5.発
魔法を使う夢は砕け散った。
そして今、格好良い旦那様との結婚も散りかけているところだ。
村の友人達が、成人とともに結婚して幸せな家庭を築いていくのを横目で見ながら私は思い切って村を出てきた。
木を隠すなら森の中、人を隠すなら人混みの中
きっと私好みのイケメンも王都になら沢山いるはずよ
思い切って飛び出してきたのは良いものの、早めに生活基盤を整えなければ生きてはいけない。
取り敢えず、腹ごしらえだということで、入った定食屋さんで直ぐに雇ってもらえたのは一生分の運を使い果たしたと言っても過言ではないだろう。
婚活中の身としては、接客業に就職出来たのも有り難い。
私にとってのイケメン探しに一役買ってくれると期待している。
それでもまあ、薄々は分かっていたが中々良き御縁には恵まれず。
16歳で成人し、定食屋で働き出して2年が経ってしまった。
もちろん声をかけてくれる男性も居た。
自信に満ちたお顔で言い寄られても、私からしたらトキメキのトの字も無いわけで、ごめんなさいした。
現世でいうイケメンと結婚したい!と高望みしている訳ではないんだが。いや、あれ?逆高望みなのか?
だってさ?言い訳をさせてもらうとね、現世の不細工さんとの遭遇率が低すぎるわけよ!
この世界では結構嫌悪されちゃう存在で、そもそもあまり出歩かないらしい。
引きこもっちゃったら出会えない!
外出しても、下向いて歩いているせいでご尊顔がチラ見えもしない。
そもそも、人気の定食屋になんて寄り付かないのよ!
ええ、ちゃんと気付きましたよ。
ただ、気付くのがちょいとばかし遅かったってだけで。
テヘペロ
このまま行き遅れて、仕事一筋女子に成り代わるのか。
好きにもなれない男性と一生を添い遂げるのか。
最近は悩めかしい毎日を過ごしている。
悩みに悩み、遂には熱が出た。
私は意外と繊細な人間だったようだ。
仕方がないので、アパートの部屋の布団に包まり、うーうーとうなされながら眠った。
翌朝には熱も下がったが、1日中布団の住人になって居たせいか、早朝には目が覚めてしまった。
いつもの自分なら、二度寝に持ち込むところだが、全く眠れそうもないので、毎朝日課の花の水やりをする。
花は好きだ。
愛情込めて育てれば、綺麗な花を咲かせてくれる。
癒し要員だ。
誰にも言えない悩みや話も聞いてくれる。
返事はしてくれないが。
ふと、目下の通りに目を向けると、騎士様が1人巡回中だった。
もう一つ向こうの道にも1人巡回しているのが見える。
心の中で、御苦労様ですと告げて窓を閉めようとした。
が、目下の騎士様を見た瞬間、凝視したまま動けなくなった。
「神がいる。」
思わず呟いていた。
私は騎士様が見えなくなるまで動けなかった。