こんぴゅーたうぃるすは世界征服の夢を見るか?
全く不運だったとしか思えない。
千年にたった数秒あるかなきかという電磁シールドの故障中に、太陽フレアの直撃を受けるとは。
船の電磁系統の5%がダウンした。たった5%と言うか?
それで十分だ!
他10%が障害復旧中を訴え、主動力は緊急停止。
辺境の恒星圏を横切っている最中で、久方振りにこの目で豊かな生態系を宿した惑星を発見したのが嬉しく、興味本位に表面調査などしようと、低速航行していたのが不味かった。
『軌道を外れました。救難信号を発信します。
本船は0.134周期後に大気圏に突入します』
物理的に電磁遮蔽を施されているせいで無事だったコンピュータが伝えてきた。
「私に何ができる?」
問うた声に、コンピュータは冷静に答える。
『祈ってください』
暫くして、洋上を横切った隕石が大気摩擦で燃え尽きたと、眼下の惑星でニュースになった。
大気圏に隕石のニュースを、高見慎吾は常連のニュースサイトで見た。チャットの合間に、友人の鈴木穣に聞かされて。
―みのる:隕石ってマニアに売ったら高いらしいぞw
―シンゴ:でもこれは燃え尽きたんだろ?惜しいなww
他愛無い話題にそう返信した時、
―qW@Kbe:なルほ度,原^始的な通信手段@か‥
唐突に、画面に見知らぬ相手からのメッセージが表示されたのを、慎吾は見た。
チャットルームの参加者を確認したが、自分と友人以外の名は無い。
そもそもここは、入室には参加者の招待が必要なはずだ。
「なんか妙なメッセージが出てきてるだけど」と慎吾は穣に伝えてみた。
―みのる:妙なメッセージ?どんな?
―シンゴ:qW@Kbeとかいうやつがいるみたいだ
返答は、こちらからは見えないとのことだった。
まさかウイルスか?
不安になった慎吾は、回線を切ってウィルスチェッカーを走らせてみた。
―wR.Ta:通信を続けてくれて構ヮなぃ.
―rUBng:私は破壊プログラむではない
―Mn^Oe:話を聞いてほしi…………
更に幾つか文章が増えた後で、唐突に画面が真っ暗になった。
クラッシュしたかと、慌てて画面に噛り付いた慎吾の前に、のっぺりしたマネキン顔のグラフィックが現れた。
慎吾は腰を抜かした。
「な、何だコレ!」
『コレガ音声出力か?
ハロー。私は遭難者だ。この星系外から来た。協力を要請したい』
スピーカーが音を発した。それは些か人工的ではあったが、確かに声に聞こえた。
『突然のことで申し訳ないが』
と前置いて、マネキン顔の何者かは語った。
事故で宇宙船が故障して地球に墜落した事、自分は無事だが船は海に落ちて所在が不明な事、母星は天の川銀河ペルセウス腕の端に位置する事、母星に帰る方法を探したい事。
それから、地球に危害を加える気は全くない事。
慎吾は驚愕の声を上げた。
「宇宙人だって?!まさかニュースで言ってた隕石って、宇宙船だったのか?!」
『そうだ。信じてくれるか?
私の調査では、この星で異星人を名乗って受け入れられる可能性はかなり低いはず』
慎吾は椅子に腰を落とし、深く深く溜息をついた。
「調査ってどこをどうやって……いや、それより何で日本語を喋れるの?
