第4話
「ありがとう、気持ちはうれしい。でも、ちゃんと考えてから返事をしたいから今じゃなくていい?」
祐ちゃんもすぐに返事をもらえるとは思っていなかったのだろう、わたしの目を見ながら少しだけ笑って、わかってるって顔をした。
「うん、だいじょうぶ。のんちゃんが誰かに告白される前に言いたかっただけだから」
と言ってはいるけれど、本心はそうじゃないんだろうなと感じた・・・・・・
レモン味のパウンドケーキを食べ終わった後は一緒に後片付けをしたけれど、祐ちゃんはいつもより口数が減っていた。局所ネガティブボーイ(やっくんが付けた祐ちゃん用ネガティブニックネーム)くんはきっと、悪い方ばかりの結果のイメージを膨らませているんだろうな。
とりあえず、今の時点で課題は2つ。わたしは、頭の整理をしようと自分の部屋に帰ることにした。
玄関先まで見送りに来た祐ちゃんが何も言わずぎゅっと抱きしめてきたので、わたしも軽く抱きしめ返すと、祐ちゃんはさらに力を入れて抱きしめてくる。不安な気持ちでいっぱいなんだろうけど、わたしを困らせたくないから言わないようにしているのが、抱きしめながら震えている祐ちゃんの手から伝わってきた。
少しだけ時間が流れた後、わたしが自分の手を体の後ろに回して祐ちゃんの手を握ると、祐ちゃんは抱擁をやめて寂しそうな笑顔でわたしの顔を見ながら「またね」と言ったので、わたしも「うん、またね。お邪魔しました」と笑顔で言って隣の部屋に戻った。
◇◇◇
祐ちゃんはわたしが教える勉強も一度で理解できるし、応用も利いて頭が良い。(やっくんには「のんちゃんは教えるのが下手」とよく言われるけど)それにわたしが亡くなった母から教わった教えを否定することなく、祐ちゃん自身も実践してくれている。
一緒にいるのが当たり前で心地よい存在だし、見た目だけじゃなくて祐ちゃんの何もかもがかわいい。
わたしも祐ちゃんのことは大好きだし、とあることに対してネガティブになりやすくなる以外は性格も良いし、彼氏彼女の関係になったとしても今の距離感とかが変わるわけじゃないと思う。
じゃあ、何が問題かって?
祐ちゃんは実年齢より幼く見えるため、一緒に歩いていても周りからは姉弟にしか見えない。わたしも実年齢よりは若く見られるけれど、元々の年齢差がある上に祐ちゃんの見た目が幼いから、恋愛対象として見るのはもう少し大きくなってからよねとわたしの理性が言っている。だからと言って、もう後がないと思って告白した祐ちゃんの気持ちを蔑ろにしたくもない。
確かに高校生は恋バナに花を咲かせたくなる時期だし、周りに影響されて彼氏彼女を作らなきゃと焦る子もいると思う。進学校の場合、その割合がどのくらいなのかわからないけれど。祐ちゃんはわたしの影響で少女漫画もたくさん読んでいるから、スクールラブコメみたいなのが高校生活だと思って、余計に意識してしまうところもあるだろうなぁ。
わたしと同級生になりたいって言った希望も、『強く願えばどんな願いだっていつかは叶う、叶わない願いはほんの一握りしかない』っていつも言っている手前、「無理」とは言いづらい。
・・・・・・5年かぁ
祐ちゃんが高校を卒業するのを待って一緒に大学に通うとして、卒業時わたしは27歳。それから就職するとなると・・・
唐突だけど、わたしはできれば、最初の子供をできるだけ早く産みたい。祖父母にできるだけ早くお母さんの孫(祖父母にとってのひ孫)を抱かせてあげたいから。それに若い母親というのに憧れるのよねぇ、わたしのお母さんもわたしを産んだのは21歳の時だったから。あ、出産時期の考え方については人それぞれなので、遅めで考えている人を否定しているわけではないよ。
それから、祐ちゃんを待つ間の5年間をどうするのかを・・・って、ここまで考えて気付いた。わたし、普通に祐ちゃんとずっと一緒にいる気になってる。なんだ、そっかぁ・・・もう、周りにショタコンって言われてもいいや。
祐ちゃんが小学生のうちからわたし達が付き合うのかどうかは別にして、一つは答えが見つかった。
もう一つの課題の方については、一緒に大学に通う前提で、わたしが高校を卒業してからの5年間をどうするのかを考える必要がある。さすがに2回高校生活を送るよりも現実的だし、全日制はわたしと周りの生徒の年の差が気になるだろうし(主に周りの人が)、祐ちゃんには定時制より全日制に通って青春をエンジョイ?してほしいので、高校の同級生になるというのはありなしで言ったら絶対なしだ。
別々の大学に2回通うというのも一つの手かもしれないけれど、どうせならわたしも大学で経験することは祐ちゃんと一緒に初めて経験するのがいい。祐ちゃんの希望を叶えつつわたしの希望も叶えようとするなら・・・
ピーン!
わたしの中に一つの考えがひらめいた。
そうだ!先に子供を産んでから大学に行こう!
とは言っても、祐ちゃんがストレートで大学に行く場合、子供はまだ小さいので、人の手助けが必須となる。うーん・・・とりあえず、おばあちゃんに相談してみようかな。
方向性が決まると、そのためにはどうするのが良いかなどを考えるのが楽しくなってきた。
まず、わたしが祐ちゃんの子供を産む場合に何か問題があるのかネットで調べてみると、性交同意年齢というものがあることを知る。なるほど、性犯罪規定の処罰の対象になるのかどうかも考慮しないとダメよね。祐ちゃんが4月生まれで、わたしが10月生まれだから、その期間なら4歳差でギリギリOKってことかな?まぁ、倫理的にどうなんだということも言われそうだけど、性犯罪規定があるのは性犯罪抑制のためや被害者をなくすためであって、女性の結婚年齢が引き上げられたのも現代の社会性や金銭面が主な理由のようなので(あくまでネットで調べた上での個人的見解)、大丈夫な気がしてきた。
うん、昔の日本は13歳で結婚した武将もいることだし、財力さえあれば問題ないよね!
それにしてもネットで調べればいくらでも情報が出てくるとはいえ、適齢期の者にこのような内容を説明する場がないってどういうことよ。知らないでは済まされないって言われても、教育されなければわからないよね、普通。そもそも日本って、そういう教育しているんだから。
って、頭を切り替えて・・・と、祐ちゃんがいつ精通するかは一緒にいればきっとわかると思うけれど、祐ちゃんに何て言えば同意してくれるのかもちゃんと考えないとね。同意がなければ性犯罪者になっちゃう。
あれこれ考えているうちに、この計画を実行するためには子育てを手伝ってくれる人と経済的に援助してくれる人が必要だということがわかり(当たり前のことだけど)、わたしはおばあちゃんだけでなくおじいちゃんにも相談してみることにした。この週末にでもおじいちゃんちに行ってこようかな。
母方の祖父母は会社を経営していることもあり、とても裕福なの。病気で入院しがちだった私の母のためにがむしゃらに働いた結果らしいけれど、会社の経営が軌道に乗るまでは、祖母の実家から援助を受けていたとのこと。きっと最初は怒られるだろうけど、「この親にしてこの子あり」だよって言えば、協力してもらえると思う。
・・・楽観的すぎるって?これぐらい奇抜な発想力があるからこそ、人生楽しいってものよ。
それにわたし、20様で生きられないと言われていたお母さんが21歳の時に産んだ奇跡の子って言われている(身内オンリー)んだもの、怖いものなんて心霊ぐらいよ!