最期 3
工場の調査を終えて、もう少し本腰を入れてしっかりと調査する事にした。
なので、調査を開始する前にロイの家族にロイの現況を報告することにした。
私達はトマスと共にロイの故郷であるジントー村へと訪れていた。
ロイの両親の家は知っていたので、真っ直ぐに向かった。
「そう……。ロイが……。」
「まだ死んだと決まった訳では無いのですが、現状捜索に向うことは出来ません。運良く反乱軍に救われている事を祈るしか出来ませんが、結局は私達は敵対しているので……。」
私は包み隠さず説明した。
殴られる覚悟でいたのだが、そんな事は無かった。
因みにトマスには外で待機しておいて貰っている。
あまり大人数で詰めかけては悪いと思い、一人でここに来た。
そして、ロイの両親の反応はというと想像とは違い泣き崩れる事もなく、私の話をじっと聞いていた。
「まぁ、あいつを送り出す事を決めた時点で覚悟はしてた。まぁ、早すぎるとは思っている。」
「シャルさん。良ければあの子の向こうでの話を聞かせてくれない?」
私はロイと出会った時から今に至るまでの事を話した。
こうして誰かに話してみるとほんの少しの短い時間でかなり内容の濃い生活をしていたんだと痛感する。
そして、話の途中で家の戸がノックされた。
「あ、ごめんなさい。ちょっと出て来ますね。」
ロイの母はそう言うと席を立ち、玄関へと向かった。
「……ロイ?」
「シャル!?」
死んだと思われていたロイがそこにはいた。
そして、ロイの奥にいる人物がこちらに銃口を向けていた。
「っ!シャル!」
その男の動きに気付いたのか、ロイは私とその男の射線に割って入ってきた。
そして、銃声が鳴り響く。
「……え?」
ロイの肩から血が吹きだしている。
「早く中に入れ!」
ロイは肩を抑えつつ、扉を閉めた。
私は突然の事に頭が追いついていなかったが、ようやく頭が追いついて来て、まずロイの母を助けに行った。
「大丈夫ですか!?」
「え、ええ。そんな事より!あの子が!」
死んだと思われていたロイが生きていた。
が、私達をかばって銃弾を受けてしまった。
「取り敢えず奥に隠れてください。お父さんへも説明をして安全な所へ。」
「あ、あなたは!?」
勿論、する事は決まっている。
ロイを助けるのだ。
「助けます。絶対に死なせません。」
その途端に外から銃声が聞こえる。
ロイの身が危ないのだと思い、扉を開け駆け出した。
トマスが横から銃を構えていた。
先程の男はそれに気を取られているようだった。
私はロイの襟を掴み、家の中まで引きずって行こうとした。
「ちっ!」
すると、先程の男が引き金を引いた。
弾はロイの肩に命中する。
先程とは反対側の肩だ。
そして、トマスが男に目掛け銃を数発撃った。
男は安全を喫して身を隠したようだった。
その隙にロイを家の中まで引きずり込む。
「ロイ!大丈夫!?」
肩からは血が溢れ続けている。
「……シャル。ごめんな。」
目の前の男は何故謝っているのだろうか。
悪いのはこちらだというのに。
「ふざけないで!絶対に死なせないから!」
念の為に携帯している包帯を肩に巻いていく。
しかし、こんなことだけでは止血は出来ない。
「せっかく生きてたってのに……。こんなの……。絶対に、絶対に死なせない!」
「シャル……。」
すると、奥からロイの両親が出て来る。
「ロイ!」
「大丈夫か!?」
二人もロイの傷を抑える。
「どうしたら良いの!?血が止まらない!」
こうなっては圧迫止血しか無いか。
治療の知識などしっかりしたものは持っていない。
「……シャル。そういえば、どうして俺の家に?」
「……あんたのせいよ!あんたが居ない間、ほんとうに大変だったんだから!」
私はロイが居ない間の事をはなした。