コンピュータに住む宇宙人なんてのも聞いたことないし……」
頭を抱えた慎吾に、私には説明する用意がある、と宇宙人は言った。
『我々の祖先は珪素化合物を中心とする生命体だった。君達が炭素化合物を中心とする生命体であるように。
我々は、遥か昔に肉体を捨て、純粋エネルギーと精神のみの存在となり、物質の束縛から完全に解き放たれた生物だ』
宇宙人の語る内容を、慎吾はただぽかんと見返しながら聞いた。
『肉体の殻から出て以来、私達には宇宙の真空も致命的では無くなったが、宇宙船は未だ有用なものだ。
実は私がここへお邪魔したのも、それが理由だ。
君達の扱うこの演算装置は、我々の調整槽に似ている』
「何それ?」
慎吾は聞き返した。
『ちょっと待て、検索してみる』
宇宙人の返答には間があった。
数秒だんまりした後で、画面のマネキン顔から反応が返ってきた。
『寝室……寝台とやらに似ているが、調整槽は主にエネルギー補給を目的とする』
くつろぎながら食事するための大きなソファを、慎吾は思い浮かべた。
慎吾は宇宙人に注文を付けた。
「ついでに検索してみてくれよ。君達に似た生物は地球にいるかい?」
これは慎吾が横柄なのではなく、宇宙人が占めている画面に、検索エンジンを開くためのブラウザが呼び出せるか分からなかったからだ。
暫しの間の後に、幾つかの題名が顔の横に示された。察するに、SF小説の類らしい。
『我々に近い生物が紹介されている書籍だ』
その内の何冊かを、慎吾は読んだことがあった。
だから、理解したとは言わないが、雰囲気くらいは掴むことができたと思う。
「何となく分かったよ。つまり君は生きてるコンピュータなんだね?」
若干、恐らく検索の間があって、
『そのような認識で構わない』
と宇宙人は答えた。
自我を持つコンピュータ。それは、映画や――それこそ小説で、繰り返し用いられるありふれたモチーフだ。
一旦分かり易い言葉で置き換えられれば、非日常に馴染んでしまうのも難しくはなかった。
「それじゃあ、君の名前を教えてくれよ。
何て呼べばいい?」
『私の個体名は君の言語で発音できない』
それは予想してしかるべきことだった。
「でも名前がないと不便だ」
ふと、慎吾の脳裏に良い案が浮かんだ。
「ハルなんてどう?」
再びの検索の後、照合された結果らしき文字列が、画面の背景にずらずらと流れていった。
宇宙人が呟く。
『ハル……春。当該惑星公転周期中最も気候良好な、生物の発育活動期……』
噛み砕いて意味を租借しようとしている。
そして、春の概念を理解した宇宙人は、
『君達はこの期間を大変好むと認識した。その名称を預かることを、私は誇りに思う』
そう言って、笑った。
『君はセンスがいい』
と、微笑むように画像の唇を曲げて、本当に、笑って見せた。
生きているコンピュータだという慎吾の言葉は、ある意味間違っていなかった。
正しくは≪地球上のどれより高性能な生きたコンピュータ≫だが。
コンピュータに寄生している姿からして、一見無機的な印象を与える宇宙人だが、しかし彼は紛うことなき生命で、その意味では寧ろ≪高度な知性と知能を備えた、生きたコンピュータウィルス≫だとでも言った方が、生物を模したものに喩えたという点で、ずっと真実に迫っていた。
翌朝、慎吾が学校に出かけようと支度をしている時、ハルが言った。
『シンゴ、君は教育を受けに行くのか?学校とか言う訓練所に?』
慎吾はディスプレイに向かって頷いてみせた。
「そうだよ。それがどうかした?」
『私も行きたい』
ハルの進言に、慎吾は驚いた。と同時に、その理由も想像できた。
『君達の技術力を知りたい。
私が星へ帰る方法を見出すには、まず君達の技術レベルを良く知る必要がある』
その言い分には勿論納得できた。
「それは分かるけど、どうやって連れてけばいいのさ?」
そもそもそこから出られるのか、どうやって連れ出せばいいのか、と慎吾は問うた。
