意思を継ぐもの 2
「……よし。」
自分は、首都に着くと真っ先に研究所へと向かった。
外見から荒らされた様子は無い。
だが、奴等は痕跡を残さない手口を使う。
油断せずに中へと入っていく。
クレアさんの手紙に一緒に入っていた鍵で扉を開け、中に入ると真っ暗で何も見えなかった。
「確か……。」
記憶を頼りにあの時クレアさんがしていた行動を真似る。
初めてここに来たときクレアさんは壁についていた何かを押していた気がする。
「あっ!あった!」
壁に何かを感じ、それを押した。
すると瞬く間に部屋に明かりが灯る。
これが電気なのだろう。
首都では当たり前なのだろうか。
それとも研究所だから使われているのか。
何はともあれ今は中の様子を確認しよう。
結局様子は初めて訪れた時と何も変わっていなかった。
ひとまずは安心だ。
だが、所長の後を継ごうにもこの部屋の何がどこにあるのか、何をしていれば良いのか全く分からない。
取り敢えず最初に目がついた本棚を漁ってみる。
様々な本がある。
か、1番気になった本があった。
本の背表紙には異世界記録と書かれている。
全部で30巻もある。
とても分厚く、全部読むには一日じゃ足りないだろう。
そこで途中から背表紙の字が変わっている事に気付く。
20巻から先は字体はクレアさんの文字と似ているものだった。
ここから所長はクレアさんに変わったのだろうか。
1巻を手に取り読んでみる。
『これから異世界人から聞いた話をここに纏めていこうと思う。異世界の情報はとても価値のあるものだ。有効に活用できれば何でもできるだろう。』
1ページ目にはそんなことが書かれていた。
その後のページは異世界の話が綴られていた。
内容はとても興味深いものだったが、ちゃんと読んでいると時間がいくらあっても足りない。
ここは先代が書いたと言うことか。
自分は1巻を棚に戻し、クレアさんが書いたであろう20巻目を取り、ページを開く。
『先代が行方不明になってから数ヶ月。同期のフェン・ローゼンも消息不明になるなど色々あったが私、クレア・ゼイルが後を継ぐこととなった。先代に習い私も異世界について調べ上げた事を記録していこうと思う。他にも長年務めている者もいるし、なぜ私なのかは納得が行かない。面倒事を押し付けられた気分だ。まあ、やるけど。』
これが何年前にかかれたのかは分からないがやはりクレアさんらしい感じがする。
フェンというのはあの坑道にいたフェンなのだろうか。
この巻の時代はまだ人がたくさんいたようだ。
更に調べればまだまだわかることがあるのだろうが、今度ゆっくりと時間を使って調べよう。
次にクレアさんが泊まっていた部屋へとむかう。
初めて訪れた時、所長室を見つけていたのを思い出した。
扉が開いていたので、軽く見たがベッドがあったのでそこで寝泊まりしていたのだろう。
部屋へと入ると、かなり散らかっていた。
本や服、下着までもが散乱していた。
正直見るのは失礼な気もするが、このままというわけにも行かない。
他に部屋があるわけでもないので、泊まれるのはここだけだ。
手持ちの金もあまり無いから宿を借りる訳にも行かない。
最初の仕事は片付けることから始めるとしよう。
極力下着とかは見ないようにする。
片付けは後回しにして、所長室を出て事務所……と呼んで良いのか分からないが自分が応接された部屋を見渡す。
複数の机が並んでいるが、只の物置と化している。
キッチンもあるが、あの様子では使えそうも無い。
大掃除が必要なレベルだ。
クレアさんがお菓子を出していた扉を開けてみる。
「うわっ!冷たっ!」
扉を開けると中から冷気が出てきた。
中には飲み物や食料などがつまっていた。
恐らく食料などを冷えた状態で保管しておくようの箱なのだろう。
電気を使えばここまで出来るとは。
異世界は凄い。
「……ふぅ。」
一通り見て回ることが出来たので、ソファに腰を下ろす。
取り敢えず初日は片付けて泊まれるようにするところから始めよう。
サン・ジョルジュという店を訪ねるのは今度にしよう。
今日一日かけて、この研究所を徹底的に綺麗にしてやる。
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