残された者 1
アナテルの州庁から離脱し、私達は本国へと帰ってくることが出来た。
ロイという大きな犠牲を払って。
ロイがあの瓦礫に巻き込まれていれば助かっていないかも知れない。
やはり、ロイの最後もクレアさんと同じだった。
どこかクレアさんを追いかけている感じがあったので、気になっては居たが、危惧していた通りになってしまった。
あの後はトマスの両親の船で本国へと脱出した。
敵も主力の全て州庁を攻撃していたので難なく本国へとたどり着けた。
その後は本国の王城へと行き、ロイから託された新型の銃を陽炎部隊に渡した。
王城の様子はとても慌ただしく、街も騒がしかった。
アナテルの反乱は既に広まっていたのだ。
だが、離島ということもあり、楽観視している者が多いのか、疎開しようという動きは全く無かった。
そして、研究所には手紙が来ていた。
シャルル、父さんの手紙だった。
内容は加熱装置の出処が判明したというものだった。
どうやら東方のとある都市に行けばあるらしい。
やはり、加熱装置は異世界人が独自に作り出したものらしい。
詳しく聞く為にサン・ジョルジュへと戻ってみたが、もぬけの殻だった。
近隣住民に聞いてみたが数日前から不在とのことらしい。
この情勢で、向こうも独自に動くつもりだろうか。
こういう事は昔からよくあった。
ならば、今やる事は一つだけ。
ロイがいなくても、この異世界研究所は終わってない。
ならば、ロイと共に受けた依頼、今達成するとしよう。
トマスも異論は無いようなので、私達はそのまま東へと向かった。
私達が向かった先は昔、東方にあったとされるワン公国の首都。
既に国が滅んでから100年近く経つ。
だが、色々と悪い噂を聞く地方だ。
王家の生き残りが再興を目指しているとかそういった物だ。
まぁ、そんな物はただの噂に過ぎないので、気にした事は無いのだが。
そう言えば、ロイはこの地方の出身だった。
後で家族にも状況を伝えておかなければ。
心苦しいが、伝えない訳には行かない。
この依頼が終わったら行くとしよう。
因みに私達が泊まったのは1番安い宿だ。
サーシェルから貰った報酬はかなりの額があるが、それは全てロイの家族にあげるつもりだ。
このことについてはトマスと話し合った結果だ。
トマスもそのつもりだったらしく、快く了承してくれた。
そして、東方と言えばロイがクレアさんと共に発見した坑道の調査をトマスの上官であるサーシェルが行っていた。
もし遭遇する事があればこちらの状況を伝えて、協力して調査を行っても良いかもしれない。
彼らの力があれば容易に調査を終わらせることが出来る。
また、トマスはアナテルでの異世界研究所の支援任務だった筈なので、アナテルでの仕事が終わった今、原隊復帰するのが筋だ。
トマスに聞いてみようとも思ったが、それではまるでまだ協力してほしいと言っている様な物だ。
それは何だか嫌だ。
まぁ、トマスが原隊復帰しようともやることは変わらない。
一人でも調査するだけだ。
その日は長旅だったし、首都でもゆっくりする事は出来なかったので、明日からの調査に備えて休む事にした。
ロイがいなくなったからといって落ち込んでいる暇は無いのだ。
クーデターという一大事。
これだけでもかなり大変な事態だが、まだ終わったとは思えない。
何があるのかは分からないが、とてつもなく嫌な予感がするのだ。
明日からの調査、より一層気を引き締めて行こう。
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