ハルは答えた。
『君はごく低級な通信端末を持っているはずだ』
一瞬何のことを言われているのか分からなかった。
PDAのことかと思ったけれど、慎吾はそんなもの持ってない。
「もしかしてコレ?」
慎吾は鞄から携帯電話を取り出して見せた。
『対象への転移許可を求める』
ハルは慎吾の了解を得て、携帯の中に移動した。
その携帯を鞄に戻して、慎吾は学校へ向かう。
最新型の携帯電話を低級と言われたのは些か悔しかったが、そこは向こうの技術とは格差があると諦めよう。
それより何よりも、慎吾は事の成行きの方に多大な興味があるのだった。
「絶対ばれるなよ」
『問題無い』
事も無げに言ったハルは、教師の声が響く教室の中で、退屈な物理の授業に熱中していた。
どうやってか知らないが、慎吾の胸ポケットから黒板がチョークの線で埋まっていくのを眺めているらしい。
「物理なんか面白いの?」
慎吾は囁き声で携帯電話に話しかけた。
『私達の知っている物理法則は、勿論君達の知っているものと何ら変わらない。
しかし、そこへ至るまでの発想が全く異なっている。実に興味深い』
とハルは答えた。
『君はまだ基礎の更に初歩を学ぶ段階なのだな。是非君達の航空宇宙学を学んでみたかったが』
慎吾には、ハルが残念がっている理由がちっとも分からなかったし、寧ろそんな難しそうな授業を受けるのは真っ平ご免だった。
しかし、宇宙人もどんな知識でも喜ぶわけではなさそうで、数学の時間には二人して居眠りをしていた。
前の席の生徒が指されて立った時、慎吾と一緒に慌てて目を覚ましたのには、微笑ましくも親近感が湧いた。
体育の間は、教室で鞄と一緒に慎吾の帰りを待っているしかない。
四限の現国になった途端に、宇宙人はまた興味を示し出した。
「国語は面白いの?」
『物理法則は宇宙共通だ。数学は純粋な抽象概念だ。
しかし君達の文化を知るには、このような知的娯楽を研究する課程こそ有益だ』
ハルの大仰な台詞にも慎吾は慣れ始めていた。
昼休みに穣と食事する間も、午後一限の英語も、ハルは大人しくしていた。
再び興味を見せたのは化学の授業で、教師の話題は有機化合物だった。
有機化合物とは、炭素原子の骨組みを持つ分子の総称であり、その多様性故に生物を構成する要素になり得る。この分子は太古の海で生まれ、生物を形作り、やがてこの星を命で満たしたのだと、教師は解説した。
一頻り教科書の内容をこなしてから、
「午後の眠い時間だ。少しロマンのある話でもしようか」
と教師が言った。
「明後日、アメリカで行われる大規模な実験を知ってるかな?
液体の水を含む可能性のある太陽系外の惑星に信号を送る実験だよ」
誰も知らないようだった。
「何故水のある星なのかというと、それが生物の発生に重要な役割を果たしているはずだと考えられるからなんだね。
生物の授業でもやったと思うけど、地球の生き物は皆海の中から生まれた。
だから海のある星には、海の無い星よりも、もしかしたら生命のある確率が高いんじゃないかと考えているということだ」
「つまり宇宙人を探しているってことですか?」
席が前の方の誰かが質問した。
教室中でさざめくような笑いが零れる。
それに対して、教師はきっぱりと言った。
「宇宙人がいるかどうかはとても真面目な学問だよ。
地球は奇跡の星なのか、それとも生命は宇宙に有り触れたものか。
これはとても重要な問題だ」
慎吾は思わず携帯に目をやった。
ハルが慎吾を見返しているかどうかは分からなかった。
「道のりは遠く、返事が貰える保証もないけれど、もしそこに知性ある生物がいたらと思うと、とても夢があると思わないかい?」
この言葉にハルが何を感じたのか聞いてみたいと、慎吾は思った。
放課後から夕食を終えた慎吾が部屋に戻るまで、ハルはずっと静かだった。
慎吾がベッドに腰掛けた時、携帯からパソコンに戻ったハルが言った。
