閑話 名字について
今後は閑話を所々に入れていき、異世界博士の事件解決記録簿と同じ世界の話となっている、前作の王国再興物語と関わりのある話を入れていこうと思っております。
本編にはそこまで関わりの無い話となっておりますが、世界観をより深める内容となっておりますので読むと更に楽しめるかと思います。
閑話は不定期です。
「ねぇ、あんたって名字の由来って知ってる?」
「名字?」
病室で休んでいるとリンゴを剥いているシャルから話しかけられる。
テーブルの上に並んでいるリンゴやフルーツはシャルが差し入れてくれたものだ。
そこまで頼んではいなかったのだが、気が利く。
「由来は知らないな。」
「昔は全員が全員名字を持っていたわけではないの。ただ、この国の初代の王様が不便だと言って、名字を定めたの。」
「どうやって?」
気にしたことも無かったが興味が無いわけではない。
「その家族の父親の名を名字にしたの。父親がいない家族はその家の跡継ぎの人の名前を名字にしたの。」
「じゃあ、自分の初代はヤンって人だったってことか。」
シャルは静かに頷いた。
「そう、そして私の初代はセインっていう人。実はこの名字で、ある程度の出自が理解出来るの。勿論同じ名字の人がたくさんいるから絶対ではないけどね。私のご先祖様はかつては王家に仕える執事の家系だったらしいわ。」
なるほど。
つまり彼女は立派な家の出だということか。
「そして、国王を支えると同時に隠密部隊を率いて王に仇なす者を密かに始末してきたそうよ。情報を集めたりしてね。」
「じゃあ、今の仕事って……。」
薄々感づいてしまう。
「ええ、代々続いてきた仕事よ。まぁ、私の家系は分家だから王家に仕えている訳ではないし暗殺なんかはしないんだけど。」
では本家はまだ仕えているのだろうか。
さらに暗殺までしているということか。
「因みにクレアさんのゼイルっていうのはかなり昔の大物の冒険者だったらしいわ。……冒険者って知ってる?」
一応知識はある。
常に民の味方であるという存在の冒険者。
どこの国にも所属しない存在だったが、この大陸の大半がこの国の物になった時に、冒険者が実質エルドニア統一王国のものとなった頃から完全にこの国に取り込まれ、その組織は警察へと引き継がれ無くなったとのことだ。
「ああ、なんとなくはな。」
「初代のゼイルさんは異世界人としての記憶を思い出した孤児達を集めて面倒を見ていたそうなの。そして、それが異世界研究所へと発展したそうよ。まぁ、クレアさんは知らなかったらしいけど。」
つまり、クレアさんは偶然先祖が作った研究所へと入ったのか。
もしかしたら先代の所長はそれを知った上でクレアさんを入れたのかもしれないな。
「君はそういうのを知ってどうするんだ?」
「……まぁ、正直仕事に影響することは殆ど無いんだけど偶に調査対象がご先祖様の仕事をそのまま引き継いでいることがあるからね。参考程度に調べてるの。……実質趣味だけど。」
ならば、1つ気になることがある。
「なぁ、じゃあ自分の家系って……。」
「……昔、あんたの故郷の辺りに国があったのは知ってる?」
自分は静かに頷いた。
「ヤンって人はその国の重鎮だったらしいわよ。なんでもその国の初代の国王を助けた人だって話。まぁ、そっちの方はあんまり詳しくないからそれくらいしか分からないんだけどね。」
自分の家系は思っていた以上に良い家系だったようだ。
「そうか。あ、リンゴ貰っていい?」
「……どうぞ。」
シャルは嫌そうな顔をしながらしぶしぶ皿を差し出してきた。
気が付くとリンゴは綺麗に切り分けられていた。
図々しいのが気になったのだろうか。
しかし、いくら腹が立つ態度だったとしても彼女は自分に暴力はふれない。
この怪我は彼女のせいなのだから。
シャルからそれを貰い、一口食べてみる。
「おお!美味しいなこれ!」
「私はただ切り分けただけだからそんなこと言われても嬉しくないんだけど。」
とは言いつつも嬉しそうだ。
案外チョロいかもな。
「ありがとな。シャル。」
「……。」
するとシャルは席を立った。
「じゃあ、今日はこれで。」
「ああ、無理して来なくても良いんだからな?」
実はシャルは毎日ここに顔を出してくれている。
まぁ、つまりは一人で無茶はしていないということなのだから安心なのだが。
「……ふん。」
そのまま出て行ってしまった。
シャルは素直に感謝されると弱いのだろうか。
新たな弱点を見つけてしまったな。
明日が楽しみだ。
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