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分かれと出会い 2

「……。」

 ここは何処だろうか。

 視界は奪われており、何も見えない。

 椅子に座らされており手は後ろで縛られている。

 足は椅子の脚に縛り付けられており、身動きは全く取れない。

 確か落ちてくる瓦礫に巻き込まれ、頭を強く打って意識を失ったはずだ。

 今の状況から考えるに敵に捕まったのか。

 一体どれ程の時間が経ったのだろうか。

 あの州庁にこんな部屋はなかったと思う。

 どうにかして抜け出したいがこうも拘束されてては何も出来ない。

 今は好機が来るのを待つしか無いのだろうか。

 すると、誰かが入ってくる音がする。

「おい。様子は。」

「はっ。変わりありません。」

 見張りの男に状況を訪ねているのは敵の上官だろうか。

 敵は自分に用があるらしい。

 つまり、自分の身元は割れているのだろう。

「……本当にそうか?」

「は?」

 すると、足音が近づいてくる。

 そして、いきなり目隠しを取られた。

「くっ……。」

 ライトを目に当てられ、目が眩んでしまう。

「ほらな。やはり目覚めていた。しっかり見ておけと命じただろ。」

「はっ!申し訳ありません!」

 見張りの男は銃を持っていた。

 そして、その装いから軍の人間であることは明らかだ。

 目の前の男も軍服を着ている。

 そして、腰のホルスターには銃がある。

 やはり反乱軍にも銃が行き渡っているようだ。

「さて、異世界研究所の所長。いや、所長代理のロイ殿と言った方が良いか。気分はどうかな?」

「……最悪だな。」

 だが、不思議と目の前の男からは敵意は感じない。

「そうか。飲み物でも飲むか?」

 男はテーブルの上にあったコップを差し出してくる。

「この状態でか?」

 目の前の男は手足の自由が効かないというのに何を言っているのだろうか。

 それに、そんな物を飲む気にはなれない。

「おお、そうか。すまない。」

 すると、男は近づき、まず手の拘束を解除した。

 そして、足の拘束を解除しようと屈んだ隙を自分が見逃す筈はない。

 自由になった手で背中を殴ろうとする。

「まぁ、落ち着いてくれや。」

「っ!」

 しかし、振りかざした拳は男の背中に当たることは無かった。

 目の前の男は隙だらけに見えたが、どうやらお見通しだったらしい。

 自分の右手は男に抑えられていた。

 いくら力を入れようともびくともしない。

「何、君に危害を加えるつもりは無いんだ。むしろ、助力を願いたいと思ってね。」

「助力だと?」

 右手の力を抜くと、手を離してくれた。

 そのまま足の拘束を解除する。

 敵意を示しても対応を変えない所を見ると、こいつらにとって自分は必要なのだろう。

「ああ。異世界研究所の長である君の力が必要なんだ。」

 男は壁の方に置かれていた椅子を自分の向かいに置き、座った。

「勿論、今のままではあなたが首を縦に振るとは思ってはいない。あなたに、我々の現状を見てもらいたいんだ。」

 男はテーブルに置かれていた飲み物を一気に飲み干す。

 そして、男は先程の見張りの男に目で合図をする。

 見張りの兵は頷いていた。

 恐らく何かの用意が出来た合図だろう。

 すると男は立ち上がり、扉を開けこちらに来るように催促する。

 言われるがままに自分は男についていった。

 この男の言っている事は理解出来ないが、今はついていくしかないというのは理解出来る。

 長い通路を歩いていく。

 ここは何か巨大な建造物なのだろうか。

 因みに後ろには先程の見張りの兵がついてきていた。

「そう言えば自己紹介がまだだったな。私はデイビッド・レイノフ。昔、軍に居たが、異世界の日本という国の記憶を思い出してね。当たり前だと思っていた事が許せなくなってしまったんだ。」

