意思を継ぐもの 3
「旧市街って……。」
昨日は一日をかけて研究所を掃除した。
長い時間をかけて大掃除をし、まるで新居かと思うほどに綺麗にした。
クレアさんの私物については箱にまとめておいた。
死んだ……と決めつけるのはまだ早すぎると思ったのだ。
クレアさんならば自分が死ぬ前提の作戦は考えない。
まあ、ただ自分が希望を持って生きたいというだけなのだが。
いつかは認めてもらいたいと、いつかは戻ってくるかもしれないと思い続けることでだらけることなく自分に鞭を打っているのだ。
実は生きていてどこかで見られているかもしれないという緊張感を持っているのだ。
それに私物を捨ててしまえばクレアさんとの繋がりが無くなってしまう、本当に居なくなってしまいそうで、捨てるに捨てられなかった。
因みに今は情報屋だと言うサン・ジョルジュという飲食店を訪れるために旧市街を訪れていたのだが……。
「広すぎる!」
旧市街を訪れてすでに数時間。
すぐに見つかるだろうと辺りをブラブラとしていた。
しかし、予想以上に旧市街が広く見つけられずにいた。
まぁ、旧市街でも田舎者の自分からしたら目新しいものばっかりで本腰入れて探してはいなかったのだが。
だが、さすがにこのままではいけないと思い、近くの人に聞くことにした。
「あの、すいません。」
「ん?どうかしたか?」
近くにいた頭が光っている髭の生えた老人に声をかける。
老人にしては体格がいい気がするが、腰も曲がって杖もついている。
昔は相当強かったのだろうか。
「サン・ジョルジュっていう店知ってます?ちょっと用事があるんですけど……。」
「ああ、その店か……。」
老人は少し顔をそらす。
そのそらした先にはぼろぼろになった建物があった。
窓ガラスも全て割れている。
あの店がそうなのだろうか。
「何かあったんですか?」
「ああ、昨日の夜中に何者かに襲われたらしくてな、今はやってないんじゃよ。」
昨日は夜遅くまで片付けをしていた。
もし自分が綺麗好きじゃなければ昨日の内に訪れることが出来たのだろうか。
どちらにせよ今となっては後の祭りだ。
「店主は今どうしてるんですか?」
「実はな、行方不明なんじゃよ。」
つまり、ここには居ないということだ。
これ以上ここにいても時間の無駄だろう。
既に警察の調査も入っているだろうし、収穫はあまり無いかもしれない。
情報屋が無いというのは痛手だが、仕方がない。
ただ、この事もいずれ対処した方が良いだろう。
なんにせよ、一度戻った方がいいかもしれない。
情報をもう少し集めたい所だが、店を襲ったのが奴等ならば研究所を襲う可能性もある。
取り敢えず自分は戻ることにした。
「ありがとうございました。では、失礼します。」
「あぁ、お前さん。ちょっと待ちなさい。」
老人に止められる。
「どうしたんです?」
「あの店に用事があるってことは何か情報が欲しいんだろう?お前さん何者だい?」
何者かと問われる。
正直まだあそこの所長を名乗るには未熟すぎる。
それに恐れ多い気もする。
なので、こう答えた。
「異世界研究所の所長の代理です!」
あのあと念のため帰ってきたが特に異常は無かった。
既に日も落ち始めているので電気をつける。
やはり科学というのは素晴らしい。
「ごめんくださーい!」
ソファに座り異世界記録を読もうとしたところドンドンと扉を叩かれる。
あの本を毎日時間をかけてゆっくりと全巻読むつもりなのだ。
まぁ、初日は読めなさそうだが。
どうやら客人のようだ。
扉を開け、出てみる。
「はい、どうかされましたか?」
扉を開けた先には同い年くらいの少女がいた。
長い髪を後ろで纏めている、いわゆるポニーテールというものだ。
まぁ、美人に分類されるだろう。
ただ、胸は無い。
まぁ、年相応という感じだ。
「おと……あ、おじいちゃんを助けてください!」
今、お父さんと言おうとしていなかったか?
「取り敢えず何があったか教えてくれるかい?」
「あ、はい!失礼しました!」
こちらにきて、まだ日が経っていないというのにもう厄介なことに巻き込まれそうだ。
ただ、この事件が奴等に繋がってくるかもしれない。
所長代理を名乗った以上、やることはきちんとやろう。
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