3話
今回から文量増やしました。
鈴木一佐達を償還してから2週間程が経った。
いよいよ明日からダンジョンが解放されることになる。
この2週間程で出来る限りの準備は完了させた。
弾薬や食料、医療品などはスキル『無限物質』のおかげでかなりの量が蓄積できたし、トラップの方も地雷などのえげつないのが執拗に設置されている。
いくら国際法が無いと言ってもここまでやることになるとは…。
何も知らない人が侵入したら北朝鮮も真っ青なとても愉快なことになるだろう。
進化した(えげつなくなった?)のは施設だけでは無い。
この2週間で気付いたことだが、どうやら『無限物質』は自衛隊が採用していない装備も製作可能なようなのだ。
これを知って俺は調子にのった、いや、のってしまった。
まず最初に狙撃手。自衛隊の通常の装備はM24なのだが、この世界で通用する保証が無い。
そして市街戦で狙撃手が使えなくなるのは大きな痛手となる。
そこで彼等の中の数名にはバレットM82を装備させることにした。バレットM82とは大口径の狙撃銃で、対物ライフルという分類に入る。
そう、対人ではなく対物である。
某無口武偵がこの銃を人に向けてぶっ放しているシーンがあるが、実はとんでもないことである。
やったこと無いから確信は持てないが、人間の頭ぐらいなら易々と吹き飛ぶはずなのだ。
…念のためという意味合いがかなり強いので、彼等の出番が無いことを祈ろう。
そして狙撃手以外の隊員は分隊単位で行動させ、これまた念のためパンツァーファウストを分隊単位で配備した。パンツァーファウスト、つまりは無反動砲である。当然ながら普通の人間なら撃たれることは無いであろう代物だ。正直言って、こんなのを使う必要性のある侵入者がきたら降参したい。
まぁ降参したら無条件で死亡するのだが。
それでもダメだったらサリンの出番である。
サリンとは某真理教も使用した、悪名高き毒ガスである。本当の名称は長ったらしくて覚えていない。
ガスをダンジョン内に蔓延させた後、生き残った奴がいたらNBC装備を装備した部隊を突っ込ませて抹殺できれば終了だ。
…パンツァーファウスト以外は自衛隊の採用していない装備になってしまった。
まぁ何はともあれここまですれば恐らくは当面の間は大丈夫だろう。
しかしいずれは普通科部隊だけでは戦力が足りなくなる。
流石にダンジョン内で戦闘機は難しいだろうが、戦車や戦闘ヘリはいけるはずだ。
幸いにも戦車や戦闘ヘリを製作する条件もそこまで厳しい訳でも無く、比較的簡単に製作できそうだったため今後に期待だ。
明日からが楽しみだ。
そして夜は明け、ダンジョンが解放される。あるダンジョンは解放と供に都市への侵攻を始め、あるダンジョンはじわじわと周辺地域にクリーチャーが展開する。
解放後のダンジョンの行動やどのようなクリーチャーやトラップがあるのかは様々だったが、全てのダンジョンに共通していることがあった。
それは、人の住む都市の近郊に発生したということだ。
そして(当然のことながら)ダンジョンなど基本的には人の害にしかならないことから、発生したダンジョンはすぐさま討伐対象となる。
直ぐに異変に気がついた比較的大きな都市は戦闘状態へと陥った。
そして我らがダンジョンはというと…
《ビー!ビー!》
さっそく侵入者がきていた。但し正規軍でもファンタジーで定番の冒険者でも無い。
盗賊団だ。
ただし十数名では無い、数百名規模の大規模なのだ。
どうも近くの都市を襲う直前に見つけたらしい。
なんと運の無い連中なんだ。
まぁこーいうのを因果応報っていうんだろう。
対処にあたっている隊員からの報告によると盗賊達の武装は剣や槍、弓などの中世のようなものらしい。
そのような点ではファンタジーらしいと言えるかもしれない。
そして現代兵器を装備した軍隊はそのような相手に負けたりはしない。
結局初陣は10分程でこちらの快勝に終わった。
「マスター、侵入者の排除が完了いたしました。侵入者及びダンジョン周辺に展開していた敵勢力約300名は全て殲滅いたしました。こちらの被害は軽傷若干名であります。」
「御苦労。今後もよろしく頼む。」
「了解。」
鈴木一佐の報告を聞き終えるとウィンドウが現れる。
新しいスキルでも獲得らしい。
<New>新たに各種車両が製作可能になりました。
<New>新たに各種ヘリコプターが製作可能となりました。
<New>ダンジョンがレベルアップしたことで新しい部隊が償還可能になりました。
…倒したのって本当に盗賊団か?
ドラゴンでも倒したのかと疑いたくなるような戦績だ。DPもたっぷり獲得できたしいいこと尽くし、ってかいいことしかなかった。念願の戦車やヘリも手に入ったしダンジョンの拡張も急がないとな。
次に作るのは荒野をイメージした広く開けた場所にしたいと思っている。
このフィールドでなら戦車による圧倒的な火力とヘリによる三次元な攻撃はかなり期待出来るだろう。
それにこの層があれば、最初の普通科部隊も危なくなったら安心して撤退出来る。
よし、さっそくダンジョンを拡張させるか。
そう考えていると息を切らした士官が駆け込んできた。
「ご、御報告いたします。」
「どうした。
また盗賊団でも来たか?」
「いえ、周辺地域の警戒にあたっていた部隊からの報告で、15、6歳ほどの少女倒れていたそうです。早急に保護し、帰還するとのことです。」
「分かった。医療担当の奴らに受け入れ体勢を整えさせといてくれ。」
「了解。」
何でこの辺りにそんな子がいるんだろうか。
数百名規模の盗賊団が居るぐらいだからこの世界の治安はよくないだろう。
少なくともか弱い女性が1人で出歩いて無事で居られるような甘い環境ではないのだ。
…事情を聞く必要性がありそうだな。
鈴木一佐に盗賊団の処理を任せ、とりあえず医療室に向かうことにした。
救助した少女、美少女だと良いなぁ。
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