大きな影 2
「申し訳ありません。この度捕まえた者は下っ端ばかりで、大した情報は得られませんでした。」
「分かった。引き続き残党の捕縛をしてくれ。」
あれから少し時間が経ち、サーシェルがトマスから報告を受けていた。
「軍部との繋がりを示す証拠でも有れば奴らを追い詰めることが出来るのですが……。」
「今回襲ってきた奴等がその軍部の不穏分子が直接関与しているのかは分からないんですか?」
その質問にトマスが答える。
「そうですね。今回のような奴らは基本的に軍とは関係のない政府に反感を持つ一般市民で構成されていることが分かっています。ですが、彼らの車や規模、組織的な活動から見て軍の人間が関わっている事は明らかなのです。」
「そこまでわかっていながら、なんで取り押さえられないの?」
まぁ、シャルの言う通りだろう。
もっと調べようもあると思うのだが。
「それは……。」
「少佐。彼らには伝えても大丈夫かと。」
サーシェルはしばらく悩んだ後、決心したようだ。
「そうだな、実はとある噂があるのです。」
「噂?」
サーシェルは頷く。
「はい。ごく一部の者しか知らず、内容が内容ですのであまり話せる物では無いのですが、この国の宰相が軍事クーデターを画策しているという物です。噂が広まれば奴は更に隠蔽工作をするでしょう。彼はかなり切れ者で中々尻尾を出さないのです。今回の件が久々に訪れたチャンスだったのですが、ここまで大事にしてしまうと、もはや無理でしょうな。」
「そうでしたか……。」
更に話を聞いてみると軍資金をどこから調達しているのかも詳しくは分かってはいないが、かなり非合法な手段で集めているのではと推測しているらしい。
「……そういえば軍資金の収入源に少し心当たりがあります。」
「本当ですか!?」
サーシェルが驚きを隠さず聞いてくる。
「はい。自分の地元の村での事なんですけど長年使われていない坑道があって、調査の過程でクレアさんと共にそこを訪れたんですけど、かなり拡張整備されていて異世界犯罪の集団のみでは不可能と思えるほどの規模でした。しっかりと奥まで見た訳ではありませんが、拠点等も建設されていました。あの時は犯罪者の田舎での活動を円滑するための物だと思ってましたがもしあれが軍を円滑に動く為のものだとすれば……。あれをトンネルとして活用すれば複雑な山岳地帯を地形に左右されずに行動することが出来ます。車両も通れるほどの大きさでしたし、あり得ない話では無いかと。」
「成る程、クーデター勢力の収入源は異世界犯罪だと。」
異世界犯罪はかなり儲かるだろう。
それなのに奴等の規模が小さいということは何処かに収益の一部を渡しているということだ。
「では、少佐。かなりの数を捕縛したので、この辺りの活動はかなり抑えられるでしょう。警察も既に動き始めております。我々はその坑道を調査しに行ってみてはどうでしょう。」
「……いや、君には別行動を命ずる。」
つまりは何処か他に当てがあるということか。
流石は隠密部隊の隊長だ。
「ロイ殿。最近、南の島のアナテル自治区は異世界犯罪が多発していると小耳に挟みました。もし、その仮説が本当であるならばそこがかなりの収入源になっている筈です。私は中隊を率いて例の坑道に赴きます。トマスをつけますのでそちらの調査と解決に行って頂けませんか?」
「ねぇ、ロイ。さすがに遠すぎるし、そんなお金も無いし、無理に引き受けなくても……。」
確かにシャルの言う通りだ。
金はそんなにあるわけでも無い。
そんな遠出するほどの余裕があるわけでも無い。
「申し訳無いのですが……。」
「勿論、旅費はお出しします。報酬も別に前払いでお支払いいたしますよ。」
「行こう!ロイ!」
ころっと意見を変えるシャル。
まぁ、旅費も出るし、報酬も出るというのなら断る選択肢はない。
シャルの目には金しか写っていないのだろうが。
「分かりました。お受け致します。支度もありますので一度研究所に戻ってから向かいますね。」
「分かりました。それでは本日はこれで解散にしましょう。トマスを後日研究所の方へやります。トマスはアナテル出身です。何か分からない事があればなんでも聞いて下さい。」
「よろしくお願いします。」
トマスが頭を下げてくる。
「こちらこそ。」
こちらもそれに応える。
「……シャル?どうかしたか?」
気が付くとシャルはあまり良い顔をしていなかった。
「……何でもない。」
すると、トマスはその様子を見て理解したのか、シャルに近寄り、何かを耳打ちしていた。
「なっ!余計なお世話よ!」
「ははっ!まぁ、安心してくれ!悪いようにはしないさ!」
どうやら、心配はいらないようだ。
シャルが仲間と共に仕事をするタイプでは無いと感じていたので少し心配だったが、杞憂だったようだ。
もう仲良くなっている。
もしかしたらお似合いなのかも……。
いや、流石に歳が離れすぎているか。
昔から他人の色恋沙汰を見ているのは好きだったが、流石にこれは無いな。
まあ、他人の色恋を見ていたせいで自分の事を忘れていたのだが。
何はともあれアナテルヘ向かう準備をするとしよう。
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