⑦おじさんとぶら下がり
今日全部アップします
先行物販開始の1時間半前にライブ会場に着いた。
本日は平日なので並んでいる人は少ないがそれでも待っている人はいた。
「すいませんトモさんですよね?」
背後から声を掛けられ俺のブログも有名になったのかと振り向くとスタッフの許可証を首に掛けた男性だった。
「お話があるから連れてきて欲しいと言われてまして」
頭によぎるのはスタッフが止めなかった二の腕ぶら下がり事件……チェキ写真ブログで公開したし怒られる?最悪出禁?
戦々恐々としながらも付いていく頭の中ではドナドナが流れている。
観客では絶対は入れないエリアを歩いていると不安ながらもワクワクしてくる不思議な感覚だ。
前を観るとルカちゃんとメガネのロン毛の40代男性が居た。
「ご案内してきました」
「ご苦労さま、仕事に戻ってください」
案内してくれた男性は俺に会釈すると立ち去った。
「トモさんいつもシェリータウンを応援してくれてありがとうございます
私はチーフマネージャーの大村と申します」
名刺を差し出され受け取る。
「実はですねトモさんのブログの影響かランダムチェキでぶら下がりチェキを出して欲しい要望が多数ありまして」
俺にそんなに反響がある実感ないけど……
「はあ……」
「是非協力してもらえないかと思いましてお呼びしました
もちろん身バレなどの配慮しますし報酬もお支払いします」
「はい!」
それまで空気だったルカちゃんから人気覆面レスラー【デストピア】のマスクを出される。
どれだけ俺をレスラーに仕立て上げたいの!?
「やると言ってないのにマスク差し出されても……俺の体格で被ったら本人と誤解されてデストピア選手にご迷惑になるかもしれませんよ?」
「そうか!じゃあコレ」
見たことの無いマスクを出してきた。
「これはもう引退したメキシコのマスクマンの奴なんでコレなら大丈夫!」
「まさかの私物!?全然大丈夫じゃないし!」
「それではダメと言ったでしょ?」
と大村さんはアフロのウィッグとパーティーグッズの鼻メガネを出してきた。
「これ大喜利か何かですか?
引き受ける流れですけど他のファンに申し訳ないので断りますよ」
「何で?」
「今理由話したよね?」
「わかった!」
すぐ後の扉を開けて誰かを手招きした。
「お願い♡」
出てきたのはシオちゃんで可愛くお願いされたが横に首を振る。
次に手招きして出てきたのはクルミ
「先日はご迷惑…痛い!何よルカ?
お願いにゃん★」
首を横に振る。
「何でダメなの?こうなったらリックん呼ぶしかないね!」
「何でよ!私は?スタンバイしていたのに!」
カレン登場!なんか嬉しくない。
「だってカレンちゃんはトモさんと面識無いでしょ?
チェキ撮影の順番最後の人にお願いされても首を縦に振ってくれないよ」
「何よ!仕切っているけどルカだって3番でしょ!」
仲良いなと思いつつもこのコントいつまで見できれば良いの?
「大村さん何で俺何ですか?」
最大の疑問だ体格的に案内してくれた男性でも良いはず
「ライブ会場スタッフには体格良い方も居るんですけどコレは頼めませんし、私達側は女性が多く男性もトモさんみたいに体格良くないので……」
「申し訳ありませんがお断りします。
並ばないとチェキ券枯れるかも知れないんで…」
「!なら報酬に全員とチェキ撮影はどうですか?
それも2枚づつ片方はサイン付き!」
破格な報酬に固まる俺。
「リハーサル見学もつけますので是非!」
さすがの俺もリハーサル見学の魅力には勝てず頷くしかなかった。
撮影は空いている楽屋で行われた。
他のファンに悪いと言う気持ちがあるから彼女達をぶら下げるマネキンと自分に言い聞かせ会話し無いように心掛けた
「お姫様抱っこはダメですか?」
「ダメだろ!」
ルカちゃんの言動で無理でした。
今回の先行物販に出すので急ピッチで撮影
「チェキ撮影?誰?」
リックんが現れました。
「陸人話しただろ例のチェキの為にルカ推薦の人が来るって」
「ブログの人?髪型違うじゃん」
「マジで言ってます?ウィッグですよ!」
ウィッグを外して見せて
「この状況の原因はお前か!」ルカを指差し
「他のファンに罪悪感を感じながら撮影する気持ち分かるか!」
普通は体験できない事だけどズルしている気がどうしてもする。
「モトさん落ち着いて」とリックん
「トモですけど!」
「トモさんもちついて」とシオ
「わざとやってます?マルシェってボケ多くてツッコミ疲れする!」
「お詫びにチェキに書くサインにキスマークつけますから大村チーフの」とクルミ
「みんな天然ボケでごめんなさい」とカレン
「カレンちゃんもっと心込めて謝罪して!」とルカ
「一番ボケ倒してるお前が言うな!」
ボケの連鎖にハァハァと呼吸を乱す。
「トモさんうちの事務所に入りませんか?」と大村
「大村さんもボケに参加しなくて良いから!」
リックんも加わり撮影が進み
そして終了する。