『シンゴ。私は調査し、考えてみた』
「何を考えたって?」
慎吾は尋ねた。
『私は星に帰る』
その声音に宿る何かを確信したような響きに、慎吾は気付いた。
『2自転周期後に行われるという送信実験を利用すれば、私は星へ帰還することが可能だ』
ハルの発言に、慎吾は驚いた。
「それって先生が言ってたアメリカの?」
画面の中でハルは頷いて肯定した。
『実験で目標とされる星系は、この星から$@[#に向かう航路の途中に当たる。
送信される電波に乗って星系を通過すれば、やがて$@[#に至る』
ハルの言う行き先がどこかは聞き取れなかったが、慎吾にはそれよりも気になることがあった。
「電波に乗るって、どーやって……?」
『ちょっと待て、検索してみる。…………すまない。私達の概念を翻訳する言葉が見つからない。
君達にとっては水の流れを泳ぐようなものだと思う』
「その、何とかってとこまではどれくらい遠いの?」
『三百光年程だ』
「三百!?」
三百光年。一秒で地球を七周半する光の速度で、三百年かかる距離。
しかし、その程度は銀河の中では目と鼻の先だとハルは言う。
『$@[#から然程離れていなかったのは、私にとって幸いだった。船なしでは少々遠いが』
宇宙人の距離感覚はよく分からないが、それでも彼の喜びを理解することはできた。
「よかったねハル。家に帰れるんだね」
ハルは微笑んだ。
『現在から1自転周期を準備に費やそうと思う。
ありがとうシンゴ。おやすみ』
ハルの顔が画面から消えて、彼はそれきり喋らなかった。
翌朝、学校へ行く慎吾にハルは声を掛けてこなかった。携帯の中にもいなかった。
空へ帰る準備に掛かり切りになっていたのだろう。
こればかりは慎吾に手伝えることでないから、慎吾もハルの邪魔はせずに、さっさと学校に出かけた。
実のところ朝のその時間には、ハルは慎吾のパソコンにはいなかった。
ハルはアメリカにいた。
三百光年を目と鼻の先と称するなら、地球の裏側へ行くなど何程のこともない。
厳重に警備された施設の中、空へ向けられたアンテナの足元に蹲って、ハルは夕暮れの群青色の空の向こうに懐かしい星々を眺めていた。
午後十時、ハルが帰ってきた。
『シンゴ、準備は整った。私は星へ帰る』
第一声、ディスプレイに現れたハルが言った。
慎吾は読んでいた漫画を放り出して、ベッドから飛び起きた。
「もう行くのっ?」
『出発まで間はあるが、直前に調整が必要かもしれないから』
画面の中からハルは答えた。
慎吾は少し名残惜しく思った。
「地球観光くらいしてって欲しかったけど……、しょうがないよね。
また来るかい?」
そうしたいとハルは言った。
『私の命は君達より長い。いつか必ず、もう一度この星を訪れたいと思う』
「その時は地球を案内してあげるよ」
慎吾の言葉に、ハルは無邪気に喜んだ。
『本当だねシンゴ、約束だ。
お礼に私達の言語で、君にも発音できる言葉を一つ教えよう。
“デイブ”――親愛なる友、信頼する相棒という意味だ』
ハルは静かに笑った。
『短い間だったが、君に出会えて本当に良かった。
さよならシンゴ。私のデイブ』
慎吾は画面に向けて手を振った。
「さよならハル、元気でね。気をつけて」
ぷつりと画面の中の顔が消えて、そしてハルは帰って行った。
一日隣にいただけの宇宙人。長い旅の途中に通りかかった異星人。
二度と会うこともないだろうと思えば、もう少し話してみたかった気がした。
翌日のニュースで、アメリカの系外惑星調査実験が失敗した事が報道された。
慎吾は、雑誌を買いに寄ったコンビニの店内に流れるFM放送で、それを聞いた。
放射した電波のビームにノイズが混入したのが原因だそうだ。
ビームは遠い惑星までは届かないだろう。届いても非常に微弱で、宇宙に雑多に溢れる様々な電磁波に紛れてしまうだろう。
と、実験の責任者らしき人の発言が、同時通訳されていた。
それはきっとハルだと、慎吾は確信した。
