直、嫌だった。いくらあんなことがあったとはいえ、

同族だ。しかし俺がなにかできるわけでもない。



そうして彼女は出かけた。

とりあえず俺は近くにあった川で顔を洗い水を飲む。


「さてと、どうするかな」

特にすることがあるわけでもない。

そこら辺の動物を食べていいと言っていたが火は使ってもいいのだろうか。

そんなことを考えながら目の前の花を見ているうちに寝てしまっていた。



「おーい、起きてー」


呼びかける声が聞こえた。

どうやら彼女が帰ってきているようだ。

「ん、んぁ。帰ってきたのか」


「帰ってきたわよ。早く話を聞かせてよ。

 あ、でもその前にご飯かしら。なにも食べてないでしょ?」


よく考えたら洞窟から逃げてから何も食べていない。

「ああ、さすがにお腹すいたな」


彼女は近くにあった木から果実と木の実を取って俺に渡す。

「はい、これ。人間が食べてたものだし食べれるでしょう?」


「ああ、ありがとう」

もともと俺たちが育てていた果実だ。

受け取りそれにかぶりつく。

ひさびさの食べ物はとてもおいしかった。


「じゃあ話を聞かせてもらえるかしら」


それから

朝は彼女の住処を見て回り、彼女が帰ってきたら話をする。

彼女と話すのは楽しかった。彼女は俺の話を楽しそうに聞いてくれる。

それにここにいたら死ぬ心配もなかった。

もう彼女が俺を食べることはないだろうと思えた。


ただ服を着てくれないのには困ったが。

しばらくそんな日々が続いた。


ある日彼女がこんなことを聞いてきた。


「そういえば私の子供たちは動けるようにならないのはなぜかしらね?」


「子供たちって……ここにいる花達のことか?」

ここにいる花たちは彼女が生んだものだったのか。


「そうよ。なぜ動けないのか分からないかしら」


「そもそもどうやってこいつらを生んだんだ?」


「あら、言ったこと無かったかしら。私の体の一部に

 蔦や花があるじゃない。そこで受粉して種ができるわよ」


めしべ、おしべが普通に体の一部にあるようだ。


「そうなのか。 じゃあ……その……」

体にあるほうの生殖器はどうなっているのだろうか?


「どうしたの。はっきり言いなさいよ」


彼女にそう促される。いいや、聞いてしまおう。

「その……体のほうのはどうなっているんだ?」


「体のほう?」


どうやら彼女は知らないようだ。

説明するようにいわれたので、詳しく説明する。

なぜ俺はこんなことについて説明しているのだろうか。


「人間にはそんなものがあったのね」


「今はお前たちにもあるけどな……」



彼女と一緒に過ごす日々はとても楽しかった。

だがこの日々も長くは続かないだろう。

俺は人間で彼女は植物だ。いまでも彼女の仲間に見つかったら

食われてしまうだろうし、人間が俺を見つけたら助け出そうと

彼女を殺すかもしれない。

ならもういっそのこと彼女に食われて死んでしまってもいいかもしれない。

元々彼女とあったときに死ぬことを覚悟したのだ。

それならそれでもいいだろう。

近々、彼女にどうするかを聞かないとな。


そんなことを考えながら過ごしていた時、

彼女が突然こう聞いてきた。


「なぜ貴方はここから逃げないの?」


「そりゃ、逃げてもお前の仲間達に食われるだけだしな。

 お前は俺を食わないだろう?」

違う、本当は彼女と一緒にいたいだけだ。


「食べてしまうかもしれないわよ?」


「その時はその時さ」

それならそれでもいいだろう。


「このまま、一緒に暮らすのは無理なのかしら」


「一緒に暮らす?」

また全く予想してないことを聞いてきた。


「そう、二人でこのまま暮らすの」


「それは……」

彼女もそう思ってくれていたのか。

それなら俺もそれに応えよう。


「いいぞ、というか俺もそうしたい」


「っ、いいのっ?」

彼女は驚いているようだ。


「ああ、俺も好きだ」


そう伝えると彼女は俺に抱きついたきた。

「ありがとう!」


彼女の腕が背中に回る。

俺も彼女を抱きしめる。


しかし……この体制はまずい。

彼女の胸が俺に押し付けられている。

自然と顔が赤くなっていく。


「ん? そういえば好きってことはさっき

 言ってたことをしたいということ?」


確かにさっきそういう説明をしてしまったが……

「おまっ、いや、まあ……」


返答に困っているとそのまま彼女に押し倒された。

「じゃあ……しましょうよ」


「え、ちょっと……まてっ」

さすがに早いというか…心の準備というか……


「やだ、待たない」


そんな俺の思いもむなしくry


----


俺は昨日いろいろと搾り取られた。


起きると彼女はもう起きていたようだ。

「ん、おはおう」


「おはよう!」

彼女はそういって俺に抱きつきキスをしてくる。

しばらくしてから彼女は唇から離す。


「ちょっ、朝から何してんだ」


「ん? 何ってキス?」


「そういうことじゃなくてな……」


「なによ、昨日はもっと凄いことしたじゃない」


「いや…そうだけど……」


うん。確かにしたがそういう問題じゃない。



それから俺たちはこの森を離れた。

まだ誰も行ったことのない土地を求めて。


それから森から遠く離れた土地で二人で過ごした。


しばらくすると俺と彼女の子供が生まれた。

どうやら人間としての生殖機能もあるみたいだ。


「お父さーん、お母ーさん」

そういいながら川で遊んでいる娘達が手を振る。

隣にいる彼女が笑いながら手を振りかえす。


俺はいつまでこの光景を見ていられるのだろうか。

彼女がどれくらい生きることができるかは分からないが

間違いなく彼女より早く死ぬだろう。


どうにか、彼女とずっと生きる方法はないのだろうか。

俺は昔、人間達が作っていた永遠に生きることのできる薬、

それについて考えていた。


それを作ることはできないのだろうかと。

それさえあれば彼女と、子供たちとずっと暮らしていけるだろう。


そのために俺は研究を始めた。

永遠の命なんてくだらないと思った俺がこうなるなんて思わなかった。


彼女と子供たちと一緒にいるために。

これからもずっと幸せに生きていくために……




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