脱・恋愛脳のクリスマス
この時期になるとテレビで「クリスマスに聞きたい曲ランキング」なんてのが定番企画だったりする。
「まあ、季節ものだしね」などと例年ぼーっと見ているのだが(今年はまだ見た記憶がないな)、ユーミンの「恋人がサンタクロース」やマライア・キャリーの「恋人たちのクリスマス」みたいな明るい曲もあるけど、山下達郎の「クリスマス・イヴ」とか稲垣潤一の「クリスマスキャロルの頃には」とか暗い(バッドエンド?)の曲が多く記憶される。辛島美登里の「サイレント・イヴ」あたりは平成初期に流行っていたけど、今は流れなくなったなあ。
「クリスマス・イヴ」は、映像化(CMや映画)されると大体がハッピーエンドになるけど(JR東海のCM「クリスマスエキスプレス」や映画「君は僕をスキになる」あたり)。
B’zの「いつかのメリークリスマス」は昔を懐かしむ曲だが、今、立ち止まって考えると「電車の中に椅子を持ち込んでニタラしていた曲」判定をして、どうも乗れないんだなあ(各自で歌詞検索してみてください)。まあこれが時代の空気感、というものだったのでしょうか。
私はスレた子どもだったからか、クリスマス時期のテレビ、「悲劇に終わった一人の人生とクリスマスで賑やかな街の対比」が毎年描かれる刑事物をよく見ていた。事件が終わった後、大滝秀治や西田敏行や藤岡弘が苦い顔をする一連のアレ(全部「特捜最前線」か)。
津上刑事が殉職した(146-147話の細菌爆弾の話、演;荒木しげる)回はクリスマスじゃなかったけど、エンディングの「私だけの十字架」はとても物悲しかった。
平成になってトレンディードラマ時代になると、中山美穂が主演の「逢いたい時にあなたはいない…」は最終回が「なんだかなあ…」と冷めたのを覚えている。主人公(中山美穂、看護師)が遠恋している彼氏の元にどうしても逢いに行きたいので勤務先(大学病院)の病棟看護師長さんに「夜勤を休みたい」とクリスマスイブ当日(!)に頼み込んで、師長が折れて休みをとって東京から札幌に飛ぶんだけど。同僚と後々揉めるだろうかあ、とか、誰が代わりに勤務することになるんだろうなあ、と気になってドラマに没頭できなかった。
いや多分、師長さんが代わりに勤務するんだろうけど、師長さんにも家庭があるんだよねえ、きっと。
昭和のドラマに出てくる看護師長(婦長)って、時に「シングルマザーで」と描写されることが定番だった。小説でも、渡辺淳一の「無影灯」でもそういう描写があったんじゃなかったかな。女性が、シングルマザーで仕事を持って子どもを育てる時に、看護師(看護婦)は立場や収入が安定している仕事の代表格だったからね。世間体が良い方のセーフティーネット。
「逢いたい時にあなたはいない…」の師長さんは、その夜は子どもとか家族と逢えなくなってしまったんだな。予定があったのかもしれないのに。そう想像すると、萎えた。
小説では、彼女をサンタクロースに寝取られた!というショートショートがあって、読んだのがちょうどユーミンの「恋人がサンタクロース」(1980年)を初めて知った頃だったかな。小説のタイトルを忘れていたのでググって回ってたら、筒井康隆「最後のクリスマス」と判明、1968年だって(短編集「アルファルファ作戦」および自選短編集「くたばれPTA」所収)。イギリスによるクリスマス島での水爆実験(1959年)を受けた作品。