 なるほど、この男が例のデイビッド・レイノフ。

 要注意人物の一人だった男か。

「当たり前だと思っていた事?」

 デイビッドは突き当りの扉を開ける。

 光と共に冷たい風が流れ込んでくる。

「船の上だったのか……。」

 とても巨大な船だ。

 自分達がアナテルに来た時に乗った船とは比べ物にならない大きさだ。

「ここは私の仲間達がアナテルで密かに建造していた戦艦だ。」

 これは確かに凄い。

「そして、あなたに見てもらいたいのは、あちらです。」

 デイビッドが指を指した先には上半身が裸にされ、多数の痣や傷跡がある沢山の人々だった。

 デイビッドの仲間と思しき男達に介抱されている。

 大量の負傷者が並べられ、治療を受けているようだった。

「あ、あれは……。」

 そして、その中に見覚えのある人物がいたのだ。

「そうです。彼は先日あなたが捕まえた男。あなたは異世界犯罪を防ぎ、あの老婆を救ったと思っているようだが、それは違う。」

 衝撃的な光景に目を奪われている自分を他所に説明を続ける。

「我々、異世界人が何故異世界犯罪をするのか知っているか?」

 無言のまま首を横に振る。

「異世界人は差別対象なんだ。」

 そんな話は聞いた事が無い。

「そんな話は聞いた事が無いって顔をしてるな。そりゃそうだ。差別をしているのは富裕層が主だ。国は異世界の文化を危険視して異世界の研究を辞めたと聞いているだろうが、本当は違う。奴等は研究を辞めてなんかいなかった。それまでは協力的な異世界人から話を聞いて技術を提供してもらっていたんだが、ある時、1人の異世界人が武器に関する情報を話してしまった。その情報を聞いた国の者は武器に関する情報を聞き出そうとしたが、答える者は殆ど現れなかった。そこから、疑心暗鬼に近い形で異世界人を信用出来なくなった。そして異世界人を危険視するようになり、異世界研究を中断したと発表した。それまでは異世界人は保護義務があり、異世界人であることを名乗り出て証明する事が出来れば国から様々な支援を受けることが出来た。それが、異世界研究を中断したことにより、保護が受けられなくなった大量の異世界人が王城に詰め寄せた。その異世界人達を城に引き込み、拷問に近い形で異世界の情報を無理矢理聞き出していた。そして、残った異世界人達はその事を知った。それに対抗するために俺達、まあその時代に俺は居なかったんだが、奴等が耐性の無い異世界犯罪で報復することにしたらしい。」

「おい。それはおかしく無いか?自分の知っている異世界研究所の歴史と大分違うぞ。」

 それは自分の知っている異世界研究所の歴史と違い過ぎる。

「そうだ。順序が逆なんだ。恐らく国がそういう事にした。増え続ける異世界犯罪に対処するためにお前達、異世界研究所が作られたんだ。そして、俺達は国と関わりの強い富裕層を狙って犯罪を繰り返していたんだ。富裕層の多くは国と関わりが深い。そして、異世界人を捕縛して聞き出した情報をと引き換えに国から金をもらっていたんだ。だから奴等は全力で異世界人を探して拷問して情報を聞き出していた。そして、俺達がただ嫌がらせをするだけな訳がないだろ?だから俺達は密かに準備をしていた。長い年月をかけてな。」

 甲板上にいる兵達は銃を装備している。

 このクーデターも決死の覚悟だったのだろう。

「この反乱に参加した仲間達は全てが異世界人ではない。俺達の境遇に共感してくれた者達だ。一般人も多い。アナテル方面軍の軍団長も顔馴染でな。俺の計画を聞いて賛同してくれたんだ。」

 デイビッドは振り向き、こちらに手を差し伸べてくる。

「異世界研究所を率いていて、異世界人の事をよく理解してくれていて差別の存在しない田舎の出身のお前なら俺達の境遇を理解してくれると思ってな。俺達の反乱が成功すれば王政を無くし、民主主義の国を作り上げる。そして、異世界人達が苦労しないようにこの世界の技術水準を日本レベルにまで上げる。そこに、お前の知識があれば簡単に成し遂げられるんだ。俺達は異世界人の異世界人による異世界人の為の国家を作り上げる。どうだ?俺達に協力してくれないか?」

 自分は暫く考えた。

 確かにあの惨状を目の当たりにして何もしないという訳には行かない。

 だがこの反乱に加担するというのは一番近い駄目だ。

「……少し時間をくれ。」

「……分かった。君の部屋も用意してある。更に詳しい資料もそこに置いておく。目的地につくまでまだ数日かかる。ゆっくりしてくれ。」

 シャル達は無事に脱出出来ただろうか。

 まずはシャル達が心配だ。

 自分が無事だと言う事も伝えたいしな。

 この先の選択肢によってはシャル達と二度と行動を共にする事はできなくなるかもしれない。

 慎重に行かなかればな。

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