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海の色

熱く焼けた砂浜に揃えておいたビーサンが波にさらわれる。


「ちょっと待って! 流されてる!」

慌てて涼雅(りょうが)が追いかける。

「浮き輪が邪魔で進めない! 涼雅、頼む!」

清人(きよと)が叫ぶ。

その清人を波が襲う。

浮き輪ごとひっくり返る。

ビーサンをなんとか確保して振り返ったら清人が消えてて、突然海面から顔を出す。

「しょっぱい! 鼻に海水入った、痛え!」

その姿に笑う。

「河童みてえw」

「河童じゃねえ! 笑い事じゃねえ!」

河童の清人が怒ってる。


二人で海に来た。

大学のいつものメンバーたちとではなく清人と二人で。

誘った時に断られるかもしれないと怖かった。

「なんで二人?」

とは言われたけど、

「たまには涼雅と二人でもいいか」

とOKしてくれた。


そんな不安も遊べばやっぱり楽しくて夕暮れはすぐに来た。

簡易テントを畳んで帰り支度をする。

気づくと青かった海はオレンジ色に染まって人気もだいぶ減っていた。


「腹減った!」

清人が騒ぐ。

「なんか食うか?」

「食う、でも海の家は嫌だ」

ふっ わかる気がする。

「国道沿い歩いてれば飯屋あるだろうから歩こうぜ」

「んじゃ早く行こ」

Tシャツから覗く素肌が来た時より焼けている。

ビーサンからスニーカーに履き替えて歩き出す。

楽しい時間はどうしてこんなに早く終わっちゃうんだろうな。

 

太陽が沈みかけた頃、本格的なハンバーガー屋を見つけた。

「ここでいい?」

「ここがいい!」

海に来たのに魚ではなく肉を欲してる。

「なんかずっと肉が食いたかったんだよねえ」

と、でかいハンバーガーにかぶりつく清人。

「遊び疲れたせいかな?」

「ん~、あんまり疲れてはないな、楽しかったけど」


楽しかったんだ、よかった、清人が楽しくてよかった……


ボリュームが凄いハンバーガーを堪能していると店内がざわざわしていることに気づく。

なんだ?

不思議そうな顔をしてる俺と清人に店員さんが気づき教えてくれる。


「今日はウミホタル見えますよ」


ウミホタル?


「ウミホタルってなんですか?」

「アクアラインの?」

あははは! と店員さんは笑うと、

「それ思い浮かびますよね、場所じゃなくて生き物です。夜になると青く光って綺麗なんです、店の前の波打ち際で見られますよ」

「へえ!」

「行ってみますか?」

「はい」


会計を済ませ、店の前の砂浜に降りてみる。

人がたくさんいた。


暗い黒い海の波打ち際が青く光っている。

幻想的な青い光は息を呑む美しさだった。


「すげえ……」

「初めて見た……」


二人して砂浜に座り込んで眺めてた。


どのくらいそうしていたのだろう。

気づいたら周りにあれだけいた人がいなくなってた。



「ごめん、俺すっかり夢中になっちゃってた」

清人に謝る。

「いや、俺も圧倒されてた。

海は暗くて怖いんだけど、青い光が綺麗で全然飽きない」

ふっ

ふふ

「ロマンチストかよ」

「そんなキャラじゃねえだろ」

互いに笑う。

ふと目線が交わる。


あ……

やばい……

キスしたい……

清人にキスしたい。


心と体が動いた。


唇が触れる。



「……なんで?」

清人が俯く。


「……したかったから」

「だから、なんで?」

「まだ終わりたくない、朝まで一緒にいたい」

「え?」

「清人、来て」

清人の手を引いて国道沿いの煌びやかなホテルに向かう。

清人はなにも言わない。


部屋を選んで中に入る。

ドアの鍵を閉める。


「なにも言わないのは同意でいいのか?」

俯く清人の顔を手のひらで包んで上げる。

今にも泣きそうな不安そうな顔をしてる。


そんな顔しないで……


もう後に引けない、口に出してしまったらもう戻れない。


「友達に戻れなくなる……」

そう言って清人は俯いてしまう。


清人を抱きしめる。


「友達より先にいきたい、友達じゃ嫌なんだ」



    




涼雅の声が震えてる。

涼雅、言ってよ、言ってくれないと……俺は……

ずるいのはわかってる、言わせようとしてる。

ずるくても、それでも、今、涼雅から聞かないと俺は……


誘われて嬉しかった。

二人で海に来て楽しかった。

少しでも涼雅が同じ気持ちなら……

ずっとそう思ってた。

だから……



「清人が好きなんだ」



涼雅がそう言ってくれたから背中に手を回せる。

ギュッとしがみつける。

受け入れられる。

委ねられる。

欲しくなる。

 

選んでしまったら戻れないのはわかってる。

俺たちはわかってて選んだ。

戻らない……






翌朝。

ラブホなのにここ窓開くんだ、はめ殺しじゃないんだな。少しだけ開けてみる。

海は朝日を浴びて銀色に光り輝く。

眩しくて目が開けられない。


「眩しいな」

いつのまにか後ろに立っていた涼雅が後ろから俺を抱きしめる。



俺が、涼雅が、気づいてしまっただけ。


恋をした、それだけ。



「起きた時に清人が笑ってくれたら、俺は全てを捨ててもいいと思ってた」


「朝起きて涼雅が目を逸らしたら、俺はお前の前から消えようと思ってた」



ふっ

「どっち?」

「どうしたい?」


向き合う。


「こうしたい」

二人で額を合わせる。


「もう戻れないよ?」

「戻りたくない」

「戻らせない」

「戻らない」


二人の時間を進めるキスをする。

もう時計は止められない。

それでいい。


俺たちは恋しただけ。

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