6.神
ついに神が現れた!
いまなら
「あの大空に翼を広げ飛んで〜行けちゃ〜う〜よ〜♪
おばさん、掃き掃除終わりました!」
「ふふ、今日はとってもご機嫌ねえ。
何か良いことでもあったのかしら?」
「そうなんです!とっても素敵な男性を見かけちゃいまして!えへへ」
「あら、やっとエマちゃんのお眼鏡に叶う男性が居たのね!」
「それはもうキラキラと神が地上に舞い降りたのかもやお姿!私の世界は今、薔薇色に輝いています!」
思わずクルクル踊りだしてしまいそうだわ!
なんて素敵な日!
「じゃあ、二人がうまくいったら紹介して頂戴な。お祝いしましょ。」
「ええ?!私ごときが神にお近づきするなど畏れ多いですよ!」
「そんなこと言って、エマちゃんは可愛いのだからどんどん攻めていかないと!神様とやらがお空に帰っちゃうわよ?」
「た、たしかに…」
そうよね、お空にお帰りになられる前に、地上に繋ぎ止めて置かなければ。
取り敢えずは、明日も早起きして外を見張ろうじゃないの
コレはけっしてストーカーではなくってよ
エマは妙な使命感に燃えるのであった。
翌朝、早起きしたエマは、しっかりと身支度を整えて窓際に待機する。
あ〜やばい
心臓飛び出る!ドキドキする!
ニヤニヤする顔を引き締めながら、窓に置いた花の手入れをする…というフリをかましながら騎士様が巡回してくるのを待つ。
時間あってるよね?
昨日通ったの、これくらいの時間だったよね?
そわそわ落ち着かないながらも、視線は目下の通りから逸らさない。
キタ!キタキタキター!
よしよし。
凝視して変な奴と思われたら大変だよね。
目線は花に水をやりつつ、騎士様を視界の隅にロックオンしておこう。そうしよう。
うおおおー、なんと素敵な…顔面造形美(この世界では不細工)
思わず引き締めていた顔がニヤける。
ああ、行ってしまった…
たった数秒、されど数秒…
神が降臨するのは一瞬の出来事じゃのう。
無い髭を撫でながら、感傷に浸るエマだった。
次の日も、また次の日も、またまた次の日も、エマは毎日欠かさず視界に映る神を拝めた。
花やり用のじょうろ片手に。
勿論、通らない日もあったが。
仕事が休みなのかもしれない、もしくは体調を崩したのかもしれない。
そんな日はエマも元気が出ず、トボトボと定食屋の仕事に向かう。
そうして過ごすうちに、2ヶ月が過ぎた。