思うがままに話していたので理解してもらえただろうか。
「……そうか。」
話している間も血は溢れ続ける。
何処か大きな血管が破けたのだろうか。
「父さん。傷を焼いてくれ。」
「……それしか無いのか……。」
そう言うと父親は暖炉から先が熱された鉄の棒を持ってくる。
「……行くぞ。」
そして、傷に押し付ける。
「ぐぅっ!」
人の焼ける匂いがする。
これで止血されるのだろうか。
「……これで、少しは動けるな。」
そう言うとロイは立ち上がる。
あんなもの、応急処置と言って良いのかも分からない。
それで、動けるようになるとは思えない。
絶対に無茶をしている。
「駄目よ!あいつは私がなんとかするから!」
「いや、ケジメはつけなくちゃな。」
駄目だ。
一人で行かせては。
絶対にもう戻って来ないだろう。
「なら、私にも手伝わせて。」
「……分かった。」
懐から銃を取り出す。
ロイも銃を持っている。
数で言えばこちらの方が有利だ。
扉をゆっくり開けるとそこにはトマスが銃を構えて立っていた。
「よぉ、ロイ。あんたなら生きてるって信じてたぞ。しかそ、すまねぇ。見失った。」
「いや、大丈夫。トマスは両親を頼む。人質に取られるかもしれないからな。」
そう言うと、トマスは頷き家の中へ入っていった。
「よし、行くぞ。」
「行くって、何処に?」
すると、ロイは軽く微笑んだ。
「あそこさ。」
暫く歩いて着いた先はあの坑道だ。
確かに考えてみればここは奴らの作った所だ。
不利を悟ったならばここへ逃げ込むのが筋だろう。
「ほらな。」
すると、坑道の前には先程の男と複数の仲間がいた。
恐らく、坑道で待機していたんだろう。
「おい。流石に諦めな。この数じゃそっちが負けるだろ。」
仲間達は銃を装備していない。
ならば、なんとかなるかもしれない。
「それはどうかな?」
すると、ロイはこちらを軽く見てアイコンタクトを送ってきた。
何も打ち合わせはしていないのだが。
その途端に男に向け一心不乱に走り出す。
「なっ!?」
先程の男は戸惑っている。
が、周囲の仲間達がその間に入ってくる。
私はその仲間達に照準を合わせ、引き金を引き、次々と倒していく。
先程のアイコンタクトはそういうことか。
しかし、ロイは何故銃があるのに距離を縮めたのだろうか。
……考えてみれば家の中で銃声が聞こえた時、あの距離で外すとは思えない。
ならば、弾は空砲ということか。
「くそっ!」
男はロイに照準を合わせる。
私は男を撃とうと引き金を引くが、弾は出ない。
弾が切れたのだ。
銃声が鳴り響く。
弾はロイの肩に命中する。
「ぐっ!」
「こ、こいつ銃口と引き金の指の動きを見て致命傷を避けてるのか!?」
あれは確か、クレアさんがやっていた動きだ。
それを真似ているのか。
更に数発発砲される。
が、全て外れるか、かするかで、当たったとしても致命傷にはならない箇所だ。
そして、数cmの距離まで届いた。
ロイは銃口を額に突きつける。
「ば、馬鹿か?空砲だぞ?」
「……知ってるか?空砲の先に缶を置いて撃ったらどうなるか。」
男は首を横に振る。
「その缶は穴が開くんだ。」
「馬鹿め!弾はまだ残ってるんだぞ!」
銃声が鳴り響く。
「……かはっ!」
ロイは口から血を吐き出した。
そして、ロイは引き金を引く。
銃声と共に男の頭から血が吹き出す。
即死だろう。
そして、ロイも倒れる。
腹部からは血が大量に溢れ出している。
「ロイ!」
駆け寄り、傷を抑える。
そして、先程焼いて止血した箇所も血が溢れてきている事に気付く。
先程ので包帯も使い果たしている。
それに、こんな傷ここでは治しようもない。
「どうしてこんな無茶を!?」
「……奴等の計画書を読んで、ここの人数は、知ってた。」
