7.5見
レオン目線の回想1です。
エマちゃんは、今もなおアレクを熱い視線で見つめている。
今はそれが羨ましい
彼女を初めて見たのは、朝の巡回中の時だった。
普通は二人一組で見回る規則だが、俺の事を良く思っていない同僚が離れて歩く様に言うので、目に見える範囲ではあるが、距離を開けて巡回している。
こんな顔の俺だが、仕事はしっかり果たさなければならない為、俯いて歩く事は出来ない。
早朝は人目が少ないからまだ少しは気楽でいい。
さすがに、嫌悪の眼差しで睨まれ続けるのは応えるからな。
いつも通りの変わらない日常だったが、その日は一人の女の子が、窓辺の花に水をやっているのが視界に入った。
癒やされるなとは思ったが、じろじろ見すぎて通報されたらたまったものじゃない。
なんでもこの顔だ。
視界から横目で眺める程度に収めつつ、通り過ぎようと思っていたら女の子がにこりと笑ったのだ。
勿論、俺をみて笑った訳では無い。
花を見てだ。
可愛い
天使だ
可愛い
悲鳴をあげられた事は何度かあるが、家族以外で女性に笑顔を向けられたのは初めてだった。
ああ、またあの子の笑顔が見たい。
俺に好かれても気持ち悪いだけだろうが、遠くから見るだけなら許されるだろうか。
その日は1日落ち着かない気分で過ごした。
「なんか最近、レオンうかれてないー?」
この馴れ馴れしく話しかけてくるのは、俺が唯一気兼ねなく話せる友人だ。
いい奴だが、ちょっと女の子が好きすぎる所がある。まあそれも、アレクの顔が良すぎるってせいかもしれんが。
「何?好きな女の子でもできた?」
「さあな」
「もー、どんな子どんな子?」
「ちゃんと訓練しろ」
「えー、つまんなーい」
はあ、俺は気軽に好きにとかなれないんだよ。
この顔の一部でもアレクみたいだったら、また違ったのかもしれないがな。
明日は非番なんだと部屋に引きこもろうとしていた俺を、アレクは強引に酒場に連れてきた。
「おい、いい加減離せ。男に手を繋がれる趣味は無いぞ。」
「そう?じゃあ一緒に飲んでくれそうな女の子でも探す?」
「そうじゃないっ」
はあ、一杯飲んだらさっさと帰ろう。
「あ!あそこに女の子が1人でいるじゃん。」
「おい、辞めとけって」
そう言うアレクの視線の先に居たのは、あの日から毎朝見かけるようになった窓際の彼女だった。