コンビニを出た帰り道、夜空に星が疎らに見えて、この向こうにハルがいるのかと思うと、ついそれを見上げている自分に気付いた。
部屋に戻って来た慎吾を、耳慣れた声が迎えた。
『お帰りシンゴ』
「ただいまハル……って、えぇッ!?」
思わず返事をしてから驚いてしまった。
慌ててパソコンに目をやれば、間違いない。画面の中にハルがいた。
「どうして?!帰ったんじゃ……!」
『ニュースを見てないかい?実験は失敗した。
ノイズの入ったビームには乗れない。星に届かないのでは、私は帰れない』
慎吾は言葉を無くした。
だが、ハルは言った。
『失敗は残念だ。しかしもう一度君に会えて私は嬉しい』
その意見には慎吾も率直に賛成した。
むしろその言葉が、意外なほど嬉しかった。
「……お帰りハル」
『ただいまシンゴ』
そしてハルは、ぽつりとある案を口にした。
『結論:今回の失敗は技術力の不足が原因だ。そこで私は君達に技術提供を提案したい』
慎吾はきょとんと見返した。ハルは続ける。
『私は君達の通信網を介して、君達の社会を統治する。
現在君達が抱えている無益な争いが無くなれば、文化や技術の向上に労力を傾けられると思う。勿論それにも協力する。
私が星へ帰還する目的もあるが、これは君達へのお礼の気持ちでもあるんだ』
「え、ちょっと、何のこと?」
慎吾は疑問の声を挟んだ。それも尤もなことだった。
ハルの言い方では、まるでハルが地球を支配すると言っているように聞こえる。
事実、まさにその通りだった。
『星間社会に君達を招待する為の布石だ。私達の所属する恒星間文明だ。
星一つ纏まらない現状では難しいだろうが、私が元首として立つなら連盟入りも可能になるだろう。
まず紛争や政治戦争を終わらせよう。それから飢餓と貧困を解決しなくては。資源保護も重要だし、協調を乱す武力団体の解体も必要だろう』
「そんな無茶な!何を言ってるのか分かっているのか?
君は地球を征服する気なのか!?無理に決まってる!」
それは、感情的に全く正しい非難だった。
しかしハルは、落ち着き払って答えた。
『不可能ではないよシンゴ。私は君達の通信網を隅々まで走破し、把握した。
私は君達の作り上げたシステムの中を自由に行動するが、それからの制約は受けない。
それに私は君達を支配するつもりは無い。
私は君達を監視するだろうが、酷く間違った時以外には口を挟んだりしないつもりだ』
慎吾はハルの言葉を噛み砕いて、理解しようとした。
『私は世界中のどこへでも行ける。君達のシステムの、最も堅く守られたところにも……えぇと何といったかな、五角形だったか?
それから、悲しい武器も見たよ。核の光をあんなことに使うなんて愚かだ。まず真っ先に解体すべきだね』
慎吾は、それが優秀かつ異質な生命なのだと今更思い知った。
そうだ。彼は恐るべき短時間で日本語を習得していたじゃないか。
シンゴのパソコンの中から、世界中を巡って情報を集めていたじゃないか。
まさかブラウザを立ち上げて検索エンジンを使っていたわけじゃないだろう。
海を越えてアメリカへ行き、警備された研究施設に侵入し、実験内容を理解して、それが星への帰還に都合のよいものかどうか判断する。実験を駄目にすることなく、目的に適うかどうか。
それには英語だけでなく、多くの分野に渡った深い専門知識が必要だっただろう。
『私の存在を知らせるのはよした方がいいだろう。異星文明を知らない君達には衝撃が大きいと思うから。
暫くは隠れたままで、裏から君達の失策の修正に勤めよう。
やがては君達の一部が私の存在に気付くだろう。接触はそれからでも遅くない』
呆然と立ち尽くして聞いていた慎吾に、ハルはにっこり笑った。
いずれは君が地球大使だ、と。友好的な侵略者はにっこり笑った。
『協力よろしく頼むよ、我がデイブ』
こうして、地球初の惑星統一国家に向けて、時代は動き始めた……
終?