ロイは息も絶え絶えに説明する。
「シャルの持っている、銃に入る弾数と計算して……ぴったりだと思ってな。だからやったんだ。」
「何で……。」
そこまで分かっているなら他にも取れる作戦はあっただろう。
「……自分は奴等の計画に賛同して、様々な助言をしてしまった。この国はこれから多くの死体を積み上げる事になる。そんな世界で生きていく資格なんてないだろ?」
ロイは軽く笑って見せる。
「そんな事無い……。」
涙が滲んでくる。
ロイは助からないだろう。
「馬鹿……。せっかく会えたのにまたお別れするだなんて……。」
「……俺さ、お前の事多分好きだったんだな……。」
いきなり変なことを言い始めた。
「家で、お前の事を見たときにさ、凄く嬉しかったんだ。お前と分かれてから何もかもが、おもしろく無くてさ。だからお前に会えた時、あぁ、俺はシャルが好きだったんだなって。あぁ、ごめんな。俺に……こんな事言われても、嫌なだけだよな。」
ロイの手を握る。
「嫌じゃない……。」
「……え?」
涙が止まらない。
握っているロイの手からどんどん力が抜けていくのが分かる。
これではもう……。
「私もロイが好き。多分初めて出会った時からずっと。だから嫌なんかじゃない!寧ろ嬉しいよ!大好き!だから、死なないで!」
そう言うと、ロイは少し意外そうな顔をする。
「そう、か……。それは、嬉しい……な。」
そして、ロイは瞳を閉じた。
握っていた手からは完全に力が抜けていた。
ロイは死んだのだ。
3日後。
ロイが反乱軍の首謀者格であるデイビッドと相打ちになった事がまるで嘘かのように反乱軍の決起は起こった。
だが、反乱は直ぐに鎮圧されることになる。
ロイの上着には手紙が入っており、今回の反乱の計画の仔細と家族へと感謝、そしてシャル達へ両親を頼むと言う事が書かれていた。
そして、異世界研究所の資料については好きにしてくれて構わないと書かれていた。
その手紙に従い、サーシェルに計画を伝え、私達はジントー村の住民と共に首都へと脱出した。
計画を知ったサーシェル達の活躍により、坑道ごと反乱軍を始末したらしい。
つまり、敵は生き埋め状態になったのだ。
その後は生き残った反乱軍を掃討していったらしい。
アナテルについても本土での反乱が失敗したことを知ると、降伏するかと思いきや、徹底抗戦を唱えた。
この国の争乱はまだ続くらしい。
異世界研究所にはロイが書き記し続けていた異世界について書かれていた本が並べられていた。
ロイが書いた巻を読んで見る。
色々な事が書かれていたが、目を引くものが後書きに書かれていた。
『自分はもしかしたらシャルの事が好きなのだろうか。最近そんな事を思うようになってきた。まぁ、シャルにその気が無いだろうし自分に思いを打ち明ける程の勇気は無い。ならば、せめて自分はシャルを守り通して見せるとしよう。』
1番最後の巻にはそう書かれていた。
つまり、あの時再開して好きだと気付いたというのは嘘だったのだ。
あんな場面で恥ずかしくなったのか。
というか、そういうことなら早くロイに思いを打ち明ければ良かった。
今更後悔してももう遅い。
そう思い、本を棚に戻す。
すると、扉がノックされる。
「あ、あの!助けてください!ビラ見ました!異世界犯罪解決してくれるんですよね!」
扉の先には小さな子供がいた。
広告ように貼られていたビラを握りしめている。
「……ようこそ異世界研究所へ。異世界研究所、所長代理のこのシャル・セインが異世界犯罪解決しますよ!」
これで最終話となります。
これまでご愛読頂きありがとうございました。
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