①おじさん、推し活はじめます!
新作です!
既に全10話書き終えているので完結保証!
本日は初回なので2話目は22時更新!
明日からは20時更新です!
ライブ前の先行物販に並ぶ俺の周囲に、若々しい声が響き渡る。
「トモさんちっす!」
「トモさんのブログ読んで冷麺食べたくなって盛岡に行ったんですよ!」
「トモさん今日も【布教活動】行くんすか?自分もご一緒させてくださいよ!」
ここはハーレムアイドルユニット【シェリータウン】の現場。
坊主頭に高身長、筋肉ムキムキなこの体躯でアイドルグッズを買い求める50代のおじさん──世間一般から見れば異質な存在だろう。
だが、ここシェリータウンの現場では、俺はちょっとした有名人だ。
顔見知りもいるが、大半は俺が書いている【おじさんのシェリータウン布教活動】というブログの読者だ。
彼らのおかげで、ブログは月に十数万円の収入がある。
それでも俺の活動は毎月大赤字だ。
しかし、シェリーを推し、布教活動をするのは、もはやライフワークなので何の不満もない。
俺の名前はトモ。
50代独身、未婚、そして肩書きはブロガー。
父は銀行員、母は専業主婦で実家で茶道教室を開いたりしていた。
両親はラブラブで理想的な夫婦だった。
俺が彼女と長続きしないのは、その2人を理想として追い求めるからなのかもしれない。
両親は十年前に揃って心臓麻痺で亡くなった。
夫婦の営み中の出来事で第一発見者は俺。
衝撃は大きかったが、ラブラブだった彼ららしい最期だとも思った。
サラリーマンの生涯年収ほどの遺産が残ったが、それよりも仲の良かった両親を失ったショックで、俺はただ仕事に没頭した。
会社ではマーケティングと広報を担当し、それなりの地位にあった。
2年程前、テレビでバズるアイドル特集をやっていた。
「ハーレムアイドル【シェリータウン】さんです!
モテ男がガールフレンドと共にイチャイチャしながら愛を舞い踊る、唯一無二のスタイルにファンが爆増中!」
アイドルなのにハーレム?
一体ファンはどういった気持ちで応援するの?と半信半疑で観ていたが、彼らの愛溢れる楽曲に、乾いた心に染み込む清流のように、自然と涙が溢れた。
デビュー曲の【デコボココースター】は俺の心を掴んだ。
アイドルぽいメロディにアイドルに相応しくないワードが満載でインパクトがありつつ心に残る。
曲は仕事先で出会った2人がコイツ無理と拒絶から入り仕事を続けて居る内に大事な人になるストーリーだ。
【お似合いと言われない
歪な芸術かもしれない
2人の価値、私達だけわかればいい〜♪】
グループ名の【シェリータウン】はフランス語と英語の造語で意味は愛溢れる街、彼らにピッタリだ!
それ以来、移動中も家にいる時も、彼らの楽曲を聴いて過ごす日々が続いた。
**マーケティングと広報の仕事は好きだったし、**ライブになど行く暇はなかった。
……いや、それは言い訳か。
なにせ50代のおじさんがアイドルのライブに行っても浮きそうで怖かったのだ。
そんなある日、会社に行くと早期退職者を募っていた。
このまま勤め続けたとしてもあと10年。今辞めても満額退職金がもらえるなら、辞めて好きなことに全ベットしてセカンドライフを送るのも悪くない。
退職を決めたその日、スマホに飛び込んできたシェリータウン全国ツアーの発表。
それは、まるで人生の岐路に立つ俺への天啓だと感じた。
新たな道が示されたのだ。俺は迷わず、彼らの全国ツアーを追いかけることを決意した。
彼らのライブを観て、こんなにも人を感動させるグループが、もっと多くの人に知られないのは惜しいと思った。これまでの知識と経験を全て注ぎ込み、微力ながら彼らを**“上のステージ”に押し上げたい。そう心に誓った。
全国ツアーの旅は、ただ追いかけるだけじゃない。
俺は、その様子をブログ記事にして発信するつもりだ。開催地の観光やグルメ**、ライブやチェキ撮影会の様子は一般のファン向けに。
そして、もう一つ、俺にしかできない**【布教活動】も並行して行う。
夜の街、キャバクラやガールズバーでシェリーの魅力を語り尽くすのだ。
それは、かつてマーケティングと広報を担当していた俺なりの戦略。
情報収集力と拡散力に優れた彼女たちのネットワークは侮れない。
それに、普段、好きなこと以外には消極的な同志たちにも、俺のこんな楽しみ方を知ってほしい。
そして何より、「おじさんだから」と自分の気持ちに蓋をしてしまった同世代の奴らに、「まだまだ人生は楽しめる」ってメッセージを伝えたい。
**全国規模でこの活動を続ければ、微力ながらもきっと力になれるだろう。
お読み頂いてありがとうございます。
もし気に入って貰えたらブックマークや評価、感想をお願いします!
完結済みですが番外編などを書くモチベーションになると思うので!!




