第6話
おじいちゃんちに泊まった翌日の早朝、わたしはおばあちゃんと一緒に畑の野菜を穫りに行った。と言っても、すぐ家の前にあるのだけど。
ジャガイモとキャベツ、そしてミニトマトの食べ頃になったものだけを収穫をしていく。この野菜達、すっごく美味しいのよね。
ここにいると時間の流れがゆっくりで穏やかでとても心地が良い。
たまにイノシシが出るらしいから、それだけは気をつけないといけないけれど。
野菜を収穫した後は、おばあちゃんと一緒に朝食の準備。わたしはジャガイモのお味噌汁を作る。朝ご飯が出来上がる頃、おじいちゃんが起きてきて、3人で一緒に朝ご飯を食べる。
祖父母は今は二人暮らしだけど、亡くなった母の弟が二人いて、二人とも独立して家庭を持っている。でも、姉弟三人すごく仲が良かったし、わたしも昔から叔父さん二人にはかわいがってもらっている。
国見家では横地家の話はしないようにしているけど、みんなが知佳さんの実家へ行く時は、わたしだけお母さんの実家へ行っている。何となくだけど、知佳さんのご両親がわたしの扱いに困っていそうだから。優しい人達だから遠慮しなくていいって言ってくれるんだけど、わたしは空気を読んであえて行かないようにしている。それに、居心地の良い方でのんびりする方が心も綺麗なままでいられるもんね。
それにしても田舎で食べるご飯って何でこんなに美味しいんだろう。白米にキャベツの塩昆布漬け、ジャガイモのお味噌汁にキャベツとミニトマトのサラダと焼いた紅鮭、シンプルなものばかりなのに本当に美味しい。ゆっくり味わって食べていたはずなのに、あっというまに食べ終わってしまった。ご馳走様でした。
「星希、ちょっといいか?昨日の話なんだが…」
「うん、大丈夫よ」
おじいちゃんの中で何か考えがまとまったのかしら?洗い物が終わった後、リビングの和風スペースに3人で座ると、おじいちゃんが話し始めた。
「星希が考えていることは本来、大人は止めるべきだと思うが、止めても無駄だと思うから俺達はその計画を知らないていでいることにする。だが、子供を産み育てるにはおまえが言った通り『金銭面・生活面・精神面』の助けが必要になるだろう。それを、俺とばあさんで支援することにした」
「わっ、嬉しい!!おじいちゃん、ありがとう!」
「まだ礼を言うのは早い」
「はい…」
ちょっと先走っちゃった。てへへ。
「それで考えたのだが、星希と祐希、二人とも俺の会社の企業内弁護士にならないか?今から法律の勉強もすることで、二人とも大学卒業前に司法試験に合格できると俺は思っている。おまえ達の仕事先などを勝手に決めてしまう形にはなるが、もし二人ともその条件を飲んでくれるなら、先行投資ということで、大学の費用や住む場所なども全部俺が持つ」
「えっ!?本当に?おじいちゃん、そんなにわたしたちを甘やかして大丈夫?」
「わはははは。俺は人を見る目はあるつもりだ。星希と祐希は甘やかしてもつけあがることはないと思っているぞ」
おじいちゃんとおばあちゃんが全面協力してくれるなら、何も心配はないなぁ。
「でも、もし祐希に将来なりたい職業があるのならまた考え直しだが、まだ決めていないなら検討してくれると助かる。追々話していこうと思うが、二人が企業内弁護士になったらやってほしいことがあるからな」
「祐ちゃんは今のところ特になりたい職業はないみたいだし、わたしと一緒に大学に行けて就職先まで同じってなったら、大喜びで飛びつくと思うよ。多分、100%以上のパワーを出すと思う(笑)」
「だが、ちゃんと二人で話し合うようにな」
「うん」
おばあちゃんはおじいちゃんの言うことを黙って聞いている。きっと昨日のうちに聞いたのかな…?おじいちゃんとおばあちゃんに反対されなかっただけでも嬉しいのに、そこまで考えてくれてたなんて…絶対祖父母孝行しなきゃ。
もうこれからは計画表を作ってその通りに突っ走るのみ!!
「あ、それともう一つ。進学先の大学は、N大学の法学部かそれ以上の国公立大しか援助しないからな」
な、なんだってーーー!?でも、援助の内容に比べたら、これぐらいのハードルは簡単に越えなきゃだよね。それに目標が最初から決まっている方が目指しやすくて助かる。
よーし、やってやろうじゃないの。
その後は、タブレットのWebブラウザで弁護士になるために必要な知識とか、大学の情報とか、企業内弁護士とは何をするのかなど、ひたすら調べまくった。大学の周りの飲食店事情も調べた。美味しいもの食べたいもんね。とりあえず、おじいちゃんには六法全書を2セット買ってくれるよう頼んでみた。
現段階では、祐ちゃんに大学のことと就職先のことは話そう。きっと大喜びで勉強し始めるはず。そう思ったら、早く祐ちゃんのかわいい笑顔が見たくなった。