大きな影 1
今回よりタイトルを『出張!異世界研究所!〜異世界犯罪解決します〜』に変更致しました。
「味方が到着するまで少しかかります。それまではここで耐えるしかありません。」
そう言うとサーシェルは懐から何かを取り出し空に向け、引き金を引いた。
銃のような見た目だが、発射された物は花火のように空で煌々と光り始めた。
少し経つと光は消えたがあれ程の光ならば多くの者に見えただろう。
「お二人にはこれを。」
サーシェルは懐から2丁の銃を取り出した。
片手で扱えるような物だ。
「私、使ったこと無いんだけど。」
「簡単に説明をお願いしても良いですか?」
サーシェルから簡単な説明を受けた。
リボルバー式というものらしく、6発撃てるらしい。
弾も数発貰った。
「分かりました。ですが、何故貴方が狙われているのですか?」
「私は不穏分子の動きを探ると同時に奴らの活動を妨害するためにひたすらちまちまと嫌がらせしてたんですが、流石にバレてしまったみたいですね。」
確かにそれは排除される対象になってもおかしくはない。
「そろそろ来るよ!」
シャルが声を上げる。
銃のハンマーを起こす。
因みに実弾ではなくゴム弾らしい。
当たりどころが悪ければ死ぬが、まぁ大丈夫だろうとのことだ。
すると、サーシェルの止めていた車に敵の車が体当たりし、中から数人が降りてくる。
ここに至るまでの道は階段なので、車では来れないのだ。
敵が数人階段を駆け上がってくるのが見える。
サーシェルが躊躇いなく引き金を引く。
大きな音を立てて銃が火を吹くと、敵の一人が倒れた。
「何っ!?」
「銃だ!敵は銃を持ってるぞ!」
どうやら敵も銃を知っているようだ。
異世界人から聞いたのだろうか。
だとすれば奴らの協力者に異世界人がいるということになる。
もしかすると故郷で関わった奴らかもしれない。
そうでなくとも軍部の人間が関わっていることは確かだ。
敵は一度後退し、物陰に隠れた。
「どうします?」
「いえ、問題ありません。もうすぐ来る頃です。」
すると、また別のエンジン音が聞こえてくる。
「味方か!?」
「おい!これは味方じゃないぞ!」
「くそ!撤退しろ!回収部隊が近くに居るはずだ!作戦は中止だ!他の奴らにも知らせろ!」
敵は軽い混乱状態のようだ。
それに、先程見た限りでは敵の装備は近接武器。
只の鉄の棒のような粗末な物だ。
だが、統率は取れている。
やはり、軍の人間が関わっていると見ても良いだろう。
「くそ!逃げられる!」
敵は車に乗り込もうとしているのか走り出した。
「逃さない!」
シャルが飛び出す。
階段を飛び降り、敵のど真ん中へと行く。
「なんだこいつ!?」
「糞が!」
敵がシャルへと即座に反応し、鉄の棒を振り下ろす。
が、シャルは躊躇いなく引き金を引いた。
弾は敵の脇腹に命中し、倒れた。
「オラァ!」
更に隣にいた男が鉄の棒を振り降ろすが、先程の男と同じように無力化される。
「凄いですね。」
「はい。ですが、無茶はして欲しく無いんですけどね。」
すると、シャルの背後からもう一人敵が現れる。
シャルはまだ気付いていない。
「シャル!後ろだ!」
「っ!?」
シャルが反応し、即座に銃を向け引き金を引く。
しかし、弾は発射されない。
「っ!不発か!」
「不発!?」
どうやら稀に弾が発射されない事があるらしい。
敵はここぞとばかりに鉄棒を振り下ろす。
シャルは予想外の事態に対処しきれていない。
混乱している様子だ。
不発時どうすれば良いかなど教えてもらっていない。
「死ねぇ!」
しかし、敵の攻撃が当たることは無い。
自分が引き金を引いたのだ。
弾は頭に命中した。
当たりどころが悪ければあの敵は死んでいるかも知れないが、戸惑ったせいでシャルが死ぬ未来を考えれば、これで良かった。
まぁ、死んではいないと思うが。
頭に当たったというだけあって心配になってしまう。
「シャル!大丈夫か!」
シャルの元へと駆け寄る。
シャルはこちらを見ようとはしない。
「シャル?」
「……また、助けてもらっちゃった。」
やはり、こちらを見ようとはしない。
「今回置いてけぼりにされて、信頼されてないんだなって思ったから私だって強いんだって所見せようと思ったんだけどな……。」
なるほど、少し過保護が過ぎたのかもしれない。
「すまない、シャル。」
「……これからは邪魔しないようにするわ。」
自分はシャルの頭を撫でた。
「いや、こいつらには聞きたいことが山程ある。シャルが居なかったら見逃していた所だ。本当にありがとう。」
「ロイ……。」
視線をシャルと同じ位置にする。
「だからそんなこと言わないでこれからも側で支えてくれないか?自分も今回みたいな事は絶対にしないようにするから。」
「え?それって……。」
少し困惑している。
何故だろうか。
今後活動していく中で彼女の助力は必須だ。
確かに自分も彼女を守るために危険から遠ざけすぎていた。
頼りにされていないと思われても仕方が無い。
今回のシャルの危険は自分にも責任がある。
「はぁ、ま、そんな訳ないか。分かったわ。これからは遠慮せずに頼っていいからね!」
「ああ!これからもよろしくな!」
シャルはもしかしたら承認欲求が高いのかもしれないな。
「……お邪魔でしたかな?」
気が付けば付近に人がいた。
「いや、そんな事は……。」
すると、その人物は見覚えがあった。
「昨日ぶりですね。異世界研究所のロイ殿。」
「トマス・ジェンダー曹長。どうしてここに?」
シャルの前に立ち、庇うようにして警戒する。
こいつらを指揮していたのだろうか。
何故このタイミングでここにいるのか。
偶然にしては出来すぎている。
軍人とサシでやり合った事は無い。
せめてシャルだけでも……。
「トマス!早かったな!」
「少佐!お疲れ様です!」
階段からサーシェルが降りてくる。
「ロイさん。彼は私の配下のトマス・ジェンダーです。……お知り合いですか?」
「はい。自分が駐屯地を訪れた時に衛門にいたのが彼です。」
すると、サーシェルは何かを思い出したようだ。
「あぁ!そういえばそうでしたね!ロイさんを広報室へと連れてきたのもそうでしたか。」
「はい。既に多くの敵を捕縛しております。この暗闇で敵を少し取り逃してしまいましたが、かなり捕まえられました。ですが、今の所幹部クラスを捕まえたという話は出てきていません。」
だが、敵を捕まえられたのなら情報を得られる。
最悪の状況ではない。
シャルとも連携を深められそうだしこれからが楽しみだ。
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