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プロローグ

 初めまして、ポチ甲乙です。

 ノリで始めた自作小説。至らないところも多々あるでしょうが、どうか生暖かい目で見守ってやって下さい。

 目標は、最低週一更新ですが、戦闘描写は異常なまでに筆が進みます。

 では、始まり~。

○プロローグ



――端的に言うと、『改造』や『チート』が大嫌いなのである。


「……『我は「コレ」を改造した。戻して欲しければ「コレ」をクリアし、我を越えて見せよ。フハハハハハハ』……だと?」


 自室。高校から帰宅して制服から着替えた後、勉強机に携帯ゲーム機とそのソフト、更に手紙が置いてあるのを見つけた。この、無駄に高級品の家具で装飾された部屋の主、早瀬玲斗はやせれいとは手紙の序文を声に出して読んで、盛大な溜息をつく。


 今日体調不良で学校を早退した親友が、病人のくせにニヤニヤしていた理由を知って玲斗はふつふつと沸き上がってくる怒りを感じていた。


(ったくアイツは! 次会ったらどうしてくれようか)


 玲斗はゲーマーだ。


 戦略を練って、寸隙を縫って勝利を掴むことに面白みを見出している玲斗にとって、圧倒的な暴力は言わば邪道だった。これはゲーマーとして、例え親友にも譲れない信念。


 一つ、深呼吸。


 横目で『マジック=マネー』だったものを見る。『マジック=マネー』は、そのタイトルの通り、魔法をゲーム内通貨で発動する、と言うのが売りのゲームだった。プレイヤーの自由度は高く、魔物狩りから武器の生産、商売、町興しなどができる。


 ネーミングセンスが残念なのを棚に上げれば、玲斗は現実では決して味わえない、許されない『自由』を『マジック=マネー』で満喫していたのだ。


(でも、一周しないと本当に戻してくれんだろうしなぁ……)


 何とか溜飲を下げて冷静になると、結局そんな解決になっていない結論しか出なかった。 どうにも最近、親友、堀川圭祐ほりかわけいすけは露骨に『改造ゲー』を薦めてくる節があった。頑なに断っていたのだが、これも圭祐のゲーマー魂か。はたまたハマってしまったのか。


 頭の片隅でそんなことを思いつつ、流すように手紙の続きを読み始めた。



 が。



 気が付けば玲斗は食い入るように読み込み、最後の「。」に到達した瞬間、神速とも思われる速度で机の上のソフトを端末に差し込んだ。シャー、と軽快にディスクが回転する音を聞き、玲斗は思わず苦笑する。


(不本意だけど……なかなか面白そうじゃないか、圭祐)


 彼の『改造』は、初め玲斗が想像したものとは大きく異なるものだった。


 曰く、設定を追加したオリジナルストーリー。

 曰く、魔法の制限はあるが、複数の魔法を組み合わせることで臨機応変な戦闘を味わえる。

 曰く、最強の魔物を討伐せよ。


 とのこと。


 なかなかそそられる設定だった。


 圧倒的な力を『振るう』のではなく、『振るわれる』。別段玲斗に特殊な性癖があるわけではないが、自分よりも高位の存在を叩き伏せることこそ、彼が仮想空間に求めるものだった。


 ――自分は決して、運命に逆らうことは出来ないから。


 急速に気力が萎えていくのを感じ、玲斗は頭を振った。



 ――コツ、コツ。



 玲斗は音を立てずにゲームを机に置き、引き出しから黒光りする物体を取り出す。


 弾が装填されていることを確認。


 リロード。


 安全装置に指をかけ、いつでも外せるよう構える。


 意識しているわけではない。玲斗が中学生の頃から身に着けた護身術だ。


 気配を消さないまま銃をドアに向かって構え、足音が大きくなるのを静かに聞いていた。


 やがて、足音は玲斗の部屋の前で停止する。


 三回の、軽いノック。


「玲斗様、ご主人様から本日の晩餐会は必ず出席して欲しい、とのことです」


 柔らかくもハキハキとした、若い声がドア越しにくぐもって響いた。


 それは一年前、玲斗が高校に入学したときに雇われた女性メイドのものだ。しかし、玲斗が拳銃を降ろすことはなかった。


「わかった。用意はしておく。ありがとう」


 努めて高校二年生男子らしい陽気さで了解と謝礼を述べる。すると、「失礼します」という言葉と共に、一定のリズムで足音は遠ざかっていった。


 一息つくと、拳銃――SOCOM・Mk-23を机に置く。


 再び椅子に腰掛けながら、昨夜父に、グループ上層部と連携している企業のお偉方が集まってパーティーを開くと言っていたのを思いだした。また疲れるのかと、憂鬱な気持ちになる。値踏みする目、取り入ろうとする目、憎悪を孕んだ目。こればっかりは、なかなか慣れるものではない。



 ――誰も簡単に信用するな。



 それは恩師の言葉であり、玲斗自身の戒めでもある。


 取り返しの付かない失敗は、二度としたくない。


(……やめだ。ゲームしよう)


 両親は決していい顔はしないが、これだけは黙認してくれている。


 ゲーム機を手にとってボリュームを上げると、管弦楽器の重厚なBGMが流れ、さっきまでの陰鬱な気持ちもどこへやら。新たな期待感が玲斗の心を満たしていった。



 装飾された『MAGIC=MONEY』がでかでかと踊るタイトル画面で、『START BUTTON』を押し込み。


 現れたアイコンの内、『NEW GAME』を選んで『○ボタン』を押した。



 瞬間。



「うわっ」


 画面が原色を高速で明滅させる。


 咄嗟に目を閉じても、玲斗は瞼に強烈な光の奔流を感じていた。


(――っく、開始早々バグってるじゃんか! 機動チェックくらいしろよ)


 内心で愚痴る玲斗には、何畳もある部屋を煌々と照らして自分を包み込んでいく光球にも、僅かばかりの浮遊感にも、気付くことは出来